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2章
17 竜の神 7
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ガイの運命を大きく変える事になった妖精イム。
彼女は何者なのか?
それを訊かれた最上位竜アショーカは、まるで普通の世間話でもするかのように語りだした。
『この妖精は世界樹の分身だぞ。この世界最古の木にして全ての植物の祖が世界樹だが……』
このインタセクシルの【世界樹】がどういう存在なのか。ミオンとハマは知識としては知っていた。ガイはここで初めて聞いた。
しかし三人ともが何も言えなくなるほど驚いたのは、アショーカの話の続きを聞いてしまったからだ。
『あれは魔王軍とやらに奪われ、天空の彼方に持って行かれて乗っ取られた。今では粉々にされて失われている』
この世界の住人の大半が知らないうちに起こった出来事である。
『だがいかな神々より古い霊木だからな。再生して生まれ変わるため、手遅れになる前に己からいくつか種子を地上に打ち出した。もちろん大半は燃え尽きたり海に落ちたりして消えてしまったが、なんとか地上にたどり着いた種子があった。その妖精は自分……世界樹を保護してくれる番人を選び、再生を保護してもらうための分身だ』
そこまで聞いて、ようやくハマが呻くように言う。
「よくわかるのう」
『ワシは木行の化身だし。動物と植物の真ん中にいるからな』
当然のように言うアショーカ。
まぁだからといって世界樹の破壊を止められるわけではなかったのだが。
「俺が食った実で異界流が上がるようになったのは……?」
そう訊くガイに、アショーカの大きな目がどこか遠くを見た。
『ガイには遠い先祖に異界からの聖勇士がいたからな。異界流自体は無くても、その血と身には受け入れる下地はあった。そこに世界樹がパワーを『植え付けた』というこった。先祖にドライアドがいるのも親和性の高さに繋がったのかもしれん。そして戦いの中で、与えられたパワーがどんどん発芽して成長して今に至る』
やはりガイ自身に異界流というパワーを発揮する才能があるわけではなかった。
後天的に注ぎ込まれた物だったのである。
それを吸収し、身に着け、成長させる事のできる体質ではあったが。
「この、聖剣は……」
木刀を竜に見せるガイ。
それをじっと見つめ、アショーカはふんふんと頷く。
『世界樹が自分の番人用に一部を変化させたんだな。命のパワーが満ちておるから、不死怪物によく効いただろ』
聖剣の持つ《生》属性は、再生しようとする世界樹の生命力による物だった。
ガイの技能に合わせた能力を持つのも当然。ガイありきで生まれた武器なのだから。
「じゃ、じゃあ、イムが珍しいアイテム素材の場所を見つけるのが上手いのも、世界樹の化身だから?」
衝撃を受けながらなおも訊くガイ。
やはりアショーカは大した事ではないかのように答える。
『そらそうよ。全ての植物の祖なんだから大地の事はあらかた知り尽くしとったし。五行において木は地に優位だから、大地にある物はほいほい見つかるじゃろ』
「で、この妖精に頼めばガイは今より強くなると」
ハマはそう訊きつつイムを見上げた……が、イム本人は「?」と理解できていない様子。
『まだ本人が己の力の使い方をよくわかっとらんようだな。まぁ後100年ぐらいすれば徐々に……』
アショーカの言い分に、ガイが慌てて叫んだ。
「そうじゃなくてさあ! できるだけ早く、なんなら今日中とかでなんとかならないか?」
アショーカは『ふーむ』と唸ったが、やがて何かを思いついたようだった。
『まぁやってみるか。ではこのアイテムを使うとええ』
ドーム状の枝葉の隙間から、今度は小さな箱が落ちてきた。
それはガイの目の前でふわりと宙に留まる。
手を伸ばしてそれを掴む……掌から少しはみ出すサイズの平べったい箱で、中央には白く丸い木の実が埋め込まれていた。なにやらナイフのような形の装飾もついている。
『それの名は【ミステルテイン】。それを世界樹の前で使えば、より樹との関係が深まりパワーアップする。健康で長生きできるようになるからハマも嬉しいじゃろ』
アショーカの大雑把な説明を聞き、ハマが「ふーむ」と唸った。
「これで大地の魔竜ラヴァフロウに勝てるのかのう?」
頷くアショーカ。
『ガイの話にあった、聖剣の力を使えるケイオス・ウォリアーと組み合わせればええ。さっきも言ったが五行において木は地に優位。元々兵隊に勝てるなら、これで本体に勝てるようになる筈よ』
ガイは木の実を見つめる。
これで戦いの準備はできた、という事なのか……?
