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2章
22 ホン侯爵家 5
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ユーガンの話を聞き、シャンリーは深い溜息をついた。
「わかりました。貴方の意思は固いようね。ならば討って止めるしかないようです」
ユーガンは不敵な笑みを浮かべ、ガイを見る。
「貴女が放浪中に出会った、その男でですか。この状況でできますかな?」
そう言うや身を翻し、窓の外へ走った。
「待って! 兄上!」
ポリアンナが悲痛な叫びをあげる。
だが彼女の義兄は止まらない。庭に屈ませた自機の操縦席へ、数メートルの高さを一跳びで越えて乗り込んだ。
ハッチが閉じて機体の目が輝く。蝙蝠の頭と翼をもつ人造巨人が動き出した。
もちろんガイ達も自分らの機体へと走る。
だがそれは侯爵邸の格納庫の中、運搬機に搭載してあるのだ。
そこへと渡り廊下を走りはしたが、ユーガンの機体の方が明らかに早い。
操縦席で格納庫へ照準を合わせるユーガン。
『機体が無くなればどうしようもあるまい!』
彼の機体――Sブラスバットが超音波を放つ。ケイオス・ウォリアーの装甲でも容易く砕くその威力は、当然、格納庫を破壊するのも容易かった。
だが間一髪!
格納庫が超音波に砕かれる直前、一瞬早くゾウムシ型の運搬機が飛び出す!
運搬機はそのままブラスバットに体当たりをかました。非戦闘用の運搬用とはいえ、ケイオス・ウォリアーを数体運ぶ馬力がある。不意をつかれては、白銀級機とはいえ立っている事はできなかった。
『何っ!? 誰か残っていたのか!』
転倒する自機の中で叫ぶユーガン。
運搬機の操縦席では。
イムがレバーやボタンを必死に叩き、蹴飛ばしてなんとか動かしていた。
そんな運搬機の背中が開き、そこから飛び出す骸骨馬シロウ。
『急げ! 乗れ!』
「おお!」
喜び勇んでタリンが跳び乗り、運搬機の中へとUターン。そして骸骨武者Sバスタードスカルの背中の開口部へ駆け込み、ドッキング!
「よっしゃあ! いくぜいくぜぇ!」
出撃して剣を抜くスカルの中でタリンは声を上げた。
その眼前ではブラスバットも立ち上がり、既に抜刀している。
『懲りない奴だ、貴様は!』
ユーガンの叫びを合図に、二機の人造巨人は激しく切り結び始めた。
その隙に運搬機の中へ、己の機体へと走るガイとレレン。
操縦席からイムが飛んで来てガイの肩へしがみつく。
「ありがとうな、イム」
礼を言うガイにイムは「えへへ」と嬉しそうに笑顔を見せた。
レレンの乗るSヒートレディバグが先に出撃し、それにガイのSサバイブキマイラが続く。
イムが翅を輝かせると、花吹雪に包まれてキマイラが変形した。増加装甲を纏い現れるリバイブキマイラ。
ガイが戦闘準備をしている時、レレンはバスタードスカルとブラスバットの激突を見て叫んでいた。
「た、タリン!」
無残に胸部装甲を切り裂かれ、後ろによろめくスカル。明らかな窮地。
なのだが。
「ぐおぉ……尻じゃあるめぇしざっくり割りやがって」
『反省を知らんお前の頭も割ってもらったらどうだ』
毒づくタリンに半ば諦めているシロウ……それに対するブラスバットの肩にも、はっきりと切り裂かれた損傷があるのだ。
『ぬうう……私に一撃入れる程度の腕はあったか』
アサルトタイガーとブラッドエンド、互いの必殺剣をぶつけあった二機。
技量によるダメージの優劣はあるが、互いに相手を捉えたのである。
「そんな!? タリンがそこそこ戦えている?」
「え……マジで? 敵機に整備不良でもあったのか?」
驚愕するレレンとガイ。
正直、タリンの事だから無様に叩きのめされている事は覚悟の上だったのだ。
『いや、なんでお前らが仲間の腕を信じていないんだ?』
思わず疑問を向けるユーガン。
なんだかんだで一緒に戦っているうちにタリンの腕もレベルアップはしているのだが、味方側にその認識は無かったようだ。
よろよろとスカルが立ち上がり、一対三の睨み合いになった。
だが突如、その場を大きな振動が襲う。巨大な咆哮が轟く!
侯爵邸の向こう、街を囲む防壁が砕かれた。
改造古竜ジュエラドンがそこに現れる。
崩れた壁周辺の市街地がパニックに陥った。
『さては影針か? 余計な事を……ポリアンナ、父上と母上を連れて避難しろ!』
ユーガンは通信機ごしに外へ叫ぶ。
ほぼ同時に、運搬機からガイ達へも通信が。
「レレン、タリン! あの怪獣を食い止めて」
シャンリーであった。
「わかった!」
「しゃあねぇな!」
レレンとタリンが敵増援へのジュエラドンへ向かった。
ブラスバットと睨み合うのはガイ機だけになった。
ユーガンからの通信がガイへとぶ。
『まだ首都への帰還はできていないそうだな。今のケイト帝国にジュエラドンの本体へ対抗する力はあるまい……つまり、ここで貴様を仕留めれば私の邪魔をできる者はいない!』
「いろいろ言いたい事はあるけど、今のあんたには無駄だろうからな。下策でも力づくで止めるぜ」
応えるガイ。
ブラスバットの翼が広がり、上空へ飛んだ。
リバイブキマイラも翼を広げ、空へ敵を追う。
夜空で対峙する二機を月光が照らしていた。
互いに剣を構え、少しの間睨み合い――互いに相手へと飛んだ!
