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2章
17 竜の神 6
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最上位竜アショーカが所有するダンジョンを前に、攻略本を見ながら無理ゲーぶりに溜息をつくガイとミオン。
『最初の数ページで諦めずにもっと読んでみるとええ』
アショーカにそう言われ、二人はページをぺらぺらとめくった。
>
・上級職にクラスチェンジしている事が前提のダンジョンだ! 転職がまだなら他の地で修行してこよう
・地下1階から悪魔系と不死系の上位種が出る。特効武器を用意せよ
・地下256階が折り返し地点。半年はダンジョン内で暮らす事になるぞ
・何度かに分けて攻略する事が前提だ。帰還の準備は怠りなく
>
「クリアまで何度も出入りしていい試練なのね」
「年単位かけて突破しろってか……」
ページをめくる二人の表情はずっとうんざりしたままだ。
「おお! その間はこの村で暮らすのじゃな。ええぞええぞ、ガイはいっそもう町には帰らんでもええぞ」
ただ一人、ハマだけは喜んでいた。
だがガイはふと気づく。
(……?)
ダンジョンの、二つの出入り口。それを交互に見つめた。
そして攻略本を手に竜を見上げる。
「じゃあやってみるよ」
『うむ。がんばれ』
アショーカはゆっくりと頷いた。
ガイは右側の出入り口へと向かう。
その背にミオンが心配しながらも声をかけた。
「ガイ、気を付けてね。戻るまでここで待っているわ」
「がんばれ~」
イムは楽しそうに声援を送る。
状況がちょっと理解できていないのかもしれない。
こうしてガイの姿は洞窟の奥へと消えた。
でも3分ぐらいで戻って来た。
「ガイ? 忘れ物?」
戸惑いながら訊くミオン。
「そうじゃないんだけどさ」
そう言いながらガイは左側の出入り口へ向かう。
その背にミオンが心配しながらも声をかけた。
「ガイ? そっちからの挑戦に変えるの?」
「がんばれ~」
イムは楽しそうに声援を送る。
状況がちょっと理解できていないのかもしれない。
こうしてガイの姿は洞窟の奥へと消えた。
でも3分ぐらいで戻って来た。
アショーカを見上げるガイ。
「片方は入り口に使ったし、もう片方は出口に使ったぜ。これでクリアした事にならないかな?」
「ガイ!?」
ミオンは仰天。
ガイはバツが悪そうに頭を掻いた。
「いやだって……何かをとって来いとか倒せとかじゃなくて。最下層の通過が義務とも書いてなくて、両方の出入り口を通過する事だけが条件、再突入も可能。なら両方から入って両方から出れば成功条件達成にならないかなって。一つの出入り口を2回以上使うなとも書いてなかったしさ……」
言いながらもガイは相当無理があると思っていた。
つまりダメ元で言っているのだ。
というか本人もこんなん通るわけないだろと思ってはいた。
そしてアショーカは。
『なるほど。まぁ良いか』
あっさりOKした。
「いいの!?」
ガイ本人が驚くぐらいに。
「よくやった! 流石はガイじゃ!」
「さっすがあ!」
ハマとイムは喝采を送っていたが。
なおミオンはこれらのやり取りを茫然と見ているだけだった。
呆気にとられて言葉も出ないらしい。
『一応、200階より下層になると、人類史に一、二回しか出ないような伝説の武具も掘り出せるのだが』
正道な突破をお勧めはしてみるアショーカ。
だがガイは頭を振る。
「時間が惜しいからいらないや」
