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真面目に金策を検討するカッツェさん
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カッツェはコマンドページから「マップ」を選択してみる。
当然ではあるがマップには始まりの街「イーディ」しか表示されていない。
しかし「イーディ」を更に拡大すると、街の施設が閲覧できるようになっていた。
始まりの街では「武器・防具店」「衣料店」「道具店」「食堂」「治療所」「お仕事紹介所」「荷物保管所」「連れ込み宿」が営業している。
先程カッツェがブーツを購入したのは「衣料店」だ。
「念のため武器や防具も見ておこうかな」
カッツェは意識に浮かぶ地図を頼りに「武器・防具店」に向かってみる。
つい先程までは初心者の服だらけだった通りも、ちらほらと別の衣装を身に着けたプレイヤーたちが見受けられるようになってきた。
「何これ!」
カッツェは「武器・防具店」のショーウインドウを覗き、思わず声を上げてしまった。
始まりの街だから、しょぼい武器や防具しか売っていないのは仕方がない。
だけど、この男性用ロングタイツというのは理解できない。
こんなのを買うのはバレリーナ志望かコメディアン志望の変態さんくらいしかいないのではないのかとカッツェは思う。
「武器もろくなのがないなあ」
ショーウインドウに並んでいるのは、木の棒が三千ゼル、木刀が五千ゼル、青銅の剣は三万ゼルと、すぐに購入できるようなものではない。
とはいえ手ぶらでは寂しいので、カッツェは木の棒を購入した。
この店もおじさんは事務的で、全く愛想がない。
三千ゼルお支払いで残金は一万七千ゼル。
「いくらノンプレイヤーキャラクターだからといって、もう少し愛想良くはならないのかなあ」
カッツェは、もしかしたらこいつはクソゲーかもしれないと不安を抱きながら、おじさんから無言で差し出された木の棒を手にとって見る。
◇木の棒を両手装備として装備。ダメージ追加1◇
しょぼい、しょぼすぎる。
「でもまあ仕方がないか。ゲームの最初が作業になるのはみんな一緒だし」
次にカッツェは「道具店」を覗いてみた。
というのは、カッツェのユニークスキルである「クイックドロウ」を発動するには、ペンと紙の装備が必要だと説明書きがなされているから。
「道具店」には店の名の通り様々な道具が販売されている。
店には一般的な道具だけでなく傷薬や精神薬などのポーションの類や、ペンダントなどのアクセサリーなども並べられている。
ちなみに傷薬と精神薬はそれぞれ千ゼル。
ペンは百ゼル、紙は百枚綴りのスケッチブック型で百ゼル。
カッツェは傷薬と精神薬を1本づつ、それにペンと紙を購入した。
これで所持金残額は一万四千八百ゼル。
お店のおじさんは他の2店と同じくやっぱり事務的で愛想がない。
「さて、装備してみようっと」
カッツェは右手にペン、左手にスケッチブックを持ってみた。
◇「クイックドロウ」が使用可能です。このスキルはメンタルポイントを消費しません◇
「じゃ、早速やってみよっと。クイックドロウ!」
カッツェは何の気なしに道具店の主人の顔を見つめ、クイックドロウを発動させてみる。
すると、一瞬でスケッチブックに主人の肖像画が模写された。
「ほう」
その絵に、先程までは事務的だった店の主人がこれまでにない反応を見せた。
「お嬢ちゃん、その絵を私に千ゼルで売ってくれないかい?」
予想外の反応にカッツェは驚くも、すぐに理解をした。
このスキルは「生産スキル」なんだと。
これで小銭には困らなくなりそうだ。
「売った。はい、どうぞ」
カッツェが主人に絵を渡すと所持金が千ゼル増えた。
これで所持金はただいま一万五千八百ゼルとなる。
試しにもう1枚主人の似顔絵を描いてみたが、2枚目は買い取ってはもらえなかった。
どうも1人1枚が限度らしい。
それでも始まりの街には他にも店はあるので、ちまちま稼げそうだ。
カッツェは念のため紙を三百ゼル分買い足しておく。
これで所持金一万五千五百ゼル。
「念のため宿代と食事代だけ調べておいてから、お仕事紹介所に行ってみようかな」
街を回った結果わかったのは、このゲームには昼夜はあるが、ライフポイントやメンタルポイントを回復するための「宿屋」つまり睡眠の概念がなく、ダメージなどは「治療所」で回復するということ。
治療所の利用料はこの街では1回三千ゼル。
一方で食事の概念はあり、空腹状態だとメンタルポイントが少しずつ減るらしい。
食事代はだいたい1食五百ゼル前後だった。
手元の一万五千五百ゼルだと、1日1回治療所で回復し、食事を三食取るとなると、3日分とちょっとの生活費にしかならない。
なお「連れ込み宿」は、アダルトオンラインならではのおさっし施設、つまり「夜の部」専用の、その名の通りのスペースである。
「これはお仕事しないとまずいよね」
カッツェはここがヴァーチャルの世界だということを忘れ、生真面目に「お仕事紹介所」に向かっていった。
すると大通りに人だかりができている。
カッツェも興味津々で人だかりの輪に入り、様子を見ると、そこではプレイヤー同士が言い争いをしていた。
1人は極彩色の初心者服を身につけた金髪の男。
そしてもう1人は、全身を黒に包んだ女悪魔。
「やだ、あの人かっこいい」
