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1章
閑話 妖伝2 しずく
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今の私は町の裏道で娼婦をしている。
取り締まる余力のないこの日本では生きて行くにはこれしかなく、都合もよかった。
幸い、【娼婦】と言うスキルが5ポイントであった。家を出るときに取ったスキルだ。
女性専用のスキルで様々な特典がある。なにより、褥を共にする対象の最大到達階層と同じだけのポイントを得ることが出来るという点が何よりも重要だった。
私たちはダンジョンから出てきた人に狙いを定めて誘いに行く。
私より幼い子で心を壊した人の中には壁から裸で下半身だけ出してへらへらしている人がいるのも知っている。顔を見られないのはいいが最早物扱いだ。公衆便所と言ってもいい。
物のようにレンタルされる両腕両足のない中学生くらいの少女もいた。
いつの間にか見なくなったが少し前まで、もっと小さい子もいたか。
彼女は外の室外機の上に裸で置かれ、使いたい者が連れて行き、一晩経つと戻される。
そこは彼女の固定位置となっていた。言葉を交わしたことがあったが印象としては幼かった。
幼児退行と言う言葉が浮かんだ。自己防衛の一種だろう。
彼女はなぜ、何のために生きているのだろうか。
それは私も……。
ポイントは得られるだろうが私だってせめて、相手くらいは選びたい。
私の初めてはこのような世界になる前に司と真治と3人で済ませた。今だから言えるが最初からハードだった。3回目ぐらいまでは全く楽しめなかったと思う。今では楽しむ余裕は全然ある。
人によっては食料を恵んでくれたりしてくれる。ただ、同じ相手と二日三日程度なら大丈夫だが数日連続での褥はポイントを得られないので一人のもとに留まるということはできなかった。
毎日体を売る必要はなかった。
栄養のある木の実と言うものが一粒1,500円前後で売られるようになった。一粒で栄養面を含めて満足できるから大助かりだ。
ダンジョンに潜っている人が幾つか持たせてくれることもある。1ポイントが10,000円になるから数日に一度は体を休めることが出来る。
数人を一度に相手するときは大変だけどその分稼ぎはよかった。【娼婦】には痛覚が鈍くなり快楽に変わる効果もあるようでなんとかなっている。
私みたいな欠けた者にこそ興奮する物好きもいるらしい。
そういう日の後は少しだけ奮発した。
避妊は勿論している。数日に一回1ポイント消費することで【娼婦】のスキルは避妊が可能だった。仕組みは知らない。知りたくもない。
私は何かを棄てて、何かを得ていることを見て見ぬふりで済ました。今の日本は混沌と化していた。こうなる以前、東京に重要な機能を一極集中させていたせいで、全てを解決するには根本的にそこを取り戻す必要があるという偏った考えの元、戦力になりそうな公務員は粗方向かってしまい終には帰ることはなかった。
思考放棄といっても間違いはなかっただろう。
地元の力だけで出来ることは少なかった。
道端で飢え死ぬ小さな兄妹を見た。
肩を寄せ合う薄汚れた子供たちを見た。
ゴミ捨て場をあさる老婆がいた。
剣を携え、目をぎらつかせた男を見た。
戦う意思、生きる意志がないものは飢え、行動したものが明日の食にありつけていた。
数か月前から企業は給料を払えず潰れ、貨幣経済の成立も危ぶまれる中、ポイントの取引のためという目的のため維持できているようなものだった。
いや、持つべき者が持ち、使うべき者が使っているからという理由もある。
希望的観測。
人々の幻の上に市場は薄皮一枚維持できていた。お金にはまだ価値があった。
次第にポイントが通貨として使われる時が来るかもしれない。
娼婦をやっている自分にはわかる。命を懸けた続けた人が富を手に入れ、それ以外の人との格差が広がり続ける社会になりつつあると。そうあってもいいと思う自分がいた。
あの醜悪卑劣極まりない魔物と戦える人は少ない。いや、戦い続けられる人は少ない。だから、守ってもらうために、生き残るためにそれでもいいのではないのかと思った。
太古の昔から命を懸けて戦いに赴いた男の生殖本能を満たすのは女だった。
極限まで高ぶった荒ぶるそれを包み込み自らを犠牲にしてきた。そういう意味では【娼婦】のスキルを用いた現在の私たちも形態と言うのは理にかなっているのだろう。
望まないレイプの話はこのような世界になったのにあまり聞いたことが無い。私たちが受け皿になっているからだ。これも予期されていたことなのか。
騎士や武士がいた時代のように力あるものがのし上がって行く。くしくも時代をさかのぼっているようにも思えた。
今の私は、股を開くくらいしかできない。
