フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

文字の大きさ
上 下
61 / 147
1章

12 改造と計画と 4

しおりを挟む
――カサカ村・ガイ宅――


「結局、奪還してあげるのね」
 感心半分、呆れ半分のミオン。
 ガイは真剣な顔で頷く。
「都が抑えられている以上、カーチナガ子爵領は魔王軍に占領されているって事だからな。このままじゃそれがいつまで続くかわからないから」
 だがミオンは、旅の途中でガイと共に聞いた情報を思い出していた。
「村で守りを固めていれば、いずれ勇者様が魔王軍を倒してくださるかもしれないわよ?」


 チマラハの街を奪還する計画を、ガイは帰宅してすぐミオンに話した。
 だが彼女はあまり賛成する気は無いようだ。
 ガイは自分の考えを説明する。

「状況次第ではそれを待ってもいいんだけどさ。外国の勇者さんとやらがこの国全土隅々まで魔王軍どもを駆逐してくださるかどうかわかったもんじゃないだろ。最終決戦といってもいつ決着がつくかも不明だ。だから、魔王軍が援軍を派遣してこないだろう今やるべきだと思う」
 そう言うガイを、ミオンは大きな瞳でじっと見つめる。
「ガイが戦ってあげるのは他の人にとってありがたいと思うわ。でも、使命感をもつ義務はないわよ?」

 ミオンは計画の成功率を気にしているわけではない。
 ガイが他人に都合よく使われているのではないか……それを考えているのだ。

「まぁそうなんだけどさ」
 しかしガイは……
「世の中落ち着いてくれなきゃ、ケイトの首都に行けるのがいつになるかわからないじゃないか。俺は……ミオンの身元を調べるの、やめたわけじゃないんだぜ」
 彼の中の理由を告げた。

 ケイト帝国――崩壊したので「旧」をつけるべきか――の都までこのカサカ村からの道は、決して近い距離ではない。側の大河に沿って遡る道を進み、それも途中から逸れて平原を横切るルートを通る。
 点在する人里を渡り歩くような形になり、治安が悪い時代には通行量が激減する道だ。
 そして魔王軍が各地でのさばっている今、治安は最低の状態であった。

 だからまず第一歩目、直近の場所から侵略者を追い出す。それがガイの考えだった。
 それを理解し、ミオンは一瞬目を丸くする。
 すぐに「ふうん」と呟き、にんまりと笑ってみせた。
「それじゃあ私のためなんだ?」

 そう訊けばガイはまた照れとこっ恥ずかしさで狼狽うろたえるだろう……ミオンはそう思っていたのだが。

「そうだ」
 ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、断言して頷いた。


 その態度にむしろ動揺したのはミオンだった。
 慌てて目を逸らし、ちょっとの間、言葉を探して……考えついた事を言ってみる。
「もしかしたら帰りたいような家じゃないかも……そんな可能性はあるわよね」
 ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、それに応えた。 
「その時は帰らなきゃいいだけだろ。その時には、な」
 素っ気ない表情を「ふうん」と呟くミオン。
 ちょっとの間、口籠る。
 それでもやがて。
 ガイへと視線を戻して。
「この家ぐらいしか行き先はなさそうだけど」

 今度はガイが黙った。
 しかし言おうとしている事はある。その気配はミオンにははっきりとわかった。
 互いに真っすぐ相手をみつめたまま、ガイは意を決し、彼の本当の気持ちを伝えようとした。

「ああ。こ、ここで……この家で……俺t」
「三人で一緒だよ!」
 それまでガイの肩で二人を交互に見ながら黙っていたイムが唐突に満面の笑顔で口を挟んだ!
 奇しくもガイの言葉の途中に割り込むというか滑り込むかのように!

 思わずがくりと膝が崩れそうになるガイ。
 大きく崩れた姿勢に驚き、イムが咄嗟に宙へ羽ばたく。
 呆然と固まるミオンの前で、肩を落として床に目を落したまま、ガイは呻いた。
「……風呂、入って来る……」
 ふらふらと背を向けふらふらと去っていくガイ。
 男には、独りになりたい時がある……。

「?」
 イムは宙で首を傾げていた。
 苦笑いしながら彼女にミオンは掌を差し出し、そこに降り立たせる。
「ありがと。嬉しいわ。でもちょっと……誰が言うのかが大事な時もあってね」
 そこで何やら決めたようだった。
「ま、それはそれとして。私もお手伝いしてみますか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習し

西園寺わかば🌱
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...