『そか。ならええよ』
アショーカは勧めるのをあっさりやめた。
そもそも親竜の決めたしきたりだから試練を出してみただけで、アショーカ自身がやらせたいわけでは無いのだ。
こうして神話の時代より突破した者のいないという最難関ダンジョンの攻略試練は、クリアしていないけど終わった事になった。
ダンジョンの二つの出入り口が地下へ沈んでいく。
それをもう一瞥もせず、ガイはアショーカに話しかけた。
「じゃあ本題に入るぜ。いろいろ聞きたい事があるんだ……」
ガイは語った。
自分達がここに来た理由を。
強大な敵に対抗するために助力が欲しい事を。
話を聞き終え、アショーカは頷く。
『魔竜ラヴァフロウか。仕方ない、ワシがなんとか倒すか』
「それはありがたい!」
喜ぶガイ。
だがハマが難しい顔をして口を挟む。
「しかしアショーカがやると落雷と嵐で付近一帯が壊滅するじゃろ」
「あの……ラヴァフロウじゃなくて、それをさらに強化した物なのです」
ミオンがその点を注意すると——
「なら落雷と嵐をフルパワーで起こす事になりそうじゃな。元ケイト帝国の範囲は、そのほとんどが文明をゼロからやり直す事になるかもしれんのう」
『まぁ天変地異なんて時々は起こるもんだよ』
ハマの予想をアショーカは当然のように肯定する。
「犠牲をいくら出してもいいって話じゃなくてさぁ」
ガイは思わず唸った。
『じゃあ人間が倒せばええ。ケイオス・ウォリアーがあるじゃろ。黄金を使えばどうにでもなる』
「黄金級機は伝説の秘宝がないと造れないんだよ!」
当然のように言うアショーカへ怒鳴るガイ。
『知っとるよ。さっきのダンジョン、正式名称【木行の深淵窟】なら250階より下で極稀に出るレアボスモンスターを倒すと極小確率で必要な秘宝【神蒼玉】を入手できる可能性も一応ある』
「そういう運任せな話じゃなくてさあ!」
当然のように言うアショーカへ怒鳴るガイ。
『ならガイがパワーアップするか』
「256階の修行なら却下な」
当然のように言うアショーカに念押しするガイ。
しかし次の言葉は予想外だった。
『いや、そこの妖精に頼んで世界樹の力をもっと引き出せばええ。世界樹の番人が世界樹の力を使うのは当たり前だからな』
「せか……ばん? それ何?」
突然出てきた聞きなれない単語。ガイは戸惑い、イムを見上げる。
イムは「?」と首を傾げるだけだ。
ハマが竜神に訊いた。
「アショーカ。順番に話せ。まずこの妖精は何だ?」
『最初の数ページで諦めずにもっと読んでみるとええ』
アショーカにそう言われ、二人はページをぺらぺらとめくった。
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・上級職にクラスチェンジしている事が前提のダンジョンだ! 転職がまだなら他の地で修行してこよう
・地下1階から悪魔系と不死系の上位種が出る。特効武器を用意せよ
・地下256階が折り返し地点。半年はダンジョン内で暮らす事になるぞ
・何度かに分けて攻略する事が前提だ。帰還の準備は怠りなく
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「クリアまで何度も出入りしていい試練なのね」
「年単位かけて突破しろってか……」
ページをめくる二人の表情はずっとうんざりしたままだ。
「おお! その間はこの村で暮らすのじゃな。ええぞええぞ、ガイはいっそもう町には帰らんでもええぞ」
ただ一人、ハマだけは喜んでいた。
だがガイはふと気づく。
(……?)
