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1章

29話

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色々と許可を取って、いろいろと改造した。その一言に尽きる。

魔の水牛を使って田を起こし、骸骨兵を用いて田植えを行った。

稲株は僕の固有能力でもみ殻ごと再生して、水につけて発芽したものを培養し、云々といろいろとやった。

脱穀機も精米機も僕の係長室に置かれた。稲作室の呪いなどに関しては局員に持ち替わりで霊力や魔力の補填をさせるつもりなので問題はない。

田植えから外の時間で2日半が過ぎ、稲刈りをして、稲を乾燥させ、3日を過ぎた頃に脱穀や精米をした。暫く困らなそうだったので、米は土嚢袋に30キロずつ入れて、冷蔵庫へポイだ。

冷蔵庫も内部の物が腐らない呪い的な処理と空間拡張は済ませてあるので着々と準備は進んでいる。

「それで、軍曹。料理人どうしましょう?」
「まさか、局内で僕しか料理できないとは思わないじゃないですか!?」

僕は秘書官のアリスさん、同僚の係長たちとミーティングルーム(食堂)で顔を見合わせていた。

数日、自身の部下たちに料理が出来るのかを聞いて回ったのだが、全員壊滅的らしい。炊き出しなどの材料が揃っていてすべて指示されている状況ならまだしも、まともに込めすらたけるのか怪しいところのようだ。

「由々しき事態ですね。局の性質上外部から人を雇い入れるなんてできませんし、自衛隊組に出来る人は本当にいないんですか?特に松崎さん!」
「ずっと営内だったからそのぉ……。最後に自分で料理と呼べるものを作ったのはいつの日のことでしたか……」
「軍曹!ぶっちゃけ、恒常的に現場に出ることがないのは各係の秘書官と、2人の課長とトップの局長だけです。ですので……」
「いや、あの人たちがまともな料理を作るとは……」
「恐れ多いというか……」
「喉を通らない……」
「ああ、自衛隊の時の階級だとお三方とも左官か尉官でも目に見えた功績出してますもんね」
「そうなんですよ軍曹」
「千載一遇のチャンスをものにした人たちなんですよ!」
「あの学園のですね」
「美濃部当時現場の最高責任者だった美濃部局長が先頭になって突入してきましたからね……」
「……?」
「え?」
「もしかして軍曹、内部にいたんですか!?」

あ~言っちゃいけない話だっただろうか。

「言ってませんでしたっけ?」
「はい全く」
「聞いてません」
「同じく」
「うんうん」

「屋上の狙撃手を掃討して、ロープを降ろした立役者ですよ?」
「でも、自分その後処理に駆り出されたんですけど、名簿に名前無かったですよね?」
「あ~、服部二等陸尉、当時の三等陸尉に車で次の戦場にキャリーしてもらっていましたから」
「次の戦場ですか?」
「あれ、聞いてませんか?」
「「「「まったく」」」」

情報統制され過ぎてやしないか?

「あの事件が起きる数か月前に、警察官の子息たちが山の廃病院で馬鹿をやりまして、もともと強かった悪霊がとんでもない強さになっちゃったんです。当時の僕は今ほど強くなかったので、いろいろ伝手で助けを呼んで、五芒星の結界で今は封印と弱体化を図っています。結果は、云万人の死者を出すことになったり、いまの情勢の緊張状態を促すきっかけになったり、世界から入国拒否される事件にもなりましてね」
「あれって、そう言う裏があったんですね……」
「その時には服部課長も霊能力を使えたんですか?」
「いいや?」
「では、あの人はキャリーしただけですか?」

どう説明しようか。

「占拠事件自体、帰国できなく、本国からの支援も途絶えた大使館職員やスパイが国の垣根を越えて行った行為です。その裏で、一部の国により、5か所あった建設途中の五芒星の一角を担う神社が急襲されましてね、極秘に警護についていた自衛官も含め2桁に登る死傷者を出しました。で、山の中にも入った馬鹿がいると情報が入りまして、山の外で待機しているであろう連中の運転手の捜索及び確保に向かってもらいました」
「そのスパイは?」
「さあ、学園で死体になって見つかったことになったのか、元からいなかったことになったのか……」
「怖い怖い……」
「それで軍曹は山の中で何をしていたんです?」
「拡散した呪いが引き寄せた悪霊の軍勢とひいこら戦って、間に合わせで掛けていた結界やら封印やらを修復したり、かけ直したり。それから数日は夜中に寝る暇もありませんでしたね」
「隣の県にいた自分の小隊がよくわからない建築途中の神社の警護をさせられたのはそれが原因か……」

思い思いに当時のことを振り返っているようだ。

「ま、それと並行して自衛隊内でも新兵器やらの開発が進んでいるようですけどね。戦術的マイクロ核兵器=通称“女神の涙”、飛来物迎撃ミサイル=通称“12パック天雷逆鉾”、AI搭載式自立機械水陸両用銃撃戦術歩兵=通称“青狸”……自衛隊の物好きが設計して理論上完成した人形決戦機械巨大兵器の製造計画はどうなったんだろう……」
「「「ロボ!?」」」

男性陣が一斉に最後のロボに反応したんだが……。

「軍曹、本当にそんなものが!?」
「はい。ロボ以外は総理公認で既に配備されているとかどうとか。“女神の涙”は無許可の潜水艦などが領海侵犯してきたら問答無用で打ち込むそうです」
「海洋汚染などは大丈夫なのか!?」
「あ、僕が海の神様に拝み倒して、もしもの時は何とかするように頼んでおきました。全国行脚も大変ですよ」
「「「「ご苦労様です!」」」」