「わかりました。貴方の意思は固いようね。ならば討って止めるしかないようです」
ユーガンは不敵な笑みを浮かべ、ガイを見る。
「貴女が放浪中に出会った、その男でですか。この状況でできますかな?」
そう言うや身を翻し、窓の外へ走った。
「待って! 兄上!」
ポリアンナが悲痛な叫びをあげる。
だが彼女の義兄は止まらない。庭に屈ませた自機の操縦席へ、数メートルの高さを一跳びで越えて乗り込んだ。
ハッチが閉じて機体の目が輝く。蝙蝠の頭と翼をもつ人造巨人が動き出した。
もちろんガイ達も自分らの機体へと走る。
だがそれは侯爵邸の格納庫の中、運搬機に搭載してあるのだ。
そこへと渡り廊下を走りはしたが、ユーガンの機体の方が明らかに早い。
操縦席で格納庫へ照準を合わせるユーガン。
『機体が無くなればどうしようもあるまい!』
彼の機体――Sブラスバットが超音波を放つ。ケイオス・ウォリアーの装甲でも容易く砕くその威力は、当然、格納庫を破壊するのも容易かった。
だが間一髪!
格納庫が超音波に砕かれる直前、一瞬早くゾウムシ型の運搬機が飛び出す!
運搬機はそのままブラスバットに体当たりをかました。非戦闘用の運搬用とはいえ、ケイオス・ウォリアーを数体運ぶ馬力がある。不意をつかれては、白銀級機とはいえ立っている事はできなかった。
『何っ!? 誰か残っていたのか!』
転倒する自機の中で叫ぶユーガン。
運搬機の操縦席では。
イムがレバーやボタンを必死に叩き、蹴飛ばしてなんとか動かしていた。
そんな運搬機の背中が開き、そこから飛び出す骸骨馬シロウ。
『急げ! 乗れ!』
「おお!」
喜び勇んでタリンが跳び乗り、運搬機の中へとUターン。そして骸骨武者Sバスタードスカルの背中の開口部へ駆け込み、ドッキング!
「よっしゃあ! いくぜいくぜぇ!」
出撃して剣を抜くスカルの中でタリンは声を上げた。
その眼前ではブラスバットも立ち上がり、既に抜刀している。
『懲りない奴だ、貴様は!』
ユーガンの叫びを合図に、二機の人造巨人は激しく切り結び始めた。
その隙に運搬機の中へ、己の機体へと走るガイとレレン。
操縦席からイムが飛んで来てガイの肩へしがみつく。
「ありがとうな、イム」
礼を言うガイにイムは「えへへ」と嬉しそうに笑顔を見せた。
レレンの乗るSヒートレディバグが先に出撃し、それにガイのSサバイブキマイラが続く。
イムが翅を輝かせると、花吹雪に包まれてキマイラが変形した。増加装甲を纏い現れるリバイブキマイラ。
ガイが戦闘準備をしている時、レレンはバスタードスカルとブラスバットの激突を見て叫んでいた。
「た、タリン!」
無残に胸部装甲を切り裂かれ、後ろによろめくスカル。明らかな窮地。
なのだが。
「ぐおぉ……尻じゃあるめぇしざっくり割りやがって」
『反省を知らんお前の頭も割ってもらったらどうだ』
毒づくタリンに半ば諦めているシロウ……それに対するブラスバットの肩にも、はっきりと切り裂かれた損傷があるのだ。
『ぬうう……私に一撃入れる程度の腕はあったか』
アサルトタイガーとブラッドエンド、互いの必殺剣をぶつけあった二機。
技量によるダメージの優劣はあるが、互いに相手を捉えたのである。
「そんな!? タリンがそこそこ戦えている?」
「え……マジで? 敵機に整備不良でもあったのか?」
驚愕するレレンとガイ。
正直、タリンの事だから無様に叩きのめされている事は覚悟の上だったのだ。
『いや、なんでお前らが仲間の腕を信じていないんだ?』
思わず疑問を向けるユーガン。
なんだかんだで一緒に戦っているうちにタリンの腕もレベルアップはしているのだが、味方側にその認識は無かったようだ。
よろよろとスカルが立ち上がり、一対三の睨み合いになった。
だが突如、その場を大きな振動が襲う。巨大な咆哮が轟く!
侯爵邸の向こう、街を囲む防壁が砕かれた。
改造古竜ジュエラドンがそこに現れる。
崩れた壁周辺の市街地がパニックに陥った。
『さては影針か? 余計な事を……ポリアンナ、父上と母上を連れて避難しろ!』
ユーガンは通信機ごしに外へ叫ぶ。
ほぼ同時に、運搬機からガイ達へも通信が。
「レレン、タリン! あの怪獣を食い止めて」
シャンリーであった。
「わかった!」
「しゃあねぇな!」
レレンとタリンが敵増援へのジュエラドンへ向かった。
ブラスバットと睨み合うのはガイ機だけになった。
ユーガンからの通信がガイへとぶ。
『まだ首都への帰還はできていないそうだな。今のケイト帝国にジュエラドンの本体へ対抗する力はあるまい……つまり、ここで貴様を仕留めれば私の邪魔をできる者はいない!』
「いろいろ言いたい事はあるけど、今のあんたには無駄だろうからな。下策でも力づくで止めるぜ」
応えるガイ。
ブラスバットの翼が広がり、上空へ飛んだ。
リバイブキマイラも翼を広げ、空へ敵を追う。
夜空で対峙する二機を月光が照らしていた。
互いに剣を構え、少しの間睨み合い――互いに相手へと飛んだ!
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