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2章
23 皇女の帰還 4
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改造古竜ジュエラドン……兵隊といえど強大な敵だ。しかしガイ達は何度も倒して来たし、敵は一体だけである。
加勢したガイ達に危い場面など一度もなく――リバイブキマイラの放つ電光に貫かれ、怪獣は断末魔をあげて倒れた。
加勢された量産機部隊の隊長機らしき機体から女の声で通信が入る。
『助けを頼んだ覚えは無いが、一応、礼は言っておく。お前達は……ドラゴンスレイヤーと呼ばれている者達か?』
「なんだかそれがパーティ名にされつつあるような」
スティーナが不満気に呟いたが、おかまいなしにタリンが通信を返した。
「おう、そう呼ばれている神VVVVVランクパーティならまさにオレ達だ。で、そっちは?」
自分で考えた在りもしないランクを堂々と語られた、相手からの返答は……
『我々はケイト帝国軍の部隊だ』
「え? 全然違いませんか?」
「違うわね」
驚くスティーナ、訝しむシャンリー。
ケイト帝国の軍ならば機体に帝国軍の紋章がマーキングされている。だがこの部隊にそんな物は描かれていない。
いや――正確には、違うマークが描かれているのだ。
それを察したか、隊長機から説明が入った。
『帝国に雇われている部隊と言うべきだったな。本当の所属は【リバーサル】。魔王軍に滅ぼされた国の戦士達が集まったレジスタンスだ。私は部隊長のミシェルという』
モニターに映ったのは、二十代半ばほどの、ハチマキを巻いた凛々しい女戦士だった。
【リバーサル】――魔王軍に対するレジスタンスグループの一つ。魔王軍に滅ぼされた国はいくつもあるが、その一つ・コノナ国の騎士団が中心となって生まれた一団である。
彼らは壊滅したケイト国に近づき、皇族ただ一人の生き残り・第二王女を救って身を寄せた。
勇者と魔王の最終決戦にも主力を送り、最も有力な部隊の一つであったともいう。
対して帝国軍の再編は――領内で離反・独立が相次いでいる事もあり――なかなか進まない。
結果、現時点では傭兵組織でありながらケイト帝国の主力を担う立場であった。
「そのレジスタンスなら聞いた事がある。思った以上に帝国に頼られているようだ」
「つーか帝国が思った以上に弱ってんな。余所者に守られて息してんのかよ」
感心するレレン、呆れるタリン。
そんな二人にスティーナが説明する。
「将軍クラスが魔王軍の大侵攻で軒並み討ち死にしましたからね。旧体制が崩壊した今、新たな将軍を登用して軍の再編を進める必要があるのに、旧体制が崩壊してあちこちの領に独立されたから人材集めにも苦労しているようです」
『ドラゴンスレイヤーの諸君に聞きたい。君達は我々に恩を売って帝国の兵にでもなりたいとでも言うのか?』
ガイ達へミシェルが訊く。
どこか反発するような、何か疑うような気配をガイはそこに感じた。
(助けられてプライドでも傷ついたのかな?)
そう思いつつ、どう答えたものか迷う。
「うーん……冒険者じゃないし、退治自体は仕事じゃないし、帝国には雇われるわけじゃないんだよな」
『ではなぜ竜退治しながら放浪している?』
要領を得ないガイに、女戦士は苛立っているようだ。
「勿体ぶらずさっさと言えよ」
「ああ、そうだな。俺達はシャンリー皇女に雇われた者で、仕事は送迎で、帝国は届け先なんだ」
面倒になったタリンに促され、ガイは本当の所を正直に話す。
ミシェルの――いや、彼ら一個隊の反応は――
『はあああああ!?』
驚愕。
ちゃんと理解する事もできなかった。
「口だけで信じて貰える内容ではありません。映像を送りますね」
気を利かせてスティーナが隊長機へ操縦席の中を、後部座席にいるシャンリーを見せる。
「見えますか? こちらがシャンリー皇女です」
しかしミシェルの反応から戸惑いは消えなかった。
『第二皇女のヨウファ様に似ている。だが我々は本物を見た事が無いし……』
「まぁ彼らは外国人のレジスタンスだしな……」
肩を竦めるガイ。
「俺はケイト生まれのケイト育ちだが、それでもこんな事になるまで皇女様なんぞ見た事なかったわ」
肩を竦めるタリン。まぁ彼の生まれは首都から見れば辺境もいい所だ。
「私もです。首都近辺でもなければそんなもんでしょう」
肩を竦めるスティーナ。まぁ彼女の生まれも首都から見れば辺境もいい所だ。
結局、相手の部隊に証明する手段は無いのである。
しかしシャンリーは動揺する事無く皆に告げる。
