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愛は勝つ!

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円盤状の大型レーダーを背負った偵察機は、成層圏まで達する巨大なキノコ雲の周りを旋回していた。

「やりすぎじゃないのか?一国の首都で核兵器使用なんて!」
「我々だけじゃない!これは世界の総意なんだとさ」

パイロットの独り言に観測員が無愛想に答えた。

「それより、例の怪獣!ミコドンの消滅は確認できたのか?」
「現在、核爆発に伴う電波障害で確認できません」
「確認なんて必要ないだろ?爆心の瞬間最高温度千二百万度。加えて、致死量の数万倍の放射能の嵐の中なんだぜ。
悪魔だって蒸発しちまってるよ」

パイロットが言うように、生物どころか物質でさえ残らない状況の筈であった。
だが、観測員が妙な顔をした。

「変だな?放射能が急速に低下しているぞ。」
「機械の故障じゃないのか?電磁波でイカレたとか……」
「いや……それに温度も急速に下降してきたぞ?」
……きよめたまえ……
「何か聞こえなかったか?」
……はらいたまえ……
「声だ……女の子の声……」
……きよめたまえ!はらいたまえ!
「キノコ雲の中に何かいる!ワッ?なんだあれは!」

キノコ雲を突き破って巨大な塔のような物体が飛び出してきた!
渦巻き状の文様の壁が偵察機の進路を一瞬で遮断した。

「ぶつかるぞォッ!」
ドグォォォ……ン!

出現した肌色の巨塔が東京ドームを数十個を乗せられるほどの巨大な指先だと気づく暇もなかった。
衝突した偵察機は指紋の溝に小さな赤い炎の花を咲かせた!

『気持ちよく余韻に浸っておったというのに……』

キノコ雲が清浄な風に吹き払われた。
無傷の、竹箒を担いだ全裸のミコがそこにいた。
ゆっくりと立ちあがる彼女の頭部は、上空の雲を、成層圏を突き抜けて、真空の宇宙空間にまで達していた。
頭を優雅に一振りすると、長い黒髪が無重力空間に花のように広がって日本の空の半分を覆い尽くした。
艶やかな黒髪の流れに軍事衛星がいくつも巻きこまれ爆発した。
推定身長1600kmの巨大女神の突き刺すような不機嫌な視線が、宇宙空間から地上を見下ろしていた。

ズッ…………シ……ンッ!

何気ない一歩が大気をかき乱し、暴風と竜巻を発生させた。
素足が踏み下ろされた瞬間、日本列島は計測不能な大地震に見舞われ、地球そのものが激しく揺さぶられた。

『ええい、腹の立つ!こんなにお邪魔虫がウヨウヨしおっては、ミコ殿が安心して愛を育めぬではないか!』

ズ……シン!ズッ…シン!

エニシはブツクサ言いながら、たったの二歩で日本列島を破壊しながら横断した。
日本海も彼女にとっては、雨の日の水溜りと変わりがなかった。
小さな水飛沫を上げながら彼女は大陸へ上陸した。
その水飛沫=大津波により幾つもの都市が壊滅した。
竹箒を振り回しながら前進する全裸の女神の歩みは、日本列島をへし折り、地球を揺るがし、世界中の火山を噴火させた。

『こうなったらアフターサービスじゃ。ミコ殿とアキラ殿が目覚める前に、この世のお邪魔虫どもを一掃してやろう』

そして、超巨大怪獣ミコドンは進撃を開始した!
若き恋人たちのために、小さな愛の世界を守るために!
…………世界を踏み潰しながら。
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