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1章

21 どうしようもない。鎧のゴブリンだ。

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 オレはボス部屋の前の棚にCランクの魔石を30個置いた。開錠するための一階層の時と同じ仕組みの仕掛けだ。2階層ではDランクの物だった。1つくらいが上がった形になる。

 部屋の中はコロッセオのような闘技場になっていて、その中央にそのゴブリンはいた。

 オレよりも大きい身体で、全身金属の鎧を身につけていた。

 顔も見えない。

 武器は片手剣と盾を装備していた。

 ゴブリンなのかと疑ったが【鑑定】では確かに上位ゴブリンと示されていて確認はできていた。

「戻ってきたぜ。ゴブリン野郎。」

「ぎぃぐぅ。」

 ゴブリンは静かに武器を構えた。対する俺の装備は全身金属鎧ではない。流石にそれにしてしまうと体力と機動力が足りなくなる。ボスは共通してHPが高いらしく中々にダメージが溜まり切らない。

 オレは軽鎧のままだ。急所は防ぐ感じで金属が使われているから即死はしない。ただし、首だけは守り切れてないので注意が必要だ。全身鎧を身につけているとオレの体力が持たない。

きぃぃん

 剣と剣の衝突する音が響く。競り合う中にも力の駆け引きがあった。押し込んで斬りかかるか引き込んで斬りかかるか。どのように相手を攻めて、そのように妨害するのか。そんな感じだった。このゴブリンは不用意な攻撃をしない。

 だから、オレの攻撃が増える。攻撃させられているといった方が正しい。うまく処理されて返される。オレの傷が増える。オレも盾で防いでいるが誘い出されている感じがする。前回はそうやって蹂躙された。

 今回はおとなしくやられてやる気はない。

 ショートソードや盾だけでなく膝なども当てていく。盾を構えられたら最早崩し方が分からないほどに頑丈だった。中々にしぶとい。全身鎧相手だと鎧の間を狙うか、打撃だろうか。

 頭への攻撃は盾でブロックされるから中々に厳しい。足を掛けようにもかけ返されるのでその繰り返しだ。

 昔の日本だったら体勢をくずして馬乗りになり、刀で首などをぐさりというのが基本なんだろう。意外にも槍でぶん殴って脇差しや刀でとどめを刺すのが主流だったらしい。今はそんなことどうでもいいか。

 今のこの状況では不可能なんだが。一方的にボコることができるような地力の差がないから長引くかもしれない。いや、おれのHPが大体1,000。体にダメージがなくても【物理防御6】を貫通して1撃ごとに60程度HPにダメージが入っている。このままではまずい。相手はボス。大体普通の魔物の10倍はHPがある。

 先程【鑑定】したらMAXで4050あった。オレが与えるダメージは32程度なのでオレの方が確実にやられる。

 魔物を殺す方法は生物的に殺す方法とHPを0にする数値的な方法に分かれている。もしも、オレがあのゴブリンに勝つとしたら生物的に殺すしかない。ポーションを飲みながらHPをちまちま削る方法もあるが回復する暇を与えてくれるとは思えなかった。

 オレは果敢にゴブリンに攻める。盾で受け止め、ショートソードで切りかかり、受け止められても、その勢いのまま足でけりを胴に決める。【殴る】の打撃的な部分は乗っかっているので戦闘素人のオレでもまともな蹴りになる。

 ここにきて初めてゴブリンがよろめいた。

「ぎぃぃー。」

 チャンスとばかりにオレは斬りかかる。兜の中のゴブリンと目が合ったような気がした。突いてついて突く。うまく鎧の間に入ったのか、刃こぼれしたショートソードにはゴブリンの血が付いていた。

 オレはゴブリンが呻いたのを聞いた。【鑑定】で見ても3割も削れていない。オレは4割まで削られていた。追い打ちをかけるように殴り掛かるも横に転がることで回避され、すぐさま立ち上がった。左足を庇うようにしていることからそこを切ったのだろう。

 機動力を削げたのはいい。欲を言えば腕、首あたりを攻撃したかった。ショートソードを投げつけ、距離を取る。新しい一振りを【収納空間】から取り出した。これはオレの意地だ。アイテムを使えば勝てないことはない。いや、楽に勝てるだろう。しかし、こんなゴブリンに自分だけの力で勝てなくてこの先やっていけるのかと言われれば断じて否。

 再びゴブリンに斬りかかる。冷静に苛烈に。ゴブリンと目と目を合わせる。その間にも何合と打ち合い、盾で止め足と足を絡めていた。先程までの精彩さはないがそれでも巧いことに変わりない。だから十分吸収する気分で挑む。

 相手が嫌がる様に攻め、時折それを崩す。そんな攻防を続ける。ゴブリンも少しどころではなく攻撃が激しくなる。盾で防ぐもタイミングをずらされたりフェイントだったり飽きさせない攻撃は称賛に価した。

 人生を武に捧げたような人から見たら幼稚かもしれないが、この分野においてオレよりも先に行っているゴブリンに敬意すら抱く。

 オレはゴブリンが片手剣を出すタイミングで盾を持つ手で腕ごと絡め、足をかけて押し倒した。ゴブリンには既に盾を持ちあげる力は残っていなかった。そのまま首の隙間にショートソードを突き刺す。

 ゴブリンは少し呻いて沈黙。ドロップに変化した。ドロップしたのは何故かビキニアーマーだった。【ドロップ増加5】の効果で6セット。オレにどうしろと?【鑑定】してみると露出した皮膚まで守ってくれるらしい。地味にその辺のフルプレートアーマーを装備するよりも堅い。

 オレ、男なのだが。

 性能的に服の中に着ても……。無しだな。

 尊厳優先。一応収納……。

【No125,431,112階層主の討伐達成 5ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加5】の効果により追加 25ポイント獲得】
【No125,431,112偉業の達成 9ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加5】の効果により追加 5ポイント獲得】

 小さな宝箱がコロシアムの中央に現れた。

 中に入っていたのは使役の小瓶上級と言うものだった。Bランクまでの魔物を使役できるらしい。使い方は相手に向けるだけだった。Bランク……。

 試しにボス部屋に入りなおして使ってみると使役できた。

 その状態では【収納空間】には入れることができないようだ。ドロップアイテムは手に入らなかったが宝箱はちゃんと出現して30,000ポイントといくばくかのアイテムが手に入った。

 周回だけして使役の小瓶上級のストックとBランクゴブリン(BOSS)のストックを量産した。一体だけ魔法使いタイプの個体がいたのでありがたく頂戴した。小瓶のストックは200本程度。Bランクゴブリン(BOSS)が35体。Bランクゴブリン魔法タイプ(BOSS)が1体だけ手に入った。

 ポイントもかなり溜まったので、数回普通に戦い、満足したので帰ることにする。帰るのは簡単だ。“帰還”のスクロールを開けばいい。オレは4階層に踏み入れてからスクロールを取り出して「【帰還】」を唱えた。自然にMPが吸われている感じがする。
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