将来、上に立つであろう戦う者たちは腐敗した政治家のようにはならないでくれと願うばかりだった。
取り締まる余力のないこの日本では生きて行くにはこれしかなく、都合もよかった。
幸い、【娼婦】と言うスキルが5ポイントであった。家を出るときに取ったスキルだ。
女性専用のスキルで様々な特典がある。なにより、褥を共にする対象の最大到達階層と同じだけのポイントを得ることが出来るという点が何よりも重要だった。
私たちはダンジョンから出てきた人に狙いを定めて誘いに行く。
私より幼い子で心を壊した人の中には壁から裸で下半身だけ出してへらへらしている人がいるのも知っている。顔を見られないのはいいが最早物扱いだ。公衆便所と言ってもいい。
物のようにレンタルされる両腕両足のない中学生くらいの少女もいた。
いつの間にか見なくなったが少し前まで、もっと小さい子もいたか。
彼女は外の室外機の上に裸で置かれ、使いたい者が連れて行き、一晩経つと戻される。
そこは彼女の固定位置となっていた。言葉を交わしたことがあったが印象としては幼かった。
幼児退行と言う言葉が浮かんだ。自己防衛の一種だろう。
彼女はなぜ、何のために生きているのだろうか。
それは私も……。
ポイントは得られるだろうが私だってせめて、相手くらいは選びたい。
私の初めてはこのような世界になる前に司と真治と3人で済ませた。今だから言えるが最初からハードだった。3回目ぐらいまでは全く楽しめなかったと思う。今では楽しむ余裕は全然ある。
人によっては食料を恵んでくれたりしてくれる。ただ、同じ相手と二日三日程度なら大丈夫だが数日連続での褥はポイントを得られないので一人のもとに留まるということはできなかった。
毎日体を売る必要はなかった。
栄養のある木の実と言うものが一粒1,500円前後で売られるようになった。一粒で栄養面を含めて満足できるから大助かりだ。
ダンジョンに潜っている人が幾つか持たせてくれることもある。1ポイントが10,000円になるから数日に一度は体を休めることが出来る。
数人を一度に相手するときは大変だけどその分稼ぎはよかった。【娼婦】には痛覚が鈍くなり快楽に変わる効果もあるようでなんとかなっている。
私みたいな欠けた者にこそ興奮する物好きもいるらしい。
そういう日の後は少しだけ奮発した。
避妊は勿論している。数日に一回1ポイント消費することで【娼婦】のスキルは避妊が可能だった。仕組みは知らない。知りたくもない。
私は何かを棄てて、何かを得ていることを見て見ぬふりで済ました。今の日本は混沌と化していた。こうなる以前、東京に重要な機能を一極集中させていたせいで、全てを解決するには根本的にそこを取り戻す必要があるという偏った考えの元、戦力になりそうな公務員は粗方向かってしまい終には帰ることはなかった。
思考放棄といっても間違いはなかっただろう。
地元の力だけで出来ることは少なかった。
道端で飢え死ぬ小さな兄妹を見た。
肩を寄せ合う薄汚れた子供たちを見た。
ゴミ捨て場をあさる老婆がいた。
剣を携え、目をぎらつかせた男を見た。
戦う意思、生きる意志がないものは飢え、行動したものが明日の食にありつけていた。
数か月前から企業は給料を払えず潰れ、貨幣経済の成立も危ぶまれる中、ポイントの取引のためという目的のため維持できているようなものだった。
いや、持つべき者が持ち、使うべき者が使っているからという理由もある。
希望的観測。
人々の幻の上に市場は薄皮一枚維持できていた。お金にはまだ価値があった。
次第にポイントが通貨として使われる時が来るかもしれない。
娼婦をやっている自分にはわかる。命を懸けた続けた人が富を手に入れ、それ以外の人との格差が広がり続ける社会になりつつあると。そうあってもいいと思う自分がいた。
あの醜悪卑劣極まりない魔物と戦える人は少ない。いや、戦い続けられる人は少ない。だから、守ってもらうために、生き残るためにそれでもいいのではないのかと思った。
太古の昔から命を懸けて戦いに赴いた男の生殖本能を満たすのは女だった。
極限まで高ぶった荒ぶるそれを包み込み自らを犠牲にしてきた。そういう意味では【娼婦】のスキルを用いた現在の私たちも形態と言うのは理にかなっているのだろう。
望まないレイプの話はこのような世界になったのにあまり聞いたことが無い。私たちが受け皿になっているからだ。これも予期されていたことなのか。
騎士や武士がいた時代のように力あるものがのし上がって行く。くしくも時代をさかのぼっているようにも思えた。
今の私は、股を開くくらいしかできない。
将来、上に立つであろう戦う者たちは腐敗した政治家のようにはならないでくれと願うばかりだった。
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