カッツェは、黒のブラウスに同色のレザーミニスカートとレザーロングブーツを身につけ、背中の翼をはためかせながら、腕を組んで男を睨みつけている漆黒の髪を持つ女悪魔に目を奪われた。
当然ではあるがマップには始まりの街「イーディ」しか表示されていない。
しかし「イーディ」を更に拡大すると、街の施設が閲覧できるようになっていた。
始まりの街では「武器・防具店」「衣料店」「道具店」「食堂」「治療所」「お仕事紹介所」「荷物保管所」「連れ込み宿」が営業している。
先程カッツェがブーツを購入したのは「衣料店」だ。
「念のため武器や防具も見ておこうかな」
カッツェは意識に浮かぶ地図を頼りに「武器・防具店」に向かってみる。
つい先程までは初心者の服だらけだった通りも、ちらほらと別の衣装を身に着けたプレイヤーたちが見受けられるようになってきた。
「何これ!」
カッツェは「武器・防具店」のショーウインドウを覗き、思わず声を上げてしまった。
始まりの街だから、しょぼい武器や防具しか売っていないのは仕方がない。
だけど、この男性用ロングタイツというのは理解できない。
こんなのを買うのはバレリーナ志望かコメディアン志望の変態さんくらいしかいないのではないのかとカッツェは思う。
「武器もろくなのがないなあ」
ショーウインドウに並んでいるのは、木の棒が三千ゼル、木刀が五千ゼル、青銅の剣は三万ゼルと、すぐに購入できるようなものではない。
とはいえ手ぶらでは寂しいので、カッツェは木の棒を購入した。
この店もおじさんは事務的で、全く愛想がない。
三千ゼルお支払いで残金は一万七千ゼル。
「いくらノンプレイヤーキャラクターだからといって、もう少し愛想良くはならないのかなあ」
カッツェは、もしかしたらこいつはクソゲーかもしれないと不安を抱きながら、おじさんから無言で差し出された木の棒を手にとって見る。
◇木の棒を両手装備として装備。ダメージ追加1◇
しょぼい、しょぼすぎる。
「でもまあ仕方がないか。ゲームの最初が作業になるのはみんな一緒だし」
次にカッツェは「道具店」を覗いてみた。
というのは、カッツェのユニークスキルである「クイックドロウ」を発動するには、ペンと紙の装備が必要だと説明書きがなされているから。
「道具店」には店の名の通り様々な道具が販売されている。
店には一般的な道具だけでなく傷薬や精神薬などのポーションの類や、ペンダントなどのアクセサリーなども並べられている。
ちなみに傷薬と精神薬はそれぞれ千ゼル。
ペンは百ゼル、紙は百枚綴りのスケッチブック型で百ゼル。
カッツェは傷薬と精神薬を1本づつ、それにペンと紙を購入した。
これで所持金残額は一万四千八百ゼル。
お店のおじさんは他の2店と同じくやっぱり事務的で愛想がない。
「さて、装備してみようっと」
カッツェは右手にペン、左手にスケッチブックを持ってみた。
◇「クイックドロウ」が使用可能です。このスキルはメンタルポイントを消費しません◇
「じゃ、早速やってみよっと。クイックドロウ!」
カッツェは何の気なしに道具店の主人の顔を見つめ、クイックドロウを発動させてみる。
すると、一瞬でスケッチブックに主人の肖像画が模写された。
「ほう」
その絵に、先程までは事務的だった店の主人がこれまでにない反応を見せた。
「お嬢ちゃん、その絵を私に千ゼルで売ってくれないかい?」
予想外の反応にカッツェは驚くも、すぐに理解をした。
このスキルは「生産スキル」なんだと。
これで小銭には困らなくなりそうだ。
「売った。はい、どうぞ」
カッツェが主人に絵を渡すと所持金が千ゼル増えた。
これで所持金はただいま一万五千八百ゼルとなる。
試しにもう1枚主人の似顔絵を描いてみたが、2枚目は買い取ってはもらえなかった。
どうも1人1枚が限度らしい。
それでも始まりの街には他にも店はあるので、ちまちま稼げそうだ。
カッツェは念のため紙を三百ゼル分買い足しておく。
これで所持金一万五千五百ゼル。
「念のため宿代と食事代だけ調べておいてから、お仕事紹介所に行ってみようかな」
街を回った結果わかったのは、このゲームには昼夜はあるが、ライフポイントやメンタルポイントを回復するための「宿屋」つまり睡眠の概念がなく、ダメージなどは「治療所」で回復するということ。
治療所の利用料はこの街では1回三千ゼル。
一方で食事の概念はあり、空腹状態だとメンタルポイントが少しずつ減るらしい。
食事代はだいたい1食五百ゼル前後だった。
手元の一万五千五百ゼルだと、1日1回治療所で回復し、食事を三食取るとなると、3日分とちょっとの生活費にしかならない。
なお「連れ込み宿」は、アダルトオンラインならではのおさっし施設、つまり「夜の部」専用の、その名の通りのスペースである。
「これはお仕事しないとまずいよね」
カッツェはここがヴァーチャルの世界だということを忘れ、生真面目に「お仕事紹介所」に向かっていった。
すると大通りに人だかりができている。
カッツェも興味津々で人だかりの輪に入り、様子を見ると、そこではプレイヤー同士が言い争いをしていた。
1人は極彩色の初心者服を身につけた金髪の男。
そしてもう1人は、全身を黒に包んだ女悪魔。
「やだ、あの人かっこいい」
カッツェは、黒のブラウスに同色のレザーミニスカートとレザーロングブーツを身につけ、背中の翼をはためかせながら、腕を組んで男を睨みつけている漆黒の髪を持つ女悪魔に目を奪われた。
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