フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

18 死亡‥‥! 3

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 ガイはゾウムシ型運搬機の背中に駆け込み、中で横たわる機体に乗り込む。モニターに火を入れると同時に、ゾウムシの背中が開いた。
 そこから立ち上がるガイ機。それに花吹雪が吹き付け、装甲が増設されてパンドラキマイラへと変形した。胸の獅子、両肩の蛇と山羊、そして兜を被った人の頭の、八つの目が輝く。
 その時には、敵……古代竜を改造した怪獣ジュエラドンは目前に迫っていた。

(俺一人でやれるか? だが敵はあくまで兵隊……これより強力な本体を倒す必要があるんだ。負けていたら先は無い!)
 ガイは操縦席に差し込んだ聖剣に珠紋石じゅもんせきをセットする。
 そんなパンドラキマイラへ怪獣が口から破壊光線を吐いた。

 セットしたのは炎領域の結晶。聖剣が呪文を読み込む。
『スーパーノヴァ。』

【スーパーノヴァ】炎領域6レベルの呪文。術者を中心に全方位へ数千発の焦熱光線を放ち、範囲内の全てを焼き貫く。

 以前、魔王軍親衛隊時代のマスターキメラを倒した極めて強力な攻撃呪文。ガイは今の手持ちで最強の札を開幕直後にきった。
 機体胸部の獅子が口を開き、そこから無数の熱線が怪獣へとシャワーのように放たれる!
 怪獣の吐いた破壊光線と、それは正面からぶつかった。

 熱線は確かに怪獣の全身へ命中し敵を穿った。
 だが怪獣の破壊光線もまた、熱線の束の中を突き破ってガイ機にブチ当たった!
 装甲が砕け、煙を上げながらキマイラは吹っ飛び、山の斜面へ叩きつけられる。たまらずイムが「ひゃあぁっ!」と悲鳴をあげた。
 激震する操縦席で、ガイはモニターに映ったダメージを読み取る。

(この威力! 以前食らった、全身から撃つ光線の雨より遥かに強力だ! 収束させているぶん、口から吐く方が威力が上がるってわけか)
 一方、怪獣へのダメージや敵のコンディションもまた表示されるのだが……
(期待したほど効いてない!? 熱だからか、光線だからか?)


 だからといって倒れているわけにはいかない。この場で怪獣と戦えるのはガイのキマイラだけなのだ。外の様子を見れば、レレンが一人で魔物兵の群れと戦っている。
 ガイは機体を立ちあがらせた。

 だがその隙にも怪獣は地響きを会ってながら接近していた。
 キマイラを敵の剛腕が殴打する。
 かと思えば太い尻尾も!
 表示された攻撃力は、量産機なら無傷でも粉々になりかねない威力だ。

 やはり不利であった。聖剣には【自動回復ヒーリング能力】があり、その機能もまた増幅されてパンドラキマイラを支えているのだが、もしそれがなければ撃破されていかもしれない。

 ガイは急いで次の珠紋石じゅもんせきをセットする。
 呪文が読み込まれ、キマイラは怪獣の首を掴んだ。

 無論、怪獣はキマイラをねじ伏せようと振りほどきにかかった。
 だがしかし。
 キマイラの全身が不気味でさえある紫の輝きを帯びると、装甲に負った破損が高速で修復されてゆくではないか。
 逆に怪獣の全身、結晶のような鱗が次々とひび割れた!

【ライフスティール】魔領域第6レベルの攻撃呪文。敵の生命力を吸収し、己への活力に変換する。

 ガイが選んだ呪文は魔領域の高位呪文――以前、マスターボウガスに何故か逆流させられ敗れた呪文である。だが今度こそ、ガイの狙い通りに形勢をひっくり返してくれた。


 苦悶の声をあげるジュエラドン。
 ガイは聖剣に珠紋石じゅもんせきをセットする。だが先刻までに比べ、魔法のレベルは落ちていた。
 強力な珠紋石じゅもんせきは素材も希少だし、製作に時間もかかる。ガイは村の地主になり金まわりは良くなったが、それでも高レベルの珠紋石じゅもんせきをいくらでも揃えられるわけではないのだ。

 聖剣がの呪文を読み込む。
『ライトニング。ファイアーボール』
 パンドラキマイラが剣を抜いた。
 天から稲妻が落ち、それを受けた剣が燃え上がる。
(これで決まってくれ……!)
 ガイはすぐ目の前にいる怪獣へ、キマイラを斬りかからせた。
「雷火・一文字斬りぃ!」

 炎の剣がジュエラドンを切り裂き、食い込んだ。
 そして敵の体の中程で、火炎と電撃が爆発を起こす!
 体内から爆破された怪獣の体が破裂し、結晶のような鱗がキラキラと宙に飛び散った……。


 大ダメージを受けて所々破損しているパンドラキマイラ。
 それでも勝利……人造巨人は剣をしまう。
 ガイは改造古竜ジュエラドンに勝った。


 その頃には敵兵士も半数ほどがレレンに倒されていた。その残りも怪獣が倒されたのを見て一目散に逃げだす。
 機体に膝をつかせ、ガイはハッチを開けて縄梯子で降りた。

 ただ一人取り残された元副隊長は、疲労困憊しながらもゆっくりと迫るガイを見て悲鳴をあげた。
「ななな、なんで!? アンタの村はあれに負けたのに? なんであれに勝てるの!」
 腰を抜かしてブッたまげ、地面にへたり込む元副隊長。もはや戦意の欠片も無い。
「グーズ……」
 彼の名を呼びつつレレンも迫った。
 多少の手傷を追っているものの、彼女もまだ戦闘は可能だ。

 一転、尻もちをついた姿勢から鮮やかな動きを見せる元副隊長。
 くるりと体勢を変え、額を地に擦り付けて土下座した。
 彼の実に無様な泣き声が響く。
「参りました! 降参です! 私が間違っていた、貴方達が正しい、話し合いましょう、話せばわかる!」

 尻を高々と上げながら泣いて伏せる元副隊長の、途方も無く惨めな姿。それを前にガイとレレンは顔を見合わせ……呆れて溜息をついた。


 だが――元副隊長は、伏せた顔でニヤリとほくそ笑んだのだ。
「……と見せかけて、今だァ!」


 土下座は油断を誘うための演技にすぎなかった。
 素早く身を起こすと、その手にはポケットから取り出した毒々しい玉。それをガイへと投げつける。

 いや、投げつけようとはしたのだ。
 だが元副隊長の手を離れる前に、玉へ細い針のような棒手裏剣が飛んで来て突き刺さる。

 玉が爆発した!

 毒々しい爆煙が辺りを一瞬で呑み込む。
「ウギャアァァ!?」
 元副隊長の断末魔があがった!

 もし玉が投げられてから爆発したなら、ガイとレレンなら跳び退って逃げる事ができただろう。
 だが爆発があまりに早く……二人は煙に捉えられた。


 煙の中で激しくむせるレレン。
「一体何が?」
 そう呻いた途端に
 ぎょっとした彼女は、煙が相当に有害な毒である事を悟る。
 慌てて煙から転がり出るも、体内を襲う痛みに膝をついたまままた咳き込む。すぐには立つ事もできない。

 人間を大きく超える生命力の彼女がそんなザマであった。
 ならばガイは……?
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