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1章

7 どうしようもないやりとりと保険

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 ボーナスゲットのアナウンスを聞き終え、後ろの人たちに目を向けた。

 先程は見えなかったが女の方はかなり殴られたようで顔にあざが出来ていた。男たちもほどほどに傷を負っているようだ。

「大丈夫……ではないっすね。」

「あ、ああ。まずは助かった。礼を言う。」

「言葉はいいっす。それで、このままって訳にもいかないんすよね。お互い、後腐れしたくないんで。」

 意識のある二人は頭を下げてきた。しかし、これはそんなことで済ますことが出来る事ではない。

 ここでの救助と地上での救助の意味合い、その価値は地上とは大いに異なる。そしてその対価も。

「ああ。」

「オレはあんたたちの命を助けました。そしてこの状況はいかなる理由があろうとも俗にいうモンスタートレイン。ロールプレイングゲームなんかだとPKだったりで使われる手っす。それをふまえてどう落とし前を付けるんすか?」

 女の人を背負っていた人は木下と名乗り「落とし前か……。」とつぶやく。

 背負っていた女の人は壁を背に座らされていた。木下の後ろでもう一人の男が介抱している。

 オレはショートソードを抜いたままだ。刃は向けていないがいつでも行動を起こせるようにはしている。

 ここはダンジョンだ。一人を先頭にして腰を抜かす人たちがいた。仲間を囮にしているゴブリンを見た。自分以外は敵だ。

「わかった。今の俺に差し出せる物は現金しかない。これごと持って行ってくれ。」

木下はカード数枚を抜くとそれごと差し出してくる。しかし、何があるかわからない。

「了解っす。但し、それを置いてそのまま離れてください。」

 彼らはゆっくりと離れて行く。慎重に財布を拾い、中身を抜き取ると万札で5万円入っていた。オレはそれを躊躇うことなく抜き取った。

 そのまま、財布を足元に置く。

 代わりに先程ドロップした下級外傷ポーションを3本置く。そしてオレは下がった。

「下級外傷ポーションっす。知ってるかどうか分かんないっすけど、擦り傷程度なら治せるんで気休めくらいにはなります。オレはこのまま進むんで立ち去った後使うことを勧めるっす。」

 オレはそのまま後退してその場を去った。慈善ではない。命を救うという契約に応えただけだ。5万円の対価に含まれている。

【No125,431,112偉業の達成 9ポイント獲得】
【No125,431,112【数量増加2】の効果により追加 18ポイント獲得】

 少し離れたところで前を向いて歩いているとナレーションが頭に響く。この偉業と言うのがよく分からない。オレの印象では何かを成し遂げたら与えられるような感じだ。

 そのまま50ポイント消費して【数量増加3】を取得する。これで得られるものが4倍になった。

 あとは、10ポイントずつ消費して【品質向上2】と【ポイントドロップ2】【武器ドロップ2】を取得した。

 多分このドロップ系のスキルはその対象がドロップする可能性を上げる、もしくは、作るスキルだと思う。と言うか、スキルがないとそれに対応したものがドロップしない仕組みだろう。

 多分その中でもポイントがドロップする可能性は限りなく低い。一度もドロップしていないのがその証拠だ。

 よし、もう50ポイント使って【品質向上3】まで上げてしまおう。おかげで2ポイントまで減ってしまったが、後のことを考えるとこれが最善だ。

 先程使ったショートソードを見ると既に一部分かけていた。たった一度の戦闘でのことである。それほど品質が良くないことを悟った。

 やはり、命を預ける物は信用のあるものにしたい。

 オレはショートソードを地面と足で折り、その辺に捨てる。【収納空間】から新しいのを出した。

 先程のと変わらないものだが5か6体までだったら戦えるだろう。投げ捨てた物はその内消えるだろう。オレから出た排せつ物がそうだった。
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