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2章
23 皇女の帰還 3
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――ケイト帝国首都へ向かう街道。途中の町――
町の宿屋に入ろうと、ガイ一行は運搬機から降りた。
しかし近くの大きな商店から、店主らしき恰幅の良い中年男性が走り出てきた。期待に満ちた顔で彼は話しかけてくる。
「もしや貴方達がドラゴンスレイヤー一行様!?」
「ほほう! 知っているのか。随分と名が売れて来たな」
骸骨馬・シロウの馬上でタリンが得意満面、偉そうに胸をはった。
『だからって敵もいないのに俺に乗るとか、ちょっと調子のってないかお前』
不満ありありで呟くシロウ。
一方、男は大喜びでガイ一行を見渡した。
「やはりそうですか! ゾウムシの運搬機に乗り、妖精を連れ、骸骨の異形馬に乗る……他におられますまい」
「そして怪獣ジュエラドンに困らされているんだな?」
タリンが訊くと、男は首が外れそうな勢いでブンブンと縦にふる。
「ええはい、そりゃあもう!」
彼の話によると――
この町自体がジュエラドンの襲撃を受けたわけではない。
だが街道の途中で流通の定期隊商が襲われ、ほとんど全滅。なんとか逃げ延びた少数にその報告を受けはしたが、届く筈だった半月分の物品が皆無になったので、この町は物不足に悩まされているという。
この男は米問屋の店主なのだが、在庫も尽きかけ、売るぶんどころか自分達一家の食べるぶんさえもうじき無くなるそうだ。
タリンは自信満々で、ドン!と自分の胸を叩いた。
「よっしゃよっしゃ、任せろ! あのブサイクなデカブツを退治する事にかけて、俺達より経験を積んだ奴はこの世にいねぇ」
「なんと頼もしいお方々だ! ああ、この世に光はまだ消えていなかった」
揉み手しながら芝居っ気たっぷりに喜んで見せる米問屋。まぁ嘘というわけではないだろう。
「おーい。ちょっとちょっと?」
そんな二人のやりとりを見て、小声でスティーナが呼び掛ける。
タリンは「ハッハー!」と笑いながら振り返った。
「皆まで言うな。わかってるって。オレは同じ間違いを二度する男じゃねえ」
「何度でもやる男ですからね」
ぼそりと呟くスティーナ。
だがそれは聞こえなかったようで、タリンは米問屋……そしてざわざわと集まって来た町の住人達に大声で叫んだ。
「おい村の衆。悪いがタダ働きはしねえぞ。オレ達もメシを食うからよ」
「ま、まぁそれは……」
不安いっぱいに顔を見合わせる住人達。
それを見渡し、勿体もつけて、タリンはニヤリと笑ってみせる。
「安心しろ。全額後払いだ。確勝絶対帰還のオレ達に前金交渉など不要だからな!」
「は、はい! 退治していただけるならそれなりの額は町中からかき集めます」
今度は演技などではなく必死な顔で、米問屋はそう約束する。
周囲の住人達も皆一様に頷いた。
最初に寄った、壊滅した宿場町。そこでガイ達は再度襲撃してきたジュエラドンを倒した。
しかし依頼されて戦ったわけではないので、町の住人は報酬を支払わなかったのである。まぁ彼らに何か支払う余裕があったかと言えば怪しい所ではあるが。
タリンはその時の事を注意されたと思い、ここで金の約束をさせたのだ。
なおスティーナが言いたかったのは――
「私は足止めされ過ぎてないか、注意を促したかったんですけどね」
タリンをジト目で睨みながら呟くスティーナ。
ガイはここまでの道中を思い出す。実は同じような町がいくつもあり……
「結局、町2つに1つでジュエラドン退治をやってきたなあ」
「ガイ、えらいえらい」
妖精のイムがガイの頭を撫でる。
「はは、サンキュ」
苦笑しながらも礼を言うガイ。
シャンリーが「ふう」と軽い溜息をついた。
「一応、寄り道はしていないんだし……見過ごせないものね」
――怪獣の出現した辺り――
隊商が襲われたという場所は、次の町へ向かう街道の途中だ。ガイ達はそこへ向かう。
町を出て半日ほどの場所で――
操縦席のモニターを見て、スティーナが皆に告げた。
「おや? 誰かが戦っているようです」
「町の人達は他に依頼したような事は言っていなかったが……」
レレンが疑問を口にすると、シャンリーが少し考える。
「次の町からも近いから、そちらから誰か来たんでしょうね」
途端にタリンが大声をあげた。
「商売敵かあ! おい今すぐ出るぞ、そして倒すのはオレ達じゃあ!」
そうやって騒いでいる間に、目視でも現場が見える距離まで来た。
荒野を突き抜ける街道の傍らに見慣れた巨体……結晶のような鱗に包まれた二足歩行の改造竜ジュエラドンが暴れている。
それと戦っているのはケイオス・ウォリアーの一部隊。量産機ばかりではあるが、十機近い数が応戦していた。
しかし尻尾で弾き飛ばされ、鉤爪で引き裂かれ、熱線のブレスを食らって吹き飛び……徐々に損傷が溜まっていく。
量産機の部隊を見てレレンが首を傾げる。
「あの数……冒険者パーティにしては多いな?」
「ともかく、今すぐ出よう」
そう言うガイに、シャンリーも同意した。
「苦戦しているみたいだものね。助けて損は無いと思うわ」
「ハッハー! また感謝の雨が降るな! あの中に女がいたら俺に惚れる権利をやろう!」
