59 / 147
1章
12 改造と計画と 2
しおりを挟む
――カサカ村の難民区画――
仮設住宅がごちゃごちゃ並ぶ通りを向こうに、スティーナが結晶板を手にしていた。
「では稼働試験も兼ねて作業を始めてもらいます」
彼女がそう言うと、通りを背に立つ白銀級機のケイオス・ウォリアーからタリンが通信を返す。
『腕利きテストパイロット様に任せろ!』
その機体を見ながらガイは感心していた。
「えらく外見が変わったな」
「はい。元は死霊魔術を増幅して使う機体でしたが、そんな技術をもっている者がこの村にいませんので。師匠が使う事を前提に前衛型の装備へ変更しました。今の名称はSバスタードスカルです」
そう説明するスティーナが、祖父の鍛冶屋イアンと共に改造した本人である。
フードローブ状の外装は外され、今や鎧で武装した骸骨戦士といった形状だ。
背中には大きめの剣を背負っており、それが主武器である事は一目瞭然。
「ま、それでいいか。不死怪獣を召喚しろと言われても俺はそんな魔術を習得していないしな」
納得するガイだが、スティーナは説明する。
「シロウが使われていますから、不死怪物召喚能力はまだ残っていると思いますよ。それも今からテストしましょう」
「え?」
驚くガイの前でスティーナが結晶板に手を触れた。そこに文字と映像が浮かび上がる。
それは地球でいう所のタブレットPCのような役目を果たす装置で、眼前の機体との通信、各部の現状や動作状態を表示していた。
そこに操縦席内部も映っている。
得意満面のタリンと、それが握るハンドルが。
そのハンドルはシャフトで支えられたシロウの頭蓋骨を左右に貫通している。
形状としては、地球のバイクやスクーターのそれに近い。
「では召喚能力を使ってください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
スティーナの指示に威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。その両眼が禍々しい赤色に輝いた。
すると側の大地が盛り上がり、巨大な生物の骸骨が這い出して来る。
その形状は以前ガイが退治した雷竜の物だった。
「ゲーッ! マジで出て来た!」
驚くガイの横でスティーナが指示を出す。
「ではそれを使役しながら作業を開始してください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。
『儂らもいるぞい』
イアンの声とともに二機の量産型ケイオス・ウォリアーがやってくる。
計3機の機体は巨大なシャベルやつるはしを使い、大きな溝を掘り始めた。
いつの間にやら来ていた村長のコエトールと領主のカーチナガもその作業を見守る。
給水・排水、両方の側溝を掘るのが新型機の動作試験なのである。
それにより作業の精密性や機体の持続力、不具合の有無を探るわけだが――
Sバスタードスカルは問題無くシャベルを使っているものの、不死の怪獣は土を力任せにまき散らしていた。
「機体はいいとして……不死怪物の方は作業が雑だな」
「精密な事はできませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そんな話をしていると、怪獣の骸骨が崩れて消えた。
「……すぐ壊れたな」
「持続時間もたいした事ありませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
「要するに【骸骨の杖】で呼べる魔物がデカくなっただけと」
「まぁ召喚する魔物が巨大になったぶん、パワーアップはしました。文字通りパワーだけは」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そこでふとガイに疑問が浮かぶ。
「シロウはもう取り外しできないんだっけ?」
「できますよ。杖としては使えませんので、ただの喋る髑髏になりますが」
スティーナが説明していると、タリンの嬉しそうな声が通信機能を通じて聞こえて来た。
『ヒャッハー! オレ様絶好調ー! ガイィ! 今日からこの村最強の男はオレだ! 媚びろ! へつらえ! 女を用意しろ!』
機体データに問題が無い事を確認し、スティーナは顔をあげてガイを見る。
「仕上がりは上々です。となると、あの男はもう用済みですね。川にでも流しますか?」
だがガイは。
腕組みして何やら考え込んでいた。
「いや……やってもらいたい事ができた」
仮設住宅がごちゃごちゃ並ぶ通りを向こうに、スティーナが結晶板を手にしていた。
「では稼働試験も兼ねて作業を始めてもらいます」
彼女がそう言うと、通りを背に立つ白銀級機のケイオス・ウォリアーからタリンが通信を返す。
『腕利きテストパイロット様に任せろ!』
その機体を見ながらガイは感心していた。
「えらく外見が変わったな」
「はい。元は死霊魔術を増幅して使う機体でしたが、そんな技術をもっている者がこの村にいませんので。師匠が使う事を前提に前衛型の装備へ変更しました。今の名称はSバスタードスカルです」
そう説明するスティーナが、祖父の鍛冶屋イアンと共に改造した本人である。
フードローブ状の外装は外され、今や鎧で武装した骸骨戦士といった形状だ。
背中には大きめの剣を背負っており、それが主武器である事は一目瞭然。
「ま、それでいいか。不死怪獣を召喚しろと言われても俺はそんな魔術を習得していないしな」
納得するガイだが、スティーナは説明する。
「シロウが使われていますから、不死怪物召喚能力はまだ残っていると思いますよ。それも今からテストしましょう」
「え?」
驚くガイの前でスティーナが結晶板に手を触れた。そこに文字と映像が浮かび上がる。
それは地球でいう所のタブレットPCのような役目を果たす装置で、眼前の機体との通信、各部の現状や動作状態を表示していた。
そこに操縦席内部も映っている。
得意満面のタリンと、それが握るハンドルが。
そのハンドルはシャフトで支えられたシロウの頭蓋骨を左右に貫通している。
形状としては、地球のバイクやスクーターのそれに近い。
「では召喚能力を使ってください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
スティーナの指示に威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。その両眼が禍々しい赤色に輝いた。
すると側の大地が盛り上がり、巨大な生物の骸骨が這い出して来る。
その形状は以前ガイが退治した雷竜の物だった。
「ゲーッ! マジで出て来た!」
