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1章
13 チマラハ攻略戦 2
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爆音とともに揺さぶられる街の中、住民は悲鳴をあげる。
魔王軍兵士は怒鳴りながら走り回っていた。
「敵襲! 敵襲だアー!」
「クソッ、あのヘボ領主がどこかの領に泣きつきやがったかァ?」
苛立ちで叫ぶゴブリン兵とオーク兵。
煙をあげる防壁へと、下級の魔物兵達が駆け付けていく。
見張り塔ではコボルド兵が狼狽えていた。
街を攻め落とされた領主が逃げてから戦など全く無く、彼は完全に油断していたのだ。その上、今回の敵は……街道でも荒野でもなく、側の大河から強襲してきたのである。
カモフラージュシートを被った巨大ミズスマシの水陸両用運搬機に運ばれてきた敵機は、上陸するなり砲撃をかけてきた。
砲撃しているのが重装甲の虫人型機・Bカノンピルバグ。
その横にリザードマン型の格闘機・Bクローリザード。
そして骸骨戦士型機・Sバスタードスカル。
防壁に登って敵を確認した魔王軍兵士達がいきり立つ。
「たった三機?」
「やっちめえ!」
それに応えるように、街中から魔王軍の量産型機が次々と出撃した。
その数、十機以上!
三倍以上の戦力差は作戦では覆らない。一般的にはそう言われている。
魔王軍の兵士達も数で圧し潰せると踏んだのだろう。下級の魔物は頭がいいものでもなく、勢い任せに敵へ殺到した。
だがしかし。
バスタードスカルが剣を地面に突き刺した。禍々しいオーラが土中に流れ、巨大な怪獣の骸骨が這い出して来る。
それは先頭にいた魔王軍の機体へ躍りかかった。
増援といってもたった一体である。
だが出鼻を挫かれ、魔王軍の勢いにはブレーキがかかった。
そこへ敵三機が容赦なく攻撃を加える!
「ついにオレの時代が来たぜぇ!」
操縦席で叫ぶタリン。バスタードスカルが長剣を両腕で振り回し、魔王軍のBソードアーミーを叩き斬った。機体の性能差もあるし、タリンとて雑兵よりはまだ腕が立つ。
鍛冶屋のイアンが乗るクローリザードも敵機に飛びつき、引きずり倒しながらも首を切り裂いた。
農夫のタゴサックはカノンピルバグで当たるを幸い、次々と敵軍へ砲弾を撃ち込む。
数で劣れど、三機+怪獣の骸骨は魔王軍相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。
――領主邸――
何度も伝令が入れ替わり駆け込む最上階の部屋。
芳しくない報告が続く中、赤い鎧の男が肥満の副隊長に声をかける。
「なにやら苦戦しているようだな。行かなくていいのか?」
「ふ、伏兵を警戒しなければ」
脂汗を流しながら、副隊長は机から動こうとしなかった。
――郊外、大河辺の林――
その頃、ガイは大河から入り込む事のできる林を見つけて上陸していた。
乗っている機体はタリンが魔王軍から持ってきた魚人型機・Bバイブグンザリ。それを運んできたのはやはりミズスマシの運搬機だ。
街の方へ向かいながらガイは運搬機へ通信を送る。
「ミオン、後ろに退いてくれ」
そう……タリン達三機を運んだ方はスティーナが。ガイの機体を運んだ方はミオンが運転していたのだ。
セイカ領を旅した時、ガイの運転を見ていて大まかに理解したという。もちろん細かい所は教える必要があったが、飲みこみの早さはガイが感心するほどだった。
(貴族のお嬢さんが運転を自分から申し出てやりこなすとはなぁ……)
以前何度か感じた事だが、やはりミオンは普通の貴族女性らしくないとガイは思う。
それでもガイはミオンが作戦に参加する事は反対だった。理由は単純、危険に近づけたくない。それだけだ。
しかしミオンの意思は固かったし、村の衆も「手が増えるのならば……」と承諾した。スティーナに至っては「愛の絆ですね!」と目を輝かせて賛成までした。
結局、ガイの機体を運ぶ役目を担当する事になったのである。
後退の指示を出したガイに返信が入った。
「了解。頼りにしているわ、私の旦那様」
