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2章
20 真の名 4
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――村の工場――
ボウガスの領に行く事が決まった日の午後。
改造中の機体の最終調整が急ピッチで進められた。
新たな機体は白銀級機。ケイオス・ウォリアーの分類7タイプのうち、妖虫型に属する機体である。
これは撃破された機体を改造した物で――
「なるほど。影針の乗っていた機体がベースか」
工場の敷地内にて、新型機を遠目に眺めてガイが感心していた。
しかし機体から通信機ごしに、操縦者……レレンの不満げな声が届く。
「それはわかるが、なぜ蛾がテントウムシになっているんだ?」
その言葉通り、機体の形状は全く変わってしまっているのだ。
全体的にずんぐりと丸みを帯びたフォルムである。
どこもかしこも分厚い装甲で覆われており、さながら板金を着こんでいるとでも言うべきか。そのせいで手足が短く見えてしまう。
赤みがかったオレンジ色のカラーリングで、全身各所に黒い円が描かれていた。
どっしりとした外観ではあるが、奇妙な事に武器らしき物は見当たらなかった。
記録や計算に使う結晶板を手に、スティーナが当然のように言う。
「資材と役割の問題です」
「役割って……私が乗るならキマイラを元通りにして乗せてくれればいいのに」
実にそうして欲しそうにレレンが漏らすが、スティーナは即「却下です」と告げた。
「師匠用の機能を外して移設するとまた作り直しより気持ちマシ程度の費用が要ります。高熱発生能力はつけておいたんだからそれに乗ってください」
断られたレレン、不承不承モニターで機体のステータスを確認する。
>
Sヒートレディバグ
ファイティングアビリティ:130
ウェポンズアビリティ:130
スピードアビリティ:110
パワーアビリティ:130
アーマードアビリティ:160
>
機体を歩かせながら、レレンは眉を顰めた。
「完全に装甲重視だな……私は闘争に最も大切なのは攻撃の姿勢だと思うんだが」
「バスタードスカルがデコイとするなら、そのヒートレディバグは盾です。散るまで師匠を守ってください」
「ま、まぁ、ガイのためなら……」
スティーナの言い分を不承不承了解するレレン。
自分がガイに敗れて軍門に降り、彼の下で行動を許されている……そんな今の自分の立場は理解しているつもりだった。
それに高熱発生能力があるなら、自分の技を使わせて戦う事ができるだろう。決して守り一辺倒しかできないわけではない筈だ。
試しに高熱発生能力を使うと、燐光を散らしながら炎が両手からあがる。
これなら自分自身の必殺技をケイオス・ウォリアーで使う事が問題なくできそうだ。
その具合を確認していると、スティーナの説明が入った。
「高熱発生能力は付けましたが、武器は一つも装備していません。自分の技で戦ってください」
「なんで何もつけないの!?」
「いちいちうるさいですね……どうせキマイラの時もブレイズなんとかしか使ってなかったじゃないですか」
仰天するレレンへ、高熱発生能力が問題なく働いている事を確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
跳躍やショートダッシュをレレンが行っている間に、さらにスティーナの説明が入る。
「高熱発生能力の応用で、火炎噴射を利用して後ろ向きにホバー移動できます。背中が一番分厚いので上手く利用するのです」
「背中!? 脱出装置も背中から出すんだけど!?」
「いちいちうるさいですね……その機体の脱出装置は上に撃ち出す事もできますから大丈夫です」
仰天するレレンへ、各種移動を確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
しかし納得し難いレレン。
「上だって? それはやっていい事なのか!?」
ケイオス・ウォリアーの脱出装置は、操縦席ごと外へ撃ち出し、短時間だけ浮遊系の魔法を働かせて地面に軟着陸する……という物だ。
余計な高度を稼いでいいシロモノではない。魔法が切れて滑落死してしまう。
だがスティーナは眉一つ動かさず告げた。
「貴女の耐久力は人間以上なのでなんとかなります」
「なんでそう断言できるんだ!? なんか大雑把に決めつけてないか?」
「いちいちうるさいですね……この村の道具屋には浮遊系の魔法が発動するアイテムも売っています。心配なら買ってください」
仰天するレレンへ、異常が起きていないか確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
だがまだレレンは納得できない。
「店で緊急避難用のアイテムを買えって……まさか自腹で、か?」
「いちいちうるさいですね……自分の命を小銭で買えるなら安いものでしょう」
不満なレレンへ面倒臭そうにスティーナが言った。
だがまだレレンは……何か言おうとはしたのだが、通信に農夫のタゴサックが割り込んできた。
「おいぃ!? 重装甲砲撃機のBカノンピルバグが分解されて装甲がごっそり消えとるぞ!」
その通信は格納庫から。彼が一番良く使う機体が消滅していたのである。
「ま、まさかこの機体に……」
「あっちはあっちで、後でなんとかしておきます」
不信を露わにするレレンへ面倒臭そうにスティーナが言った。
動作試験の結果、新型機に欠陥は見当たらなかった。
いよいよ旅立つ時が来た……という事だ。
