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1章
12 改造と計画と 4
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――カサカ村・ガイ宅――
「結局、奪還してあげるのね」
感心半分、呆れ半分のミオン。
ガイは真剣な顔で頷く。
「都が抑えられている以上、カーチナガ子爵領は魔王軍に占領されているって事だからな。このままじゃそれがいつまで続くかわからないから」
だがミオンは、旅の途中でガイと共に聞いた情報を思い出していた。
「村で守りを固めていれば、いずれ勇者様が魔王軍を倒してくださるかもしれないわよ?」
チマラハの街を奪還する計画を、ガイは帰宅してすぐミオンに話した。
だが彼女はあまり賛成する気は無いようだ。
ガイは自分の考えを説明する。
「状況次第ではそれを待ってもいいんだけどさ。外国の勇者さんとやらがこの国全土隅々まで魔王軍どもを駆逐してくださるかどうかわかったもんじゃないだろ。最終決戦といってもいつ決着がつくかも不明だ。だから、魔王軍が援軍を派遣してこないだろう今やるべきだと思う」
そう言うガイを、ミオンは大きな瞳でじっと見つめる。
「ガイが戦ってあげるのは他の人にとってありがたいと思うわ。でも、使命感をもつ義務はないわよ?」
ミオンは計画の成功率を気にしているわけではない。
ガイが他人に都合よく使われているのではないか……それを考えているのだ。
「まぁそうなんだけどさ」
しかしガイは……
「世の中落ち着いてくれなきゃ、ケイトの首都に行けるのがいつになるかわからないじゃないか。俺は……ミオンの身元を調べるの、やめたわけじゃないんだぜ」
彼の中の理由を告げた。
ケイト帝国――崩壊したので「旧」をつけるべきか――の都までこのカサカ村からの道は、決して近い距離ではない。側の大河に沿って遡る道を進み、それも途中から逸れて平原を横切るルートを通る。
点在する人里を渡り歩くような形になり、治安が悪い時代には通行量が激減する道だ。
そして魔王軍が各地でのさばっている今、治安は最低の状態であった。
だからまず第一歩目、直近の場所から侵略者を追い出す。それがガイの考えだった。
それを理解し、ミオンは一瞬目を丸くする。
すぐに「ふうん」と呟き、にんまりと笑ってみせた。
「それじゃあ私のためなんだ?」
そう訊けばガイはまた照れとこっ恥ずかしさで狼狽えるだろう……ミオンはそう思っていたのだが。
「そうだ」
ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、断言して頷いた。
その態度にむしろ動揺したのはミオンだった。
慌てて目を逸らし、ちょっとの間、言葉を探して……考えついた事を言ってみる。
「もしかしたら帰りたいような家じゃないかも……そんな可能性はあるわよね」
ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、それに応えた。
「その時は帰らなきゃいいだけだろ。その時には、な」
素っ気ない表情を作って「ふうん」と呟くミオン。
ちょっとの間、口籠る。
それでもやがて。
ガイへと視線を戻して。
「この家ぐらいしか行き先はなさそうだけど」
今度はガイが黙った。
しかし言おうとしている事はある。その気配はミオンにははっきりとわかった。
互いに真っすぐ相手をみつめたまま、ガイは意を決し、彼の本当の気持ちを伝えようとした。
「ああ。こ、ここで……この家で……俺t」
「三人で一緒だよ!」
それまでガイの肩で二人を交互に見ながら黙っていたイムが唐突に満面の笑顔で口を挟んだ!
奇しくもガイの言葉の途中に割り込むというか滑り込むかのように!