話しが脱線しているような気がする。アリスさんがせっせとお茶を入れ直してくれた。

「ああ、話を戻しましょう。料理担当の話しでしたよね?」
「あ、そうでした」
「そうそう」
「うんうん」

「言うて、あの人たち現場大好き人間ですよ?」
「それはそう」
「たたき上げだから」
「好戦的過ぎて同じ種族か疑うレベル」
「手があいていたら手伝ってくれるかもくらいの期待しか出来ませんよ」

ヴーーーン ヴーーーン ヴーーーン

僕のスマートフォンのバイブレーションが鳴る。一言断ってから通話に出た。かけてきたのは1課2班の岸田 俊樹きしだ としき局員だ。

「係長の真田です」
『1課2班の岸田 俊樹きしだ としきです。係長、お時間大丈夫ですか?』
「構わない」
『現在、神奈川の西海岸線沿いをツーリングしていたのですが、白石町に差し当たったあたりでバールやハンマーを所持した不審な外国人グループを発見しました。この近くには何かを封じていると思しき地蔵があります。いかがいたしますか?』
「そいつらに霊能力等の痕跡は?」
『5倍くらいでしょうか。多少一般人よりも霊力が高いかと』
「当局が対処すべきバンデッドか工作員と推定。誤認でも構わない。行動を起こされる前に無力化せよ」
『了解!』

「聞いての通りです。当係に所属している岸田 俊樹きしだ としき局員が神奈川県白石町周辺で不審な外国人グループを発見。交戦を始めた模様です」
「武蔵山駐屯地の辺りか……」
「アリスさん、周辺にいる局員に連絡を取って応援に向かわせてくれ」
「了解しました!」
「松崎係長は係の者を呼び戻してこの場に待機でお願いします。2課の皆さんは隠形状態で国会周辺の警備をお願いします。あれが陽動だとしたら不味い」
「「「了解!」」」

「アリスさん、局長と係長は!?」
「そっちで確認を取ってください!」
「は?谷地係長、そっちの風祭課長に連絡を!」
「了解!」

アリスさんはアリスさんで一斉メールを送ったり、電話をしたり、忙しそうにしている。秘書官が彼女一人しかいないので他の係の分まで担当しているようだ。

僕からも局長に通話を入れた。

『真田軍曹!何事だ!』
「当係に所属している岸田 俊樹きしだ としき局員が神奈川県白石町周辺で不審な外国人グループを発見。霊的な何かを破壊しようとしていると思われるため交戦を始めた模様です。1課2係と1係の神奈川にいる者を現場に急行させています。2課には国会周辺の警戒に動いてもらっています」
『よろしい。その周辺の武蔵山駐屯地には対空ミサイルの類が配備され始めたとのうわさだ。それが狙いとも考えられる。私はちょうど舞浜にいる。東京湾を走れば20分ほどでつくだろう。服部君には?』
「まだです」
『そうか。彼は今朝早くから北海道に視察任務に出ている。事後報告で構わん』
「了解。本官も現場に向かいます!以上!」

通話は切れた。

「僕は空間魔法の転移で現場に向かいます」

ヴーーーン ヴーーーン ヴーーーン

出ようとしたところで岸田局員から連絡が入る。今度はスピーカーにした。

『岸田です。至急ご報告したいことが』
「制圧は完了したか?」
『はい!中国系と思われる計7名を捕縛。尋問したところ、彼らの回収用に太平洋側からロシアのステルス潜水艦が入り込んでいるようです。東京湾で1撃かました後、帰還する計画のようです。しかしその後、国内に潜伏していた工作員が一斉に諜報及び破壊を含む工作活動を開始する予定だとか』
「「「「はぁっっー???」」」」

「真田隊長!自分、富士見の基地の海自に同期がいるので連絡してみます」
「頼みます小松係長」
「了解!」

ヴーーーン ヴーーーン ヴーーーン

出ようとしたところで今度は服部課長から連絡が入る。今度もスピーカーにした。

「真田です!何事ですか!?」
『ロシアが海上よりミサイルを東京に向けて発射。北海道の自衛隊が撃破したが、同時に艦隊による領海侵犯を確認。北海道上陸を目論んでいるようだ。本官はこれより独自に迎撃及び防衛に入る。真田係長。貴君を本官の権限において第一課の課長代理に任命する!』
「了解!御武運を!」
「以上!」
「以上!」

向こうも始まったらしい。

「真田係長!富士見において既に臨戦態勢になり、空自と海自の合同作戦が開始されている模様です。既に、現地住人には避難勧告が出ていると……。それと、“女神の涙”とこぼしていました」
「ついに実戦に出されるようですね」
「アリスさん各局員に通達。日本が侵略の危機にさらされている。不審者を発見し次第、捕縛ないし無力化を第一課課長代理真田健太の名のもとに許可する」
「「「はっ!」」」

「あ、やっとつながった風祭課長!緊急事態です」
『こっちも緊急事態だ!5分前ロシア人とみられる男らによって将門塚が破壊された。男らは拘束したが、その直後に将門公と見られる悪霊が全員呪殺。都内の悪霊が集まってきているぞ。本体も恐るべき速度で力を取り戻している。不味いなんてものではない!至急応援をよこせ!雑魚刈りで手いっぱいだ!』
「了解しました!」

通話が切れる。

「持ち場に変更なし。僕が先に出向き、片付け次第神奈川に急行します。」
「アリスさん。神奈川に向かっていない1課の局員に通達。国会議事堂前に急行させろ!」
「了解!」
「アリスさんはそのままこの場で全体管制及び指揮。情報伝達の要となれ」
「了解!」
「松崎さん、谷地さん、小松さんは僕と一緒に将門退治!転移で跳びます!僕に触れてください」
「「「了解!」」」

僕は体外魔力と体内魔力を練り、情報を混ぜ込んで世界に投影。転移の魔術を発動させた。
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