ダンジョンの、二つの出入り口。それを交互に見つめた。
そして攻略本を手に竜を見上げる。
「じゃあやってみるよ」
『うむ。がんばれ』
アショーカはゆっくりと頷いた。
ガイは右側の出入り口へと向かう。
その背にミオンが心配しながらも声をかけた。
「ガイ、気を付けてね。戻るまでここで待っているわ」
「がんばれ~」
イムは楽しそうに声援を送る。
状況がちょっと理解できていないのかもしれない。
こうしてガイの姿は洞窟の奥へと消えた。
でも3分ぐらいで戻って来た。
「ガイ? 忘れ物?」
戸惑いながら訊くミオン。
「そうじゃないんだけどさ」
そう言いながらガイは左側の出入り口へ向かう。
その背にミオンが心配しながらも声をかけた。
「ガイ? そっちからの挑戦に変えるの?」
「がんばれ~」
イムは楽しそうに声援を送る。
状況がちょっと理解できていないのかもしれない。
こうしてガイの姿は洞窟の奥へと消えた。
でも3分ぐらいで戻って来た。
アショーカを見上げるガイ。
「片方は入り口に使ったし、もう片方は出口に使ったぜ。これでクリアした事にならないかな?」
「ガイ!?」
ミオンは仰天。
ガイはバツが悪そうに頭を掻いた。
「いやだって……何かをとって来いとか倒せとかじゃなくて。最下層の通過が義務とも書いてなくて、両方の出入り口を通過する事だけが条件、再突入も可能。なら両方から入って両方から出れば成功条件達成にならないかなって。一つの出入り口を2回以上使うなとも書いてなかったしさ……」
言いながらもガイは相当無理があると思っていた。
つまりダメ元で言っているのだ。
というか本人もこんなん通るわけないだろと思ってはいた。
そしてアショーカは。
『なるほど。まぁ良いか』
あっさりOKした。
「いいの!?」
ガイ本人が驚くぐらいに。
「よくやった! 流石はガイじゃ!」
「さっすがあ!」
ハマとイムは喝采を送っていたが。
なおミオンはこれらのやり取りを茫然と見ているだけだった。
呆気にとられて言葉も出ないらしい。
『一応、200階より下層になると、人類史に一、二回しか出ないような伝説の武具も掘り出せるのだが』
正道な突破をお勧めはしてみるアショーカ。
だがガイは頭を振る。
「時間が惜しいからいらないや」
『そか。ならええよ』
アショーカは勧めるのをあっさりやめた。
そもそも親竜の決めたしきたりだから試練を出してみただけで、アショーカ自身がやらせたいわけでは無いのだ。
こうして神話の時代より突破した者のいないという最難関ダンジョンの攻略試練は、クリアしていないけど終わった事になった。
ダンジョンの二つの出入り口が地下へ沈んでいく。
それをもう一瞥もせず、ガイはアショーカに話しかけた。
「じゃあ本題に入るぜ。いろいろ聞きたい事があるんだ……」
ガイは語った。
自分達がここに来た理由を。
強大な敵に対抗するために助力が欲しい事を。
話を聞き終え、アショーカは頷く。
『魔竜ラヴァフロウか。仕方ない、ワシがなんとか倒すか』
「それはありがたい!」
喜ぶガイ。
だがハマが難しい顔をして口を挟む。
「しかしアショーカがやると落雷と嵐で付近一帯が壊滅するじゃろ」
「あの……ラヴァフロウじゃなくて、それをさらに強化した物なのです」
ミオンがその点を注意すると——
「なら落雷と嵐をフルパワーで起こす事になりそうじゃな。元ケイト帝国の範囲は、そのほとんどが文明をゼロからやり直す事になるかもしれんのう」
『まぁ天変地異なんて時々は起こるもんだよ』
ハマの予想をアショーカは当然のように肯定する。
「犠牲をいくら出してもいいって話じゃなくてさぁ」
ガイは思わず唸った。
『じゃあ人間が倒せばええ。ケイオス・ウォリアーがあるじゃろ。黄金を使えばどうにでもなる』
「黄金級機は伝説の秘宝がないと造れないんだよ!」
当然のように言うアショーカへ怒鳴るガイ。
『知っとるよ。さっきのダンジョン、正式名称【木行の深淵窟】なら250階より下で極稀に出るレアボスモンスターを倒すと極小確率で必要な秘宝【神蒼玉】を入手できる可能性も一応ある』
「そういう運任せな話じゃなくてさあ!」
当然のように言うアショーカへ怒鳴るガイ。
『ならガイがパワーアップするか』
「256階の修行なら却下な」
当然のように言うアショーカに念押しするガイ。
しかし次の言葉は予想外だった。
『いや、そこの妖精に頼んで世界樹の力をもっと引き出せばええ。世界樹の番人が世界樹の力を使うのは当たり前だからな』
「せか……ばん? それ何?」
突然出てきた聞きなれない単語。ガイは戸惑い、イムを見上げる。
イムは「?」と首を傾げるだけだ。
ハマが竜神に訊いた。
「アショーカ。順番に話せ。まずこの妖精は何だ?」
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