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2章
19 新たな守護者 4
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爆炎が上がり、二つの人影が反発するかのように吹き飛ぶ。双方が別々の家に叩きつけられ、壁を突き破って中に転がり込んだ。
その片方――レレンの方へ、女魔術師のララが女神官のリリを強引に引っ張っていく。
「治療を急いで!」
ララの切羽詰まった声に、リリは目を白黒させつつ頷いた。
そんな二人の前に、レレンが自力で転がり出てくる。
己の技で満身創痍だが、火傷を抑えつつも二人を安心させようと微笑を作った。
「案ずるな。私は炎属性のダメージを半減できる。共倒れではない……勝算あっての攻撃技だ」
ダメージ比較なら己が圧倒的に有利。肉を斬りつつ骨を断つ新技――ブレイズエクスプロージョン。
一方、それを食らったマスターボウガスは。
己が叩き込まれた家の玄関から出てきた。二本の足で立ち上がって。
しかし赤い鎧から煙が上がり、端整な顔には火傷も負っていた。多少ふらついてもいる。全くのノーダメージでは無いようだった。
……が。
ぐい、と顔を拭うと傷が塞がり、消えた。ふらついていた体も真っすぐに背筋を伸ばす。
まさに見る間に負傷が癒えたのだ。
「ゲーッ! 効いてない!」
慌てふためくリリ。
レレンは半ば茫然と呻いた。
「ば、バカな……」
「思った以上だった、と認めてはおこう」
そう言いながらもボウガスの目には優しさの欠片も無かった。
黄金色に輝く剣を手に、まっすぐレレンへと迫りくる。
だがそこへ割り込んだ男が一人。
「よーし、ならオレが相手だ!」
威勢よく叫ぶタリンだった。
「ちょっと? どう考えてもやられるでしょ」
呆れるスティーナ。
それにタリンが叫ぶ。
「うっせー! やられるまではやられてねーよ!」
「よく言ったわ。さすがリーダー。死んでいいからそいつを食い止めて」
ララはそう言うと呪文を唱えた。タリンの剣に凍気がまとわりつく。
「おう、支援魔法か。よーし、俺の新必殺技が炸裂するぜ!」
息まくタリン。
「後悔するぞ貴様……」
マスターボウガスの声は少々苛立っていた。場違いな馬鹿が割り込んでくる鬱陶しさに。
だがタリンはせせら笑う。
「コーカイ? なんだそりゃ食った事ねーな」
だがその時。
屋根の上の影針が目を見開いた。
「馬鹿な!?」
その視線の先にいるのは。
聖剣を手にしたガイだった。
「貴様、ガイ!? 生きている筈が無い!」
「蘇生したのさ」
狼狽える影針にガイが平然と答える。
影針が歯ぎしりする音が微かに聞こえた。
「馬鹿な……二重の毒素で痛んだ屍からの復活など! 今まであれで蘇れた者などいなかった」
「何事にも最初の一人はいるもんだ」
落ち着きはらうガイの、それが返答だった。
「奴を仕留めたと聞いたし、報酬も支払ったが。ああして生きている場合はどうする? まさか知らぬ存ぜぬか?」
ガイを睨みながらも影針へ声をかけるボウガス。
影針は……何も答えない。
だがその腕が微かに動いた。
直後、ガイが聖剣をふるう。
その刀身が何かを砕いた。影針が投擲し、闇の中を飛んできた球を。
しかしその球は破裂するととともにドス黒い粉を撒き散らす!
毒粉を入れた球だった、と判明した時。ガイは既に粉に巻き込まれていた。
しかし……ガイは特に様子変わる事なく前進し、粉の舞う中から出てしまう。
影針の目が驚きで見開かれた。
(直撃でないにせよ、あの状況でなら吸い込んで多少の被害がある筈。なぜ効かぬ?)
ガイが道端の植え込みにスッと手を伸ばす。
指が触れると、枝先に実が現れた。花が咲いて……ではない。実が枝から生えたのだ。
しかもその実は、植え込みの木とは全く別の実――寒冷地帯の希少な植物から採れる物で、水領域の珠紋石の素材になる物だった。
それを二つもぎとるガイ。手の中で実が珠紋石に変化する。
本来なら時間をかけて工房で生成する筈の物が、掌の中で……だ。
ガイは二つの結晶を木刀に嵌め込んだ。
『ディープ・フリーズ。ディープ・フリーズ』
木刀が呪文を読み込む。
そしてガイは聖剣の切っ先を影針へ向けた。
凍気の渦が二つ発生した!
それは影針を巻き込み、全身を凍てつかせる。
影針が絶叫をあげ……凍気の渦が消えるや崩れ落ちて膝をついた。そのまま立つこともままならずに呻く。
「な、何が一体!? なぜ素材がその場に発生した? なぜその場で生成できる? 二つの魔術を離れた所に撃ち込むだと……? 今までそんな使い方をした事は無いはず」
その疑問に、ガイは。
「より習熟したという事かな」
淡々と答えた。
ガシャリ、と鎧が音を立てる。マスターボウガスが進み出たのだ……ガイの方へ。
「私がなんとかするしかないようだな」
黄金色の剣を構え、間合いを測りながらガイへ近づいた。
ガイは再び近くの木に手を伸ばす。
触れた枝の先に、先ほどは別の、木本来の物とも別の実が生えた。
それをもぎ取り、握る。
手の中でそれは瞬く間に変化し、さっきとは別の珠紋石となる。
ボウガスが剣を振るった!
