フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

文字の大きさ
上 下
87 / 147
2章

17 竜の神 7

しおりを挟む
 ガイの運命を大きく変える事になった妖精イム。
 彼女は何者なのか?
 それを訊かれた最上位竜アークドラゴンアショーカは、まるで普通の世間話でもするかのように語りだした。
『この妖精は世界樹の分身だぞ。この世界最古の木にして全ての植物の祖が世界樹だが……』
 このインタセクシルの【世界樹】がどういう存在なのか。ミオンとハマは知識としては知っていた。ガイはここで初めて聞いた。
 しかし三人ともが何も言えなくなるほど驚いたのは、アショーカの話の続きを聞いてしまったからだ。

『あれは魔王軍とやらに奪われ、天空の彼方に持って行かれて乗っ取られた。今では粉々にされて失われている』

 この世界の住人の大半が知らないうちに起こった出来事である。

『だがいかな神々より古い霊木だからな。再生して生まれ変わるため、手遅れになる前に己からいくつか種子を地上に打ち出した。もちろん大半は燃え尽きたり海に落ちたりして消えてしまったが、なんとか地上にたどり着いた種子があった。その妖精は自分……世界樹を保護してくれる番人を選び、再生を保護してもらうための分身だ』
 そこまで聞いて、ようやくハマが呻くように言う。
「よくわかるのう」
『ワシは木行の化身だし。動物と植物の真ん中にいるからな』
 当然のように言うアショーカ。
 まぁだからといって世界樹の破壊を止められるわけではなかったのだが。

「俺が食った実で異界流ケイオスが上がるようになったのは……?」
 そう訊くガイに、アショーカの大きな目がどこか遠くを見た。
『ガイには遠い先祖に異界からの聖勇士パラディンがいたからな。異界流ケイオス自体は無くても、その血と身には受け入れる下地はあった。そこに世界樹がパワーを『植え付けた』というこった。先祖にドライアドがいるのも親和性の高さに繋がったのかもしれん。そして戦いの中で、与えられたパワーがどんどん発芽して成長して今に至る』


 やはりガイ自身に異界流ケイオスというパワーを発揮する才能があるわけではなかった。
 後天的に注ぎ込まれた物だったのである。
 それを吸収し、身に着け、成長させる事のできる体質ではあったが。


「この、聖剣は……」
 木刀を竜に見せるガイ。
 それをじっと見つめ、アショーカはふんふんと頷く。
『世界樹が自分の番人用に一部を変化させたんだな。命のパワーが満ちておるから、不死怪物アンデッドモンスターによく効いただろ』


 聖剣の持つ《Living》属性は、再生しようとする世界樹の生命力による物だった。
 ガイの技能に合わせた能力を持つのも当然。ガイありきで生まれた武器なのだから。


「じゃ、じゃあ、イムが珍しいアイテム素材の場所を見つけるのが上手いのも、世界樹の化身だから?」
 衝撃を受けながらなおも訊くガイ。
 やはりアショーカは大した事ではないかのように答える。
『そらそうよ。全ての植物の祖なんだから大地の事はあらかた知り尽くしとったし。五行において木は地に優位だから、大地にある物はほいほい見つかるじゃろ』

「で、この妖精に頼めばガイは今より強くなると」
 ハマはそう訊きつつイムを見上げた……が、イム本人は「?」と理解できていない様子。
『まだ本人が己の力の使い方をよくわかっとらんようだな。まぁ後100年ぐらいすれば徐々に……』
 アショーカの言い分に、ガイが慌てて叫んだ。
「そうじゃなくてさあ! できるだけ早く、なんなら今日中とかでなんとかならないか?」
 アショーカは『ふーむ』と唸ったが、やがて何かを思いついたようだった。
『まぁやってみるか。ではこのアイテムを使うとええ』


 ドーム状の枝葉の隙間から、今度は小さな箱が落ちてきた。
 それはガイの目の前でふわりと宙に留まる。
 手を伸ばしてそれを掴む……掌から少しはみ出すサイズの平べったい箱で、中央には白く丸い木の実が埋め込まれていた。なにやらナイフのような形の装飾もついている。


『それの名は【ミステルテイン】。それを世界樹の前で使えば、より樹との関係が深まりパワーアップする。健康で長生きできるようになるからハマも嬉しいじゃろ』
 アショーカの大雑把な説明を聞き、ハマが「ふーむ」と唸った。
「これで大地の魔竜ラヴァフロウに勝てるのかのう?」
 頷くアショーカ。
『ガイの話にあった、聖剣の力を使えるケイオス・ウォリアーと組み合わせればええ。さっきも言ったが五行において木は地に優位。元々兵隊に勝てるなら、これで本体に勝てるようになる筈よ』

 ガイは木の実を見つめる。
 これで戦いの準備はできた、という事なのか……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...