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2章
24 人の世に外れた物 4
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ガイは機体を岩陰に屈ませ、急いで降りる。背後で起こった巨大な戦いを尻目に洞窟へ駆け込んだ。
天然の洞窟はすぐに行き止まり……に見せかけてあったが、岩壁に見せかけた隠し扉がある事をすぐに見抜く。
(罠をいちいち調べる時間は惜しいな)
ガイは腰の鞄から珠紋石を取り出し、その力を解放した。
【ディテクト・シークレット】精神領域第2レベルの呪文。魔法の探知能力で、隠れた物があれば「何かがある」事を察知できる。
(ここに隠された物はもう無い。よし!)
ガイは扉の奥に飛び込んだ。
――岩山の中に造られた基地内――
基地の中には魔王軍の残党も罠もあちこちで待ち受けていた。
魔物兵は珠紋石と聖剣で、罠は探知魔法と盗賊系技能で、ガイは次々と突破する。
基地内にはいくつも分かれ道があったが――
「あっちから大きなモノを感じるよ」
その度にイムが行き先を指し示してくれた。
(地に属する太古の魔竜……その存在を感じるんだな)
それを察し、ガイはイムが導く方へ走る。
――基地内最深部――
城でも入りそうな広大な空洞。壁にそって螺旋を描くように張り出した通路が設けられている。
その巨大な部屋で、ガイはついに目当ての物を見つけた。
身長はケイオス・ウォリアーの2~3倍……50メートルはあるだろう。外見は兵隊怪獣によく似ているが、大きさがまるで違う。
最も違うのは下半身。尻尾ではなく体が後ろに伸びており、何対もの足がそれを支えている。まるで女王アリのように。
その頭上、洞窟の天井には炎のように輝く結晶のドームが備えられており、そこから何本もの管が伸びて親玉怪獣の体に繋がっていた。
ガイが入った扉は怪獣の頭と同じ高さの張り出し通路に出ていた。
そこでジュエラドンの本体を眺め、思わず呟く。
「映像で見たラヴァフロウと全然違う……」
「なんかこわいよぉ」
古竜を改造して造った異形の怪物を見て、イムは震えてガイにしがみついた。
「増殖する力を重点的に改造した結果だ」
その声は頭上からかけられた。
ガイは自分より上にある張り出し通路に黒装束の刺客を見つける。
「影針……」
敵の姿を見つけたガイは、聖剣を手に、腰の鞄から呪文の封じられた宝珠を取り出した。
そして呪文を発動。
全く別方向の、やはり己より上に位置する通路へ!
真空の刃が通路を切り裂く――と、そこに潜んでいた影が跳び退いて刃を避けた。
黒装束は布人形に黒い布で作ったダミーである。
影針は声の反響を利用し、全く別の位置に隠れていたのだ。
「見破ったか。ユーガンが来るかと思えば先にお前とは。相変わらず邪魔な奴だ」
「この状況なら誉め言葉だな。面倒ついでに大それた事は諦めてどこかへ消えろ。それとも、どうしてもケイト帝国を潰さないと済まない理由がお前にも有るのか?」
ガイの問いに、影針は「ふん」と小さく鼻を鳴らす。
「無いな。ただここから始めるのが手っ取り早かっただけだ。ここでやらんならどこか別の地でやらねばならん。人類の生息域を奪い、魔物の領域を広げるというのが俺の望みだからな」
「魔物の国を作りたいのか?」
「大雑把に言えば、その通りだ。ユーガンがこの帝国にとどめを刺すというのでそれに乗り、跡地で俺の望みを叶えようと思ったが……まさか奴がこうも早く諦めるとは。しょせん、奴も根っこでは人類側だったというわけだ」
影針の声には嘲りと失望が混じっていた。
こいつは魔物なのか……以前みなで話した事を思い出すガイ。
ならば常に黒頭巾に隠れている影針の容姿は?
ガイは改めて、確認のため訊いた。
「お前は人類側じゃないという事か」
「その通り」
「ならば……魔物なんだな?」
「そういう事になるな。俺の故郷の世界でも、この世界でも、人間やその友好種族どもの分類に従えば。ならばこちらの身の振り方も、おのずと決まるという物だ」
影針の声にはどこか突き放したような、蔑むような響きがあった。
そして近くの壁に触れる。
そこには隠されたスイッチがあり……彼はそれを押した。
張り出し通路が崩れる!
崩壊し、手すりも床も落下する。だが全てが崩れ去ったわけではなく、通路を支えていた支柱だけは残った。
もしガイに軽業やアクロバットに関する技能が無ければ、床材とともに洞窟の地面に叩きつけられていたに違いない。だが工兵に含まれる盗賊系の技能がここでも役に立った。
ガイは支柱の一本に動じる事なく立ち、上方で同じように立つ影針へ向かって身構える。
飛来する棒手裏剣を弾き飛ばす木刀。
足場から足場へと跳びながら、ガイと影針の戦いが始まった!