思わずがくりと膝が崩れそうになるガイ。
大きく崩れた姿勢に驚き、イムが咄嗟に宙へ羽ばたく。
呆然と固まるミオンの前で、肩を落として床に目を落したまま、ガイは呻いた。
「……風呂、入って来る……」
ふらふらと背を向けふらふらと去っていくガイ。
男には、独りになりたい時がある……。
「?」
イムは宙で首を傾げていた。
苦笑いしながら彼女にミオンは掌を差し出し、そこに降り立たせる。
「ありがと。嬉しいわ。でもちょっと……誰が言うのかが大事な時もあってね」
そこで何やら決めたようだった。
「ま、それはそれとして。私もお手伝いしてみますか」
「結局、奪還してあげるのね」
感心半分、呆れ半分のミオン。
ガイは真剣な顔で頷く。
「都が抑えられている以上、カーチナガ子爵領は魔王軍に占領されているって事だからな。このままじゃそれがいつまで続くかわからないから」
だがミオンは、旅の途中でガイと共に聞いた情報を思い出していた。
「村で守りを固めていれば、いずれ勇者様が魔王軍を倒してくださるかもしれないわよ?」
チマラハの街を奪還する計画を、ガイは帰宅してすぐミオンに話した。
だが彼女はあまり賛成する気は無いようだ。
ガイは自分の考えを説明する。
「状況次第ではそれを待ってもいいんだけどさ。外国の勇者さんとやらがこの国全土隅々まで魔王軍どもを駆逐してくださるかどうかわかったもんじゃないだろ。最終決戦といってもいつ決着がつくかも不明だ。だから、魔王軍が援軍を派遣してこないだろう今やるべきだと思う」
そう言うガイを、ミオンは大きな瞳でじっと見つめる。
「ガイが戦ってあげるのは他の人にとってありがたいと思うわ。でも、使命感をもつ義務はないわよ?」
ミオンは計画の成功率を気にしているわけではない。
ガイが他人に都合よく使われているのではないか……それを考えているのだ。
「まぁそうなんだけどさ」
しかしガイは……
「世の中落ち着いてくれなきゃ、ケイトの首都に行けるのがいつになるかわからないじゃないか。俺は……ミオンの身元を調べるの、やめたわけじゃないんだぜ」
彼の中の理由を告げた。
ケイト帝国――崩壊したので「旧」をつけるべきか――の都までこのカサカ村からの道は、決して近い距離ではない。側の大河に沿って遡る道を進み、それも途中から逸れて平原を横切るルートを通る。
点在する人里を渡り歩くような形になり、治安が悪い時代には通行量が激減する道だ。
そして魔王軍が各地でのさばっている今、治安は最低の状態であった。
だからまず第一歩目、直近の場所から侵略者を追い出す。それがガイの考えだった。
それを理解し、ミオンは一瞬目を丸くする。
すぐに「ふうん」と呟き、にんまりと笑ってみせた。
「それじゃあ私のためなんだ?」
そう訊けばガイはまた照れとこっ恥ずかしさで狼狽えるだろう……ミオンはそう思っていたのだが。
「そうだ」
ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、断言して頷いた。
その態度にむしろ動揺したのはミオンだった。
慌てて目を逸らし、ちょっとの間、言葉を探して……考えついた事を言ってみる。
「もしかしたら帰りたいような家じゃないかも……そんな可能性はあるわよね」
ガイは真っすぐミオンを見つめたまま、それに応えた。
「その時は帰らなきゃいいだけだろ。その時には、な」
素っ気ない表情を作って「ふうん」と呟くミオン。
ちょっとの間、口籠る。
それでもやがて。
ガイへと視線を戻して。
「この家ぐらいしか行き先はなさそうだけど」
今度はガイが黙った。
しかし言おうとしている事はある。その気配はミオンにははっきりとわかった。
互いに真っすぐ相手をみつめたまま、ガイは意を決し、彼の本当の気持ちを伝えようとした。
「ああ。こ、ここで……この家で……俺t」
「三人で一緒だよ!」
それまでガイの肩で二人を交互に見ながら黙っていたイムが唐突に満面の笑顔で口を挟んだ!
奇しくもガイの言葉の途中に割り込むというか滑り込むかのように!
思わずがくりと膝が崩れそうになるガイ。
大きく崩れた姿勢に驚き、イムが咄嗟に宙へ羽ばたく。
呆然と固まるミオンの前で、肩を落として床に目を落したまま、ガイは呻いた。
「……風呂、入って来る……」
ふらふらと背を向けふらふらと去っていくガイ。
男には、独りになりたい時がある……。
「?」
イムは宙で首を傾げていた。
苦笑いしながら彼女にミオンは掌を差し出し、そこに降り立たせる。
「ありがと。嬉しいわ。でもちょっと……誰が言うのかが大事な時もあってね」
そこで何やら決めたようだった。
「ま、それはそれとして。私もお手伝いしてみますか」
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