フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

文字の大きさ
上 下
110 / 147
2章

21 魔の領域 7

しおりを挟む
 ガイは機体の背中越しに指示を出した。
「一匹は俺が受け持つ。タリンとレレンは協力してもう一匹を頼む」
 そして二匹の怪獣の片方へ、剣を手にガイ機・リバイブキマイラが向かう。

 タリンは喜び勇んで自機を立ち上がらせた。
「今こそ雪辱の時だ! この前のオレと違う事を見せてやるぜ!」
『まぁやるだけやってみろ』
 ずさんに発破をかける髑髏のシロウ。
 骸骨武者機Sバスタードスカルはタリンの意を受けて剣を振り上げた。そして敵へと全力で走る!

「おい、せめて足並みを揃えろ!」
 大慌てで止めようとするレレン。
 テントウムシの半人半虫巨人・Sヒートレディバグで慌ててタリン機の後を追う。
 その眼前でスカルは――


 ――怪獣の太い腕に殴り倒された。
「ウギャアー!」
「お前なあ!?」
 悲鳴をあげるタリンに思わず叫ぶレレン。
 一応、スカルの剣も敵を打ちはした。ただ相手はタフだから構わず反撃してきただけだ。

「ブレイズボルトー!」
 仕方なくレレンは攻撃に参加した。
 転がるスカルの上を熱線の拳が飛び、怪獣を打つ!

 ところが……それでも敵はお構いなく破壊光線を吐いて反撃してきた。モニターの表示を信じるならダメージは与えている筈なのだが。
 光線がレディバグを撃ち、衝撃で尻餅をつかせる。


「くそぅ、パワーでは圧し負けるか……」
 レレンが歯軋りしていると、タリンは操縦席のボタンを叩いた。
「ええい、2対1で駄目なら3対1だ!」
 スカルが剣を地面に刺すと、土中からカエル怪獣の骸骨スケルトンが立ち上がる。

 ちょうどそれに合わせるかのように、怪獣の全身が輝いた。
 全身の結晶のような鱗から、無数の熱線が放たれる!

 バスタードスカル、不死アンデッド怪獣、レディバグの三機は何発もの熱線を食らって吹っ飛んだ。
「ウギャアー!」
 叫ぶタリン。爆発する不死アンデッド怪獣。
『むむ、召喚した途端にやられたぞ』
 唸るシロウ。
「何のために召喚したんだー!」
 怒鳴るレレン。
 三体は地面に転がり、不死怪獣はそのまま砕けて消えた。


 ゾウムシ型の運搬機からスティーナが通信を入れた。
「あのですね。もう少し連携をとってください。特にタリン、あんた冒険者時代はパーティ組んで戦ってた筈でしょう」
 しかしタリンは歯がみしつつ言い返す。
「そうは言うけどよ! タンクもヒーラーもいねーじゃねーか!」
「その新型機が防御壁です。使い方を送りますからよく読みなさい」
 スティーナが言うと、スカルとレディバグのモニターに文章と図解が表示された。

「ほうほう?」
 タリンは呟きながらそれに目を通す――が、当然敵が黙っているわけもない。怪獣ジュエラドンは破壊光線を遠慮なく吐いてきた。
 慌ててレディバグが前傾姿勢で食らいながら受け止め、なんとか遮断する。
 その後ろでうずくまったまま動かないバスタードスカル。

「おい早く読め! というか時間かかるほどかこれ?」
 怒鳴るレレン。
 もっともな言い分ではあるが、タリンは不満もあらわに言い返した。
「オレは3行以上の文を普段読まねーんだよ。でもまぁ大体わかった」
 そしてスカルが立ち上がった!

 送られた解説どおり、レディバグを後ろから掴んでくるりと振り向かせる。
 レディバグは敵の攻撃を背中で受ける事になった。
 文字通りの盾であるが――実はレディバグ、背中の装甲が一番厚いのだ。

「さっそく行くぜぇ!」
 タリンが叫ぶとスカルはレディバグを抱え上げた。
 そしてそのまま敵へと前進!
 背中で敵の攻撃を浴び続けるレディバグの中で、レレンは溜息をついていた。
「防御担当といえば聞こえはいいがなぁ……」
 そして機能発揮のために、嫌々ながらもスイッチをオン!

 レディバグが地を蹴って体を浮かせた。
 手足の先が引っ込み、そこからジェット噴射のようなエネルギーが噴き出す。
 その推進力でレディバグは高速でした。敵の攻撃を背中で遮断しながら!

 味方を守りながら敵との距離を詰める機能が、このSレディバグ最大の特殊能力なのだ。

 敵怪獣の吐く破壊光線もなんのその、あっと言う間に敵の至近距離へ。
 レディバグの陰でタリンが高揚して叫んだ。
「ハッハー! 途切れる事なく新必殺ゥ! シールドバッシャー!」
 レディバグを押し込み、そのまま敵へぶつける!
「おいィ!?」
 攻撃に移ろうと着地しかけていたレディバグは、レレン怒りの叫びとともに敵怪獣に激突した。
 二体は絡まるように地面へ転がる。

「本当にこの使い方であってるのか!?」
「攻撃に移行する時の事は現場にお任せしています」
 レレンの憤怒にスティーナが淡々と答えた。

 さらにレレンは抗議しようとしたのだが、敵怪獣はそんなやりとりは知らないのでガジガジと噛み付いてくる。まぁ揉み合いになっているのだから仕方がない。
「おいこらちょっと待て、ええい、どいつもこいつも! この畜生め! ブレイズプラズマーー!!」
 レレンは怒りを敵へ叩きつけた。
 八つ当たり気味の最大奥義が至近距離で炸裂! 幾条もの熱線がレディバグと敵怪獣の間で爆発し、結果的に二体は転がりながら離れた。


 それを見てタリンは叫ぶ。
「フィニッシュタイムだぜ! ツインアサルトタイガー!」
 バスタードスカルが剣を地面に刺すと、土中から砕けた部分をでかい絆創膏ばんそうこうで雑にふさいだカエル怪獣の骸骨スケルトンが立ち上がる。
 不死アンデッド怪獣は跳躍! 敵の背後に着地すると、後ろから羽交い絞めにした。
 スカルが走り、剣を大上段に構えてポーズをとると、もがく敵へ跳びかかってちょっと格好つけながら剣を振り下ろした。
 一刀両断! カエル骸骨スケルトンごと!

 敵怪獣ジュエラドンには再生能力もあったのだが……大技を立て続けに受けては耐えようが無かった。
 爆発!
 結晶のような鱗が宙に舞い散った。

「ふう……パーティで戦っていた時の感覚が戻ってきたぜ」
「お前らはこんな戦い方をしていたのか……?」
 得意げなタリンにレレンが疑問を向けていた。

 その一方、髑髏のシロウはもう一匹の敵怪獣へと目を向けた。
『さてガイの方は……』

 粉々になった敵怪獣の残骸を足元に、ガイ機・リバイブキマイラがこちらをうかがっていた。

『普通に勝っていたか……』
 先に終えて待っていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習し

西園寺わかば🌱
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...