叫んで格納庫へ跳び込んでいくタリン。レレンは溜息混じりに、ガイは苦笑しながら、その後に続いた。
町の宿屋に入ろうと、ガイ一行は運搬機から降りた。
しかし近くの大きな商店から、店主らしき恰幅の良い中年男性が走り出てきた。期待に満ちた顔で彼は話しかけてくる。
「もしや貴方達がドラゴンスレイヤー一行様!?」
「ほほう! 知っているのか。随分と名が売れて来たな」
骸骨馬・シロウの馬上でタリンが得意満面、偉そうに胸をはった。
『だからって敵もいないのに俺に乗るとか、ちょっと調子のってないかお前』
不満ありありで呟くシロウ。
一方、男は大喜びでガイ一行を見渡した。
「やはりそうですか! ゾウムシの運搬機に乗り、妖精を連れ、骸骨の異形馬に乗る……他におられますまい」
「そして怪獣ジュエラドンに困らされているんだな?」
タリンが訊くと、男は首が外れそうな勢いでブンブンと縦にふる。
「ええはい、そりゃあもう!」
彼の話によると――
この町自体がジュエラドンの襲撃を受けたわけではない。
だが街道の途中で流通の定期隊商が襲われ、ほとんど全滅。なんとか逃げ延びた少数にその報告を受けはしたが、届く筈だった半月分の物品が皆無になったので、この町は物不足に悩まされているという。
この男は米問屋の店主なのだが、在庫も尽きかけ、売るぶんどころか自分達一家の食べるぶんさえもうじき無くなるそうだ。
タリンは自信満々で、ドン!と自分の胸を叩いた。
「よっしゃよっしゃ、任せろ! あのブサイクなデカブツを退治する事にかけて、俺達より経験を積んだ奴はこの世にいねぇ」
「なんと頼もしいお方々だ! ああ、この世に光はまだ消えていなかった」
揉み手しながら芝居っ気たっぷりに喜んで見せる米問屋。まぁ嘘というわけではないだろう。
「おーい。ちょっとちょっと?」
そんな二人のやりとりを見て、小声でスティーナが呼び掛ける。
タリンは「ハッハー!」と笑いながら振り返った。
「皆まで言うな。わかってるって。オレは同じ間違いを二度する男じゃねえ」
「何度でもやる男ですからね」
ぼそりと呟くスティーナ。
だがそれは聞こえなかったようで、タリンは米問屋……そしてざわざわと集まって来た町の住人達に大声で叫んだ。
「おい村の衆。悪いがタダ働きはしねえぞ。オレ達もメシを食うからよ」
「ま、まぁそれは……」
不安いっぱいに顔を見合わせる住人達。
それを見渡し、勿体もつけて、タリンはニヤリと笑ってみせる。
「安心しろ。全額後払いだ。確勝絶対帰還のオレ達に前金交渉など不要だからな!」
「は、はい! 退治していただけるならそれなりの額は町中からかき集めます」
今度は演技などではなく必死な顔で、米問屋はそう約束する。
周囲の住人達も皆一様に頷いた。
最初に寄った、壊滅した宿場町。そこでガイ達は再度襲撃してきたジュエラドンを倒した。
しかし依頼されて戦ったわけではないので、町の住人は報酬を支払わなかったのである。まぁ彼らに何か支払う余裕があったかと言えば怪しい所ではあるが。
タリンはその時の事を注意されたと思い、ここで金の約束をさせたのだ。
なおスティーナが言いたかったのは――
「私は足止めされ過ぎてないか、注意を促したかったんですけどね」
タリンをジト目で睨みながら呟くスティーナ。
ガイはここまでの道中を思い出す。実は同じような町がいくつもあり……
「結局、町2つに1つでジュエラドン退治をやってきたなあ」
「ガイ、えらいえらい」
妖精のイムがガイの頭を撫でる。
「はは、サンキュ」
苦笑しながらも礼を言うガイ。
シャンリーが「ふう」と軽い溜息をついた。
「一応、寄り道はしていないんだし……見過ごせないものね」
――怪獣の出現した辺り――
隊商が襲われたという場所は、次の町へ向かう街道の途中だ。ガイ達はそこへ向かう。
町を出て半日ほどの場所で――
操縦席のモニターを見て、スティーナが皆に告げた。
「おや? 誰かが戦っているようです」
「町の人達は他に依頼したような事は言っていなかったが……」
レレンが疑問を口にすると、シャンリーが少し考える。
「次の町からも近いから、そちらから誰か来たんでしょうね」
途端にタリンが大声をあげた。
「商売敵かあ! おい今すぐ出るぞ、そして倒すのはオレ達じゃあ!」
そうやって騒いでいる間に、目視でも現場が見える距離まで来た。
荒野を突き抜ける街道の傍らに見慣れた巨体……結晶のような鱗に包まれた二足歩行の改造竜ジュエラドンが暴れている。
それと戦っているのはケイオス・ウォリアーの一部隊。量産機ばかりではあるが、十機近い数が応戦していた。
しかし尻尾で弾き飛ばされ、鉤爪で引き裂かれ、熱線のブレスを食らって吹き飛び……徐々に損傷が溜まっていく。
量産機の部隊を見てレレンが首を傾げる。
「あの数……冒険者パーティにしては多いな?」
「ともかく、今すぐ出よう」
そう言うガイに、シャンリーも同意した。
「苦戦しているみたいだものね。助けて損は無いと思うわ」
「ハッハー! また感謝の雨が降るな! あの中に女がいたら俺に惚れる権利をやろう!」
叫んで格納庫へ跳び込んでいくタリン。レレンは溜息混じりに、ガイは苦笑しながら、その後に続いた。
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