彼女は何者なのか?
それを訊かれた最上位竜アショーカは、まるで普通の世間話でもするかのように語りだした。
『この妖精は世界樹の分身だぞ。この世界最古の木にして全ての植物の祖が世界樹だが……』
このインタセクシルの【世界樹】がどういう存在なのか。ミオンとハマは知識としては知っていた。ガイはここで初めて聞いた。
しかし三人ともが何も言えなくなるほど驚いたのは、アショーカの話の続きを聞いてしまったからだ。
『あれは魔王軍とやらに奪われ、天空の彼方に持って行かれて乗っ取られた。今では粉々にされて失われている』
この世界の住人の大半が知らないうちに起こった出来事である。
『だがいかな神々より古い霊木だからな。再生して生まれ変わるため、手遅れになる前に己からいくつか種子を地上に打ち出した。もちろん大半は燃え尽きたり海に落ちたりして消えてしまったが、なんとか地上にたどり着いた種子があった。その妖精は自分……世界樹を保護してくれる番人を選び、再生を保護してもらうための分身だ』
そこまで聞いて、ようやくハマが呻くように言う。
「よくわかるのう」
『ワシは木行の化身だし。動物と植物の真ん中にいるからな』
当然のように言うアショーカ。
まぁだからといって世界樹の破壊を止められるわけではなかったのだが。
「俺が食った実で異界流が上がるようになったのは……?」
そう訊くガイに、アショーカの大きな目がどこか遠くを見た。
『ガイには遠い先祖に異界からの聖勇士がいたからな。異界流自体は無くても、その血と身には受け入れる下地はあった。そこに世界樹がパワーを『植え付けた』というこった。先祖にドライアドがいるのも親和性の高さに繋がったのかもしれん。そして戦いの中で、与えられたパワーがどんどん発芽して成長して今に至る』
やはりガイ自身に異界流というパワーを発揮する才能があるわけではなかった。
後天的に注ぎ込まれた物だったのである。
それを吸収し、身に着け、成長させる事のできる体質ではあったが。
「この、聖剣は……」
木刀を竜に見せるガイ。
それをじっと見つめ、アショーカはふんふんと頷く。
『世界樹が自分の番人用に一部を変化させたんだな。命のパワーが満ちておるから、不死怪物によく効いただろ』
聖剣の持つ《生》属性は、再生しようとする世界樹の生命力による物だった。
ガイの技能に合わせた能力を持つのも当然。ガイありきで生まれた武器なのだから。
「じゃ、じゃあ、イムが珍しいアイテム素材の場所を見つけるのが上手いのも、世界樹の化身だから?」
衝撃を受けながらなおも訊くガイ。
やはりアショーカは大した事ではないかのように答える。
『そらそうよ。全ての植物の祖なんだから大地の事はあらかた知り尽くしとったし。五行において木は地に優位だから、大地にある物はほいほい見つかるじゃろ』
「で、この妖精に頼めばガイは今より強くなると」
ハマはそう訊きつつイムを見上げた……が、イム本人は「?」と理解できていない様子。
『まだ本人が己の力の使い方をよくわかっとらんようだな。まぁ後100年ぐらいすれば徐々に……』
アショーカの言い分に、ガイが慌てて叫んだ。
「そうじゃなくてさあ! できるだけ早く、なんなら今日中とかでなんとかならないか?」
アショーカは『ふーむ』と唸ったが、やがて何かを思いついたようだった。
『まぁやってみるか。ではこのアイテムを使うとええ』
ドーム状の枝葉の隙間から、今度は小さな箱が落ちてきた。
それはガイの目の前でふわりと宙に留まる。
手を伸ばしてそれを掴む……掌から少しはみ出すサイズの平べったい箱で、中央には白く丸い木の実が埋め込まれていた。なにやらナイフのような形の装飾もついている。
『それの名は【ミステルテイン】。それを世界樹の前で使えば、より樹との関係が深まりパワーアップする。健康で長生きできるようになるからハマも嬉しいじゃろ』
アショーカの大雑把な説明を聞き、ハマが「ふーむ」と唸った。
「これで大地の魔竜ラヴァフロウに勝てるのかのう?」
頷くアショーカ。
『ガイの話にあった、聖剣の力を使えるケイオス・ウォリアーと組み合わせればええ。さっきも言ったが五行において木は地に優位。元々兵隊に勝てるなら、これで本体に勝てるようになる筈よ』
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