ガイは飛び退きながら生成した珠紋石を聖剣にセット。
眩ゆい光がボウガスへ放たれた。
ガイは剣を避けきり、間合いを離して着地する。
ボウガスは……鎧のあちこちから煙を上げて呻いていた。
「気づいたか、貴様……」
その苦々しい声に頷くガイ。
「色々と考えて思いついた、可能性の一つだけどな」
その片方――レレンの方へ、女魔術師のララが女神官のリリを強引に引っ張っていく。
「治療を急いで!」
ララの切羽詰まった声に、リリは目を白黒させつつ頷いた。
そんな二人の前に、レレンが自力で転がり出てくる。
己の技で満身創痍だが、火傷を抑えつつも二人を安心させようと微笑を作った。
「案ずるな。私は炎属性のダメージを半減できる。共倒れではない……勝算あっての攻撃技だ」
ダメージ比較なら己が圧倒的に有利。肉を斬りつつ骨を断つ新技――ブレイズエクスプロージョン。
一方、それを食らったマスターボウガスは。
己が叩き込まれた家の玄関から出てきた。二本の足で立ち上がって。
しかし赤い鎧から煙が上がり、端整な顔には火傷も負っていた。多少ふらついてもいる。全くのノーダメージでは無いようだった。
……が。
ぐい、と顔を拭うと傷が塞がり、消えた。ふらついていた体も真っすぐに背筋を伸ばす。
まさに見る間に負傷が癒えたのだ。
「ゲーッ! 効いてない!」
慌てふためくリリ。
レレンは半ば茫然と呻いた。
「ば、バカな……」
「思った以上だった、と認めてはおこう」
そう言いながらもボウガスの目には優しさの欠片も無かった。
黄金色に輝く剣を手に、まっすぐレレンへと迫りくる。
だがそこへ割り込んだ男が一人。
「よーし、ならオレが相手だ!」
威勢よく叫ぶタリンだった。
「ちょっと? どう考えてもやられるでしょ」
呆れるスティーナ。
それにタリンが叫ぶ。
「うっせー! やられるまではやられてねーよ!」
「よく言ったわ。さすがリーダー。死んでいいからそいつを食い止めて」
ララはそう言うと呪文を唱えた。タリンの剣に凍気がまとわりつく。
「おう、支援魔法か。よーし、俺の新必殺技が炸裂するぜ!」
息まくタリン。
「後悔するぞ貴様……」
マスターボウガスの声は少々苛立っていた。場違いな馬鹿が割り込んでくる鬱陶しさに。
だがタリンはせせら笑う。
「コーカイ? なんだそりゃ食った事ねーな」
だがその時。
屋根の上の影針が目を見開いた。
「馬鹿な!?」
その視線の先にいるのは。
聖剣を手にしたガイだった。
「貴様、ガイ!? 生きている筈が無い!」
「蘇生したのさ」
狼狽える影針にガイが平然と答える。
影針が歯ぎしりする音が微かに聞こえた。
「馬鹿な……二重の毒素で痛んだ屍からの復活など! 今まであれで蘇れた者などいなかった」
「何事にも最初の一人はいるもんだ」
落ち着きはらうガイの、それが返答だった。
「奴を仕留めたと聞いたし、報酬も支払ったが。ああして生きている場合はどうする? まさか知らぬ存ぜぬか?」
ガイを睨みながらも影針へ声をかけるボウガス。
影針は……何も答えない。
だがその腕が微かに動いた。
直後、ガイが聖剣をふるう。
その刀身が何かを砕いた。影針が投擲し、闇の中を飛んできた球を。
しかしその球は破裂するととともにドス黒い粉を撒き散らす!
毒粉を入れた球だった、と判明した時。ガイは既に粉に巻き込まれていた。
しかし……ガイは特に様子変わる事なく前進し、粉の舞う中から出てしまう。
影針の目が驚きで見開かれた。
(直撃でないにせよ、あの状況でなら吸い込んで多少の被害がある筈。なぜ効かぬ?)
ガイが道端の植え込みにスッと手を伸ばす。
指が触れると、枝先に実が現れた。花が咲いて……ではない。実が枝から生えたのだ。
しかもその実は、植え込みの木とは全く別の実――寒冷地帯の希少な植物から採れる物で、水領域の珠紋石の素材になる物だった。
それを二つもぎとるガイ。手の中で実が珠紋石に変化する。
本来なら時間をかけて工房で生成する筈の物が、掌の中で……だ。
ガイは二つの結晶を木刀に嵌め込んだ。
『ディープ・フリーズ。ディープ・フリーズ』
木刀が呪文を読み込む。
そしてガイは聖剣の切っ先を影針へ向けた。
凍気の渦が二つ発生した!
それは影針を巻き込み、全身を凍てつかせる。
影針が絶叫をあげ……凍気の渦が消えるや崩れ落ちて膝をついた。そのまま立つこともままならずに呻く。
「な、何が一体!? なぜ素材がその場に発生した? なぜその場で生成できる? 二つの魔術を離れた所に撃ち込むだと……? 今までそんな使い方をした事は無いはず」
その疑問に、ガイは。
「より習熟したという事かな」
淡々と答えた。
ガシャリ、と鎧が音を立てる。マスターボウガスが進み出たのだ……ガイの方へ。
「私がなんとかするしかないようだな」
黄金色の剣を構え、間合いを測りながらガイへ近づいた。
ガイは再び近くの木に手を伸ばす。
触れた枝の先に、先ほどは別の、木本来の物とも別の実が生えた。
それをもぎ取り、握る。
手の中でそれは瞬く間に変化し、さっきとは別の珠紋石となる。
ボウガスが剣を振るった!
ガイは飛び退きながら生成した珠紋石を聖剣にセット。
眩ゆい光がボウガスへ放たれた。
ガイは剣を避けきり、間合いを離して着地する。
ボウガスは……鎧のあちこちから煙を上げて呻いていた。
「気づいたか、貴様……」
その苦々しい声に頷くガイ。
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