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道中を満喫する皆さん

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 一行はシーナに出発する準備を始めた。

 とりあえずミトはカッツェの初心者のサンダルを千ゼルで処分してやる。
 というのは、初心者装備は本来であれば店では引き取ってもらえないものだから。
 なぜかミトとスマッシュが初心者装備引き取ってもらえるのは、ビシャスネスがカンストしているからだろうとカッツェは言っている。

 カッツェはゴム手袋と香油を処分としようとしたが、背後からスマッシュの圧力を感じた。
「カッツェ、それは何かの時のために取っておいたらどうだろうか?」
「それもそうだね。ミト姉さまから教えてもらった技を使う機会もあるかもしれないし」
 カッツェは素直にゴム手袋と香油をインベントリに戻し、スマッシュは内心ほくそ笑んだ。

「ほれ、カッツェ。念のためこれも持っておきな」
「ありがとう姉さま。これ代金ね」
 ミトは傷薬と精神薬を6本づつ購入し、3本づつをカッツェに渡してやる。
 カッツェはミトに立て替えてもらった代金の三千ゼルをミトに渡した。
 スマッシュも自分で3本づつ購入する。
 これで1人5本づつ。ライフポイント15、メンタルポイント15に当たる薬を3人は確保した。

「それじゃ、シーナとやらに行ってみるかね」
 
 街道を進みながら、カッツェは白のショートブレストとショートパンツにロングブーツといった出で立ちで、可愛らしいネコミミを風になびかせながら、軽やかに舞っている。
「ミト姉さま、スマッシュさん、シーナの街って、どんなところでしょうね!」
「街には興味はないが、何が起きるかには興味があるな」

 毛皮のベストに黒のロングタイツと編み上げブーツという、一部のマニア以外には変態にしか見えない装いのスマッシュは、夜の部解放後のバトルがどうなるか楽しみで仕方がない。

 黒のブラウスに黒のレザーミニスカート、そこに黒のロングブーツという、どこからどう見ても夜の人な装いなのに、表情と体つきは未成年なミトはミトで、見てくれはスレンダービューティーの成人キャットガールなのに、中身はどう考えても女子高生、ヘタすると女子中学生レベルのカッツェが可愛くて可愛くて仕方がない。

「カッツェ、あんまりはしゃいでいると街に着く前に疲れちまうよ」
 イーディからシーナまでは、ゲーム時間でほぼ二時間の道のりらしい。
 キロ数で言うと多分8キロメートルほど。

 街道と言っても、別に舗装されているわけではない。
 草原を獣道のように轍を繰り返しほじったような道が続いていく。
 街道の両側は、草原から森、荒れ地と表情を変えていく。

「あ、モンスターのお出ましですよ!」
 カッツェが自律起動されているオートマチックスキルの「キャッツアイ」で、街道を徘徊するモンスターを見つけた。
 そいつらはゴブリンを一回り大きくしたような鬼だ。
 カッツェによれば、種族名はワイルドゴブリンという連中だという。
 そいつらが3匹ほどたむろしている。

「あたしゃこの、デビルズファイアってスキルを試してみたいよ」
「私もバトルダンスを試してみたいな」
「ならば襲うか」
 ということで、3人はワイルドゴブリンどもと対峙することにした。

「ぶおっ!」
 
 ワイルドゴブリンどもがこちらに気づき、三体で向かってきた。
 そこにまずはカッツェがバトルダンスを唱え、そいつらに向かっていく。

「ありゃま」
 ミトが呆れたような声を出した。

 なぜなら、カッツェが一瞬でワイルドゴブリン1体の首筋を切りつけ、絶命させてしまったから。
「こりゃあたしも頑張らないとね」
 カッツェに続いてミトは呪文を唱えていく。

「デビルズファイア!」
 すると、残り2体の足元から突然黒い炎が沸き起こった。
 地獄の炎に卷かれ、哀れワイルドゴブリン2匹は焼死体となってしまう。

「ほう、魔炎というのは複数攻撃なのだな」
 今回はやることのなかったスマッシュが感心したように鼻を鳴らした。
「そうみたいだねえ。もう1・2匹は焼けそうだよ」
 ミトも予想以上の効果に少し驚きながらも、胸を張っている。

「ああん、せっかく先制したのに、おいしいところを姉さまに取られちゃったぁ」
 カッツェは悔しそうに叫ぶも、笑顔のままで、ワイルドゴブリンが残していったカードを拾い集めていく。
 この戦闘で一行は「ワイルドゴブリン討伐証 二千ゼル 経験値600」が3枚手に入れた。

 しばらくすると今度はワイルドゴブリンが5体現れた。
「ちょっと、デビルズファイアの効果範囲を試させておくれ」
 ミトはそう2人に声をかけると、おもむろに呪文を唱えた。

 するとワイルドゴブリン3体の足元から炎が湧き上がり、そいつらを焼きつくした。

「どうやら3体までみたいだねえ。じゃ、後は頼んだよ」
「ああ、任せろ」
 残り2体は、スマッシュが一撃で潰していった。
 
 結局、ワイルドゴブリンはスマッシュがオートマチックスキルで潰すのが一番お得だという結論に達し、カッツェが発見、スマッシュが撲殺、ミトが高みの見物という構図で、3人は街道を進んでいったのである。


 しばらく進むと、3人の正面に、石の壁で隔たれた城塞都市が現れた。
「ほう、これがシーナかい」
 壁の高さは10メートルほどであろうか。壁は円を描いているらしく、左右共に壁が途中から見えなくなる。
 壁には門が据え付けられており、衛兵らしき者たちがそこを守っている。

 すると、コマンドページを検索していたらしいカッツェが口を開いた。
「姉さま、スマッシュさん、シーナの門をくぐるためのイベントがあるみたいですよ!」
「ほう、どんなものだ?」
「衛兵の誰かに話しかけると、ミッションが始まるみたいです」
「ならば今回は俺が最初に行こう」

 スマッシュは立ち並んでいる男女の衛兵のうち、最も若い華奢な「男性兵」に声を掛けた。
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