ボウガスの領に行く事が決まった日の午後。
改造中の機体の最終調整が急ピッチで進められた。
新たな機体は白銀級機。ケイオス・ウォリアーの分類7タイプのうち、妖虫型に属する機体である。
これは撃破された機体を改造した物で――
「なるほど。影針の乗っていた機体がベースか」
工場の敷地内にて、新型機を遠目に眺めてガイが感心していた。
しかし機体から通信機ごしに、操縦者……レレンの不満げな声が届く。
「それはわかるが、なぜ蛾がテントウムシになっているんだ?」
その言葉通り、機体の形状は全く変わってしまっているのだ。
全体的にずんぐりと丸みを帯びたフォルムである。
どこもかしこも分厚い装甲で覆われており、さながら板金を着こんでいるとでも言うべきか。そのせいで手足が短く見えてしまう。
赤みがかったオレンジ色のカラーリングで、全身各所に黒い円が描かれていた。
どっしりとした外観ではあるが、奇妙な事に武器らしき物は見当たらなかった。
記録や計算に使う結晶板を手に、スティーナが当然のように言う。
「資材と役割の問題です」
「役割って……私が乗るならキマイラを元通りにして乗せてくれればいいのに」
実にそうして欲しそうにレレンが漏らすが、スティーナは即「却下です」と告げた。
「師匠用の機能を外して移設するとまた作り直しより気持ちマシ程度の費用が要ります。高熱発生能力はつけておいたんだからそれに乗ってください」
断られたレレン、不承不承モニターで機体のステータスを確認する。
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Sヒートレディバグ
ファイティングアビリティ:130
ウェポンズアビリティ:130
スピードアビリティ:110
パワーアビリティ:130
アーマードアビリティ:160
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機体を歩かせながら、レレンは眉を顰めた。
「完全に装甲重視だな……私は闘争に最も大切なのは攻撃の姿勢だと思うんだが」
「バスタードスカルがデコイとするなら、そのヒートレディバグは盾です。散るまで師匠を守ってください」
「ま、まぁ、ガイのためなら……」
スティーナの言い分を不承不承了解するレレン。
自分がガイに敗れて軍門に降り、彼の下で行動を許されている……そんな今の自分の立場は理解しているつもりだった。
それに高熱発生能力があるなら、自分の技を使わせて戦う事ができるだろう。決して守り一辺倒しかできないわけではない筈だ。
試しに高熱発生能力を使うと、燐光を散らしながら炎が両手からあがる。
これなら自分自身の必殺技をケイオス・ウォリアーで使う事が問題なくできそうだ。
その具合を確認していると、スティーナの説明が入った。
「高熱発生能力は付けましたが、武器は一つも装備していません。自分の技で戦ってください」
「なんで何もつけないの!?」
「いちいちうるさいですね……どうせキマイラの時もブレイズなんとかしか使ってなかったじゃないですか」
仰天するレレンへ、高熱発生能力が問題なく働いている事を確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
跳躍やショートダッシュをレレンが行っている間に、さらにスティーナの説明が入る。
「高熱発生能力の応用で、火炎噴射を利用して後ろ向きにホバー移動できます。背中が一番分厚いので上手く利用するのです」
「背中!? 脱出装置も背中から出すんだけど!?」
「いちいちうるさいですね……その機体の脱出装置は上に撃ち出す事もできますから大丈夫です」
仰天するレレンへ、各種移動を確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
しかし納得し難いレレン。
「上だって? それはやっていい事なのか!?」
ケイオス・ウォリアーの脱出装置は、操縦席ごと外へ撃ち出し、短時間だけ浮遊系の魔法を働かせて地面に軟着陸する……という物だ。
余計な高度を稼いでいいシロモノではない。魔法が切れて滑落死してしまう。
だがスティーナは眉一つ動かさず告げた。
「貴女の耐久力は人間以上なのでなんとかなります」
「なんでそう断言できるんだ!? なんか大雑把に決めつけてないか?」
「いちいちうるさいですね……この村の道具屋には浮遊系の魔法が発動するアイテムも売っています。心配なら買ってください」
仰天するレレンへ、異常が起きていないか確認しながら面倒臭そうにスティーナが言った。
だがまだレレンは納得できない。
「店で緊急避難用のアイテムを買えって……まさか自腹で、か?」
「いちいちうるさいですね……自分の命を小銭で買えるなら安いものでしょう」
不満なレレンへ面倒臭そうにスティーナが言った。
だがまだレレンは……何か言おうとはしたのだが、通信に農夫のタゴサックが割り込んできた。
「おいぃ!? 重装甲砲撃機のBカノンピルバグが分解されて装甲がごっそり消えとるぞ!」
その通信は格納庫から。彼が一番良く使う機体が消滅していたのである。
「ま、まさかこの機体に……」
「あっちはあっちで、後でなんとかしておきます」
不信を露わにするレレンへ面倒臭そうにスティーナが言った。
動作試験の結果、新型機に欠陥は見当たらなかった。
いよいよ旅立つ時が来た……という事だ。
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