ぐっと言葉に詰まるガイ。
(ま、まぁ、軽口を叩く余裕があるのは良い事だし)
そう考える事にして、次はイムに指示を出した。
「それじゃあ頼む」
「おまかせ!」
ガイの肩で妖精の少女が元気よく応え、翅を虹色に輝かせた。
機体の前方に同色の渦が生じ、花吹雪が吹き付ける。
――街の門の前――
骸骨怪獣がまた倒された。これで二体目である。
「チクショウ、なんの!」
『次で最後だぞ』
タリンの叫びにシロウの髑髏が応え、三体目の不死怪獣が現れた。しかしシロウが言う通り、バスタードスカルのエネルギー残量は残り少なく、これ以上の召喚はできない。とはいえ動く盾として召喚し、前衛のトップに立たせているのだ。元よりやられて当然でもある。
街から魔王軍の増援が現れた。戦力の半分ほどは三機と召喚怪獣で倒したが、タリン達の限界も近かった。
そこへ林から飛び出す影が一機。戦場の横手から現れた。
ガイの乗る魚人型機である――それはイムの力で装甲が増強されていた。肩と背中を細い緑のすだれが外套のごとく覆い、胸にはスイセンの花のような模様が生じている。
例のごとく、モニターに表示されるステータスはBバイブグンザリのそれではなかった。
>
パンドラグンザリ
ファイティングアビリティ:110
ウェポンズアビリティ:140
スピードアビリティ:130
パワーアビリティ:120
アーマードアビリティ:130
>
頭の横のエラがパラボラアンテナのように開く。本来の倍、六対のアンテナが。
それらが輝き、振動し、ガイが――
「マッシャーウェーブ、発射ー!」
「はっしゃあ!」
――叫んでイムが共に声をあげた。
元となった機体は量産型機でも性能が低い部類に入る。だがそれは能力が武器一つに費やされているからだ。青銅級機どころか白銀級機でも搭載される事が少ない、広範囲を制圧する範囲攻撃兵器に。
強烈な振動波が戦場を覆った。それは敵をことごとく呑み込み、機体を粉々に分解する!
地表も砕けて砂が舞い上がり、それさえも砕けて土煙と化す中……魔王軍の機体はほとんど同時に爆発を起こした。
――領主邸――
駆け込んで来たコボルド兵士が泣きべそをかきながら自軍の壊滅を報告する。
赤い鎧の男が「ほう」と感嘆の声を漏らし、副隊長へ顔を向けた。
「なるほど、読み通り伏兵がいたな。警戒していた割に貴殿は何の対処もしていないようだったが」
副隊長はただ震えるばかりだ。
「あ、ああ、そんな……」
また別の伝令が駆け込んで来た。敵部隊が街へ侵入した事を伝えるために。
魔王軍兵士は怒鳴りながら走り回っていた。
「敵襲! 敵襲だアー!」
「クソッ、あのヘボ領主がどこかの領に泣きつきやがったかァ?」
苛立ちで叫ぶゴブリン兵とオーク兵。
煙をあげる防壁へと、下級の魔物兵達が駆け付けていく。
見張り塔ではコボルド兵が狼狽えていた。
街を攻め落とされた領主が逃げてから戦など全く無く、彼は完全に油断していたのだ。その上、今回の敵は……街道でも荒野でもなく、側の大河から強襲してきたのである。
カモフラージュシートを被った巨大ミズスマシの水陸両用運搬機に運ばれてきた敵機は、上陸するなり砲撃をかけてきた。
砲撃しているのが重装甲の虫人型機・Bカノンピルバグ。
その横にリザードマン型の格闘機・Bクローリザード。
そして骸骨戦士型機・Sバスタードスカル。
防壁に登って敵を確認した魔王軍兵士達がいきり立つ。
「たった三機?」
「やっちめえ!」
それに応えるように、街中から魔王軍の量産型機が次々と出撃した。
その数、十機以上!
三倍以上の戦力差は作戦では覆らない。一般的にはそう言われている。
魔王軍の兵士達も数で圧し潰せると踏んだのだろう。下級の魔物は頭がいいものでもなく、勢い任せに敵へ殺到した。
だがしかし。
バスタードスカルが剣を地面に突き刺した。禍々しいオーラが土中に流れ、巨大な怪獣の骸骨が這い出して来る。
それは先頭にいた魔王軍の機体へ躍りかかった。
増援といってもたった一体である。
だが出鼻を挫かれ、魔王軍の勢いにはブレーキがかかった。
そこへ敵三機が容赦なく攻撃を加える!