「では我々は首都へ向かいましょう。ヨウファに会えばいい事だから」
元よりその予定だったのだ。
ガイは
「そうだな。じゃあ達者で」
そう言って運搬機の格納庫へ戻る事にした。タリンとレレンの機体もそれに続く。
しかしミシェルから慌てて通信が入った。
『ままま、待ってくれ。第一皇女がこれほどの腕利きを連れて帰還するなど、本当なら帝国の行先を左右する事だ。我々が都まで付き添う』
「あ、信じてくれるんだ」
ちょっと意外なガイ。しかし隊長は釘をさす。
『言っておくが、何かのペテンではないかと疑ってもいるからな?』
「そうですね。でも本物の第一皇女だという可能性も考えた方がいいですよ」
あくまで不振をぬぐわない相手に、スティーナがジト目を向けて応えた。
その後ろでタリンがあくびをかましていた。期待どおり女はいたが、どうにも不信感ばかり向けてきて賞賛してくれないので、興味を失くしてしまったのだ。
――三日後。荒野の街道――
【リバーサル】の斥候機から通信が入る。
『隊長! ジュエラドンです!』
『総員、戦闘態勢―!』
ミシェルの号令とともに、彼らは前方へと突進した。
その向こう……行き先から咆哮とともに結晶のような鱗を輝かせ、怪獣が姿を見せる。
「今日も出ましたね」
運搬機の操縦席でげんなりして呟くスティーナ。
「昨日も一昨日もだな」
自機の操縦席でげんなりして呟くレレン。
「毎日という事ね。今日はまだお昼にもなってないから、午後にも出るかもしれないわ」
スティーナが運搬機の後部座席で考え込む。
自機の操縦席でタリンが怒鳴った。
「どうなってやがる! 俺らの進路上にどんどんわきやがるぞ!」
『隊長!』
そこへ部隊の別の機体からさらに通信が。
『なんだ!? また出たのか?』
叫び返すミシェルを、入る報告が仰天させる。
『出ました! 首都にも!』
『な、なんだってええ!?』
(まさか俺達の前に頻出しているのは……足止めか?)
ガイの頭を嫌な予感が掠めた。
加勢したガイ達に危い場面など一度もなく――リバイブキマイラの放つ電光に貫かれ、怪獣は断末魔をあげて倒れた。
加勢された量産機部隊の隊長機らしき機体から女の声で通信が入る。
『助けを頼んだ覚えは無いが、一応、礼は言っておく。お前達は……ドラゴンスレイヤーと呼ばれている者達か?』
「なんだかそれがパーティ名にされつつあるような」
スティーナが不満気に呟いたが、おかまいなしにタリンが通信を返した。
「おう、そう呼ばれている神VVVVVランクパーティならまさにオレ達だ。で、そっちは?」
自分で考えた在りもしないランクを堂々と語られた、相手からの返答は……
『我々はケイト帝国軍の部隊だ』
「え? 全然違いませんか?」
「違うわね」
驚くスティーナ、訝しむシャンリー。
ケイト帝国の軍ならば機体に帝国軍の紋章がマーキングされている。だがこの部隊にそんな物は描かれていない。
いや――正確には、違うマークが描かれているのだ。
それを察したか、隊長機から説明が入った。
『帝国に雇われている部隊と言うべきだったな。本当の所属は【リバーサル】。魔王軍に滅ぼされた国の戦士達が集まったレジスタンスだ。私は部隊長のミシェルという』
モニターに映ったのは、二十代半ばほどの、ハチマキを巻いた凛々しい女戦士だった。
【リバーサル】――魔王軍に対するレジスタンスグループの一つ。魔王軍に滅ぼされた国はいくつもあるが、その一つ・コノナ国の騎士団が中心となって生まれた一団である。
彼らは壊滅したケイト国に近づき、皇族ただ一人の生き残り・第二王女を救って身を寄せた。
勇者と魔王の最終決戦にも主力を送り、最も有力な部隊の一つであったともいう。
対して帝国軍の再編は――領内で離反・独立が相次いでいる事もあり――なかなか進まない。
結果、現時点では傭兵組織でありながらケイト帝国の主力を担う立場であった。
「そのレジスタンスなら聞いた事がある。思った以上に帝国に頼られているようだ」
「つーか帝国が思った以上に弱ってんな。余所者に守られて息してんのかよ」
感心するレレン、呆れるタリン。
そんな二人にスティーナが説明する。
「将軍クラスが魔王軍の大侵攻で軒並み討ち死にしましたからね。旧体制が崩壊した今、新たな将軍を登用して軍の再編を進める必要があるのに、旧体制が崩壊してあちこちの領に独立されたから人材集めにも苦労しているようです」
『ドラゴンスレイヤーの諸君に聞きたい。君達は我々に恩を売って帝国の兵にでもなりたいとでも言うのか?』
ガイ達へミシェルが訊く。
どこか反発するような、何か疑うような気配をガイはそこに感じた。
(助けられてプライドでも傷ついたのかな?)
