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2章
15 動乱再び 2
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「ガイ殿。ちょっとお話がありまする」
そう言って入ってきたのは鍛冶屋のイアンだった。
「長距離向けの運搬機を買う件ですが……」
「お、よさげな機体があったか?」
期待して訊くガイ。
この村の地主になってからすぐ、彼には長期間の旅に向く運搬機を探すよう頼んでおいたのだ。果たして彼のおメガネに叶った機体が見つかったのだろうか?
だがイアンは「いいえ」と首を横に振った。
「まだですが、居住性より戦闘力を重視した方が良さそうだと意見を申し上げようかと。なんでも最近【リバーサル】の部隊が壊滅させられる事件があったそうで」
【リバーサル】――魔王軍に対するレジスタンスグループの一つ。魔王軍に滅ぼされた国はいくつもあるが、その一つ・コノナ国の騎士団が中心となって生まれた一団である。
彼らは壊滅したケイト国に近づき、皇族ただ一人の生き残り・第二王女を救って身を寄せた。
勇者と魔王の最終決戦にも主力を送り、最も有力な部隊の一つであったともいう。
だが、それに属する部隊の一つが何物かに襲われたというのだ。
その情報にガイも驚くしかない。
「え? 【リバーサル】は今のケイト国の主力だってのに……」
「並の野盗にできる事ではありませんな」
頷くイアンにガイは考える。
「治安維持が今の彼らの主な仕事だったな? 野盗や魔王軍の残党を討伐する事が。そんな彼らを襲って倒せる集団となると……?」
「魔王軍残党といってもピンキリですからな。大概は雑兵どもが狼藉を働いているだけですが、稀に幹部が率いる本格的な戦闘部隊もあると聞きます。そんな奴等ならやってのけるでしょう」
難しい顔で告げるイアン。
イアンとガイは――いや、この部屋にいる者全てが――レレンを見た。
元魔王軍の幹部を。
唇を噛むレレン。
「クッ……過去の恥辱になんか負けない」
「アンタにゃ何も言ってません」
そう言いながらもスティーナはジト目をレレンに向けていた。
まぁ一番怪しいのが魔王軍の残党なのは確かである。規模は千差万別だが――あくまでも噂の一つとして――中には密かに開発されていた超兵器を保有している者達さえいると言われている。
その真偽はともかく、地下に潜む犯罪組織として依然危険なままの集団は確実にいた。
台所を重苦しい空気が満たす。
しかしその戸が再び慌ただしく開けられた。
飛び込んできた村長・コエトールが滝のような汗を流して叫ぶ。
「ガイ殿! 魔王軍の残党が攻めて来ましたぞ!」
スティーナのレレンを見る目が険しくなった。
「やっぱり文句言うわ」
「そんな後出しで!」
レレンは頭を抱えたが、悲しいかな、彼女に味方してくれる者は部屋に誰もいなかった。
――村の寺院――
魔王軍が攻めてきたと村長は言ったが、それはカサカ村ではなくチマラハの街の事だった。街から逃げ延びてきた者が村にたどり着いたのだ。
ガイ達は彼が運び込まれた寺院に訪れた。
「貴様はウスラ!?」
逃げてきた男を見て声をあげるレレン。
あちこち負傷し、包帯でぐるぐる巻きにされ、村の尼僧ディアに手当を受けているのは、解放後に街へ残った重戦士のウスラだった。
彼は寝台の上で荒い息を吐きながら呻く。
「チマラハの街が、攻められて……このままでは陥落……」
溜息をつくイアン。
「またあの街か」
ガイもちょっとそう言いたかったが、今はそれを抑え、ウスラへ質問を投げる。
「ところでタリンは?」
「やられたっス」
あっさり答えるウスラの言葉に、スティーナが呟いた。
「やっぱりね……」
顎に指をあてて考えるミオン。
「あの街は今じゃ他の地域への大切な流通路だし、村の卸先。助ける必要はあるわね」
「そうだな」
相槌をうちながら、ガイは思い出した。
街を解放する戦いで会った、魔王軍の赤い鎧の戦士。
おそらく幹部であろうし、再び会うような事を言っていた。
「おいウスラ。敵の大将はマスターボウガスとかいう、あの赤い戦士か?」
己の予感を確認するため訊くガイ。
ウスラの返答は――
「見てないっス」
敵の大将と会う前に逃げてきたのだった……!
「それぐらいは見てきて伝える所なんじゃないのか、ここは……」
ガイは額を抑えて呻いた……!
そう言って入ってきたのは鍛冶屋のイアンだった。
「長距離向けの運搬機を買う件ですが……」
「お、よさげな機体があったか?」
期待して訊くガイ。
この村の地主になってからすぐ、彼には長期間の旅に向く運搬機を探すよう頼んでおいたのだ。果たして彼のおメガネに叶った機体が見つかったのだろうか?
だがイアンは「いいえ」と首を横に振った。
「まだですが、居住性より戦闘力を重視した方が良さそうだと意見を申し上げようかと。なんでも最近【リバーサル】の部隊が壊滅させられる事件があったそうで」
【リバーサル】――魔王軍に対するレジスタンスグループの一つ。魔王軍に滅ぼされた国はいくつもあるが、その一つ・コノナ国の騎士団が中心となって生まれた一団である。
彼らは壊滅したケイト国に近づき、皇族ただ一人の生き残り・第二王女を救って身を寄せた。
勇者と魔王の最終決戦にも主力を送り、最も有力な部隊の一つであったともいう。
だが、それに属する部隊の一つが何物かに襲われたというのだ。
その情報にガイも驚くしかない。
「え? 【リバーサル】は今のケイト国の主力だってのに……」
「並の野盗にできる事ではありませんな」
頷くイアンにガイは考える。
「治安維持が今の彼らの主な仕事だったな? 野盗や魔王軍の残党を討伐する事が。そんな彼らを襲って倒せる集団となると……?」
「魔王軍残党といってもピンキリですからな。大概は雑兵どもが狼藉を働いているだけですが、稀に幹部が率いる本格的な戦闘部隊もあると聞きます。そんな奴等ならやってのけるでしょう」
難しい顔で告げるイアン。
イアンとガイは――いや、この部屋にいる者全てが――レレンを見た。
元魔王軍の幹部を。
唇を噛むレレン。
「クッ……過去の恥辱になんか負けない」
「アンタにゃ何も言ってません」
そう言いながらもスティーナはジト目をレレンに向けていた。
まぁ一番怪しいのが魔王軍の残党なのは確かである。規模は千差万別だが――あくまでも噂の一つとして――中には密かに開発されていた超兵器を保有している者達さえいると言われている。
その真偽はともかく、地下に潜む犯罪組織として依然危険なままの集団は確実にいた。
台所を重苦しい空気が満たす。
しかしその戸が再び慌ただしく開けられた。
飛び込んできた村長・コエトールが滝のような汗を流して叫ぶ。
「ガイ殿! 魔王軍の残党が攻めて来ましたぞ!」
スティーナのレレンを見る目が険しくなった。
「やっぱり文句言うわ」
「そんな後出しで!」
レレンは頭を抱えたが、悲しいかな、彼女に味方してくれる者は部屋に誰もいなかった。
――村の寺院――
魔王軍が攻めてきたと村長は言ったが、それはカサカ村ではなくチマラハの街の事だった。街から逃げ延びてきた者が村にたどり着いたのだ。
ガイ達は彼が運び込まれた寺院に訪れた。
「貴様はウスラ!?」
逃げてきた男を見て声をあげるレレン。
あちこち負傷し、包帯でぐるぐる巻きにされ、村の尼僧ディアに手当を受けているのは、解放後に街へ残った重戦士のウスラだった。
彼は寝台の上で荒い息を吐きながら呻く。
「チマラハの街が、攻められて……このままでは陥落……」
溜息をつくイアン。
「またあの街か」
ガイもちょっとそう言いたかったが、今はそれを抑え、ウスラへ質問を投げる。
「ところでタリンは?」
「やられたっス」
あっさり答えるウスラの言葉に、スティーナが呟いた。
「やっぱりね……」
顎に指をあてて考えるミオン。
「あの街は今じゃ他の地域への大切な流通路だし、村の卸先。助ける必要はあるわね」
「そうだな」
相槌をうちながら、ガイは思い出した。
街を解放する戦いで会った、魔王軍の赤い鎧の戦士。
おそらく幹部であろうし、再び会うような事を言っていた。
「おいウスラ。敵の大将はマスターボウガスとかいう、あの赤い戦士か?」
己の予感を確認するため訊くガイ。
ウスラの返答は――
「見てないっス」
敵の大将と会う前に逃げてきたのだった……!
「それぐらいは見てきて伝える所なんじゃないのか、ここは……」
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