「ついにオレの時代が来たぜぇ!」
操縦席で叫ぶタリン。バスタードスカルが長剣を両腕で振り回し、魔王軍のBソードアーミーを叩き斬った。機体の性能差もあるし、タリンとて雑兵よりはまだ腕が立つ。
鍛冶屋のイアンが乗るクローリザードも敵機に飛びつき、引きずり倒しながらも首を切り裂いた。
農夫のタゴサックはカノンピルバグで当たるを幸い、次々と敵軍へ砲弾を撃ち込む。
数で劣れど、三機+怪獣の骸骨は魔王軍相手に互角以上の戦いを繰り広げていた。
――領主邸――
何度も伝令が入れ替わり駆け込む最上階の部屋。
芳しくない報告が続く中、赤い鎧の男が肥満の副隊長に声をかける。
「なにやら苦戦しているようだな。行かなくていいのか?」
「ふ、伏兵を警戒しなければ」
脂汗を流しながら、副隊長は机から動こうとしなかった。
――郊外、大河辺の林――
その頃、ガイは大河から入り込む事のできる林を見つけて上陸していた。
乗っている機体はタリンが魔王軍から持ってきた魚人型機・Bバイブグンザリ。それを運んできたのはやはりミズスマシの運搬機だ。
街の方へ向かいながらガイは運搬機へ通信を送る。
「ミオン、後ろに退いてくれ」
そう……タリン達三機を運んだ方はスティーナが。ガイの機体を運んだ方はミオンが運転していたのだ。
セイカ領を旅した時、ガイの運転を見ていて大まかに理解したという。もちろん細かい所は教える必要があったが、飲みこみの早さはガイが感心するほどだった。
(貴族のお嬢さんが運転を自分から申し出てやりこなすとはなぁ……)
以前何度か感じた事だが、やはりミオンは普通の貴族女性らしくないとガイは思う。
それでもガイはミオンが作戦に参加する事は反対だった。理由は単純、危険に近づけたくない。それだけだ。
しかしミオンの意思は固かったし、村の衆も「手が増えるのならば……」と承諾した。スティーナに至っては「愛の絆ですね!」と目を輝かせて賛成までした。
結局、ガイの機体を運ぶ役目を担当する事になったのである。
後退の指示を出したガイに返信が入った。
「了解。頼りにしているわ、私の旦那様」
ぐっと言葉に詰まるガイ。
(ま、まぁ、軽口を叩く余裕があるのは良い事だし)
そう考える事にして、次はイムに指示を出した。
「それじゃあ頼む」
「おまかせ!」
ガイの肩で妖精の少女が元気よく応え、翅を虹色に輝かせた。
機体の前方に同色の渦が生じ、花吹雪が吹き付ける。
――街の門の前――
骸骨怪獣がまた倒された。これで二体目である。
「チクショウ、なんの!」
『次で最後だぞ』
タリンの叫びにシロウの髑髏が応え、三体目の不死怪獣が現れた。しかしシロウが言う通り、バスタードスカルのエネルギー残量は残り少なく、これ以上の召喚はできない。とはいえ動く盾として召喚し、前衛のトップに立たせているのだ。元よりやられて当然でもある。
街から魔王軍の増援が現れた。戦力の半分ほどは三機と召喚怪獣で倒したが、タリン達の限界も近かった。
そこへ林から飛び出す影が一機。戦場の横手から現れた。
ガイの乗る魚人型機である――それはイムの力で装甲が増強されていた。肩と背中を細い緑のすだれが外套のごとく覆い、胸にはスイセンの花のような模様が生じている。
例のごとく、モニターに表示されるステータスはBバイブグンザリのそれではなかった。
>
パンドラグンザリ
ファイティングアビリティ:110
ウェポンズアビリティ:140
スピードアビリティ:130
パワーアビリティ:120
アーマードアビリティ:130
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頭の横のエラがパラボラアンテナのように開く。本来の倍、六対のアンテナが。
それらが輝き、振動し、ガイが――
「マッシャーウェーブ、発射ー!」
「はっしゃあ!」
――叫んでイムが共に声をあげた。
元となった機体は量産型機でも性能が低い部類に入る。だがそれは能力が武器一つに費やされているからだ。青銅級機どころか白銀級機でも搭載される事が少ない、広範囲を制圧する範囲攻撃兵器に。
強烈な振動波が戦場を覆った。それは敵をことごとく呑み込み、機体を粉々に分解する!
地表も砕けて砂が舞い上がり、それさえも砕けて土煙と化す中……魔王軍の機体はほとんど同時に爆発を起こした。
――領主邸――
駆け込んで来たコボルド兵士が泣きべそをかきながら自軍の壊滅を報告する。
赤い鎧の男が「ほう」と感嘆の声を漏らし、副隊長へ顔を向けた。
「なるほど、読み通り伏兵がいたな。警戒していた割に貴殿は何の対処もしていないようだったが」
副隊長はただ震えるばかりだ。
「あ、ああ、そんな……」
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