天然の洞窟はすぐに行き止まり……に見せかけてあったが、岩壁に見せかけた隠し扉がある事をすぐに見抜く。
(罠をいちいち調べる時間は惜しいな)
ガイは腰の鞄から珠紋石を取り出し、その力を解放した。
【ディテクト・シークレット】精神領域第2レベルの呪文。魔法の探知能力で、隠れた物があれば「何かがある」事を察知できる。
(ここに隠された物はもう無い。よし!)
ガイは扉の奥に飛び込んだ。
――岩山の中に造られた基地内――
基地の中には魔王軍の残党も罠もあちこちで待ち受けていた。
魔物兵は珠紋石と聖剣で、罠は探知魔法と盗賊系技能で、ガイは次々と突破する。
基地内にはいくつも分かれ道があったが――
「あっちから大きなモノを感じるよ」
その度にイムが行き先を指し示してくれた。
(地に属する太古の魔竜……その存在を感じるんだな)
それを察し、ガイはイムが導く方へ走る。
――基地内最深部――
城でも入りそうな広大な空洞。壁にそって螺旋を描くように張り出した通路が設けられている。
その巨大な部屋で、ガイはついに目当ての物を見つけた。
身長はケイオス・ウォリアーの2~3倍……50メートルはあるだろう。外見は兵隊怪獣によく似ているが、大きさがまるで違う。
最も違うのは下半身。尻尾ではなく体が後ろに伸びており、何対もの足がそれを支えている。まるで女王アリのように。
その頭上、洞窟の天井には炎のように輝く結晶のドームが備えられており、そこから何本もの管が伸びて親玉怪獣の体に繋がっていた。
ガイが入った扉は怪獣の頭と同じ高さの張り出し通路に出ていた。
そこでジュエラドンの本体を眺め、思わず呟く。
「映像で見たラヴァフロウと全然違う……」
「なんかこわいよぉ」
古竜を改造して造った異形の怪物を見て、イムは震えてガイにしがみついた。
「増殖する力を重点的に改造した結果だ」
その声は頭上からかけられた。
ガイは自分より上にある張り出し通路に黒装束の刺客を見つける。
「影針……」
敵の姿を見つけたガイは、聖剣を手に、腰の鞄から呪文の封じられた宝珠を取り出した。
そして呪文を発動。
全く別方向の、やはり己より上に位置する通路へ!
真空の刃が通路を切り裂く――と、そこに潜んでいた影が跳び退いて刃を避けた。
黒装束は布人形に黒い布で作ったダミーである。
影針は声の反響を利用し、全く別の位置に隠れていたのだ。
「見破ったか。ユーガンが来るかと思えば先にお前とは。相変わらず邪魔な奴だ」
「この状況なら誉め言葉だな。面倒ついでに大それた事は諦めてどこかへ消えろ。それとも、どうしてもケイト帝国を潰さないと済まない理由がお前にも有るのか?」
ガイの問いに、影針は「ふん」と小さく鼻を鳴らす。
「無いな。ただここから始めるのが手っ取り早かっただけだ。ここでやらんならどこか別の地でやらねばならん。人類の生息域を奪い、魔物の領域を広げるというのが俺の望みだからな」
「魔物の国を作りたいのか?」
「大雑把に言えば、その通りだ。ユーガンがこの帝国にとどめを刺すというのでそれに乗り、跡地で俺の望みを叶えようと思ったが……まさか奴がこうも早く諦めるとは。しょせん、奴も根っこでは人類側だったというわけだ」
影針の声には嘲りと失望が混じっていた。
こいつは魔物なのか……以前みなで話した事を思い出すガイ。
ならば常に黒頭巾に隠れている影針の容姿は?
ガイは改めて、確認のため訊いた。
「お前は人類側じゃないという事か」
「その通り」
「ならば……魔物なんだな?」
「そういう事になるな。俺の故郷の世界でも、この世界でも、人間やその友好種族どもの分類に従えば。ならばこちらの身の振り方も、おのずと決まるという物だ」
影針の声にはどこか突き放したような、蔑むような響きがあった。
そして近くの壁に触れる。
そこには隠されたスイッチがあり……彼はそれを押した。
張り出し通路が崩れる!
崩壊し、手すりも床も落下する。だが全てが崩れ去ったわけではなく、通路を支えていた支柱だけは残った。
もしガイに軽業やアクロバットに関する技能が無ければ、床材とともに洞窟の地面に叩きつけられていたに違いない。だが工兵に含まれる盗賊系の技能がここでも役に立った。
ガイは支柱の一本に動じる事なく立ち、上方で同じように立つ影針へ向かって身構える。
飛来する棒手裏剣を弾き飛ばす木刀。
足場から足場へと跳びながら、ガイと影針の戦いが始まった!
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