そう思いつつ、どう答えたものか迷う。
「うーん……冒険者じゃないし、退治自体は仕事じゃないし、帝国には雇われるわけじゃないんだよな」
『ではなぜ竜退治しながら放浪している?』
要領を得ないガイに、女戦士は苛立っているようだ。
「勿体ぶらずさっさと言えよ」
「ああ、そうだな。俺達はシャンリー皇女に雇われた者で、仕事は送迎で、帝国は届け先なんだ」
面倒になったタリンに促され、ガイは本当の所を正直に話す。
ミシェルの――いや、彼ら一個隊の反応は――
『はあああああ!?』
驚愕。
ちゃんと理解する事もできなかった。
「口だけで信じて貰える内容ではありません。映像を送りますね」
気を利かせてスティーナが隊長機へ操縦席の中を、後部座席にいるシャンリーを見せる。
「見えますか? こちらがシャンリー皇女です」
しかしミシェルの反応から戸惑いは消えなかった。
『第二皇女のヨウファ様に似ている。だが我々は本物を見た事が無いし……』
「まぁ彼らは外国人のレジスタンスだしな……」
肩を竦めるガイ。
「俺はケイト生まれのケイト育ちだが、それでもこんな事になるまで皇女様なんぞ見た事なかったわ」
肩を竦めるタリン。まぁ彼の生まれは首都から見れば辺境もいい所だ。
「私もです。首都近辺でもなければそんなもんでしょう」
肩を竦めるスティーナ。まぁ彼女の生まれも首都から見れば辺境もいい所だ。
結局、相手の部隊に証明する手段は無いのである。
しかしシャンリーは動揺する事無く皆に告げる。
「では我々は首都へ向かいましょう。ヨウファに会えばいい事だから」
元よりその予定だったのだ。
ガイは
「そうだな。じゃあ達者で」
そう言って運搬機の格納庫へ戻る事にした。タリンとレレンの機体もそれに続く。
しかしミシェルから慌てて通信が入った。
『ままま、待ってくれ。第一皇女がこれほどの腕利きを連れて帰還するなど、本当なら帝国の行先を左右する事だ。我々が都まで付き添う』
「あ、信じてくれるんだ」
ちょっと意外なガイ。しかし隊長は釘をさす。
『言っておくが、何かのペテンではないかと疑ってもいるからな?』
「そうですね。でも本物の第一皇女だという可能性も考えた方がいいですよ」
あくまで不振をぬぐわない相手に、スティーナがジト目を向けて応えた。
その後ろでタリンがあくびをかましていた。期待どおり女はいたが、どうにも不信感ばかり向けてきて賞賛してくれないので、興味を失くしてしまったのだ。
――三日後。荒野の街道――
【リバーサル】の斥候機から通信が入る。
『隊長! ジュエラドンです!』
『総員、戦闘態勢―!』
ミシェルの号令とともに、彼らは前方へと突進した。
その向こう……行き先から咆哮とともに結晶のような鱗を輝かせ、怪獣が姿を見せる。
「今日も出ましたね」
運搬機の操縦席でげんなりして呟くスティーナ。
「昨日も一昨日もだな」
自機の操縦席でげんなりして呟くレレン。
「毎日という事ね。今日はまだお昼にもなってないから、午後にも出るかもしれないわ」
スティーナが運搬機の後部座席で考え込む。
自機の操縦席でタリンが怒鳴った。
「どうなってやがる! 俺らの進路上にどんどんわきやがるぞ!」
『隊長!』
そこへ部隊の別の機体からさらに通信が。
『なんだ!? また出たのか?』
叫び返すミシェルを、入る報告が仰天させる。
『出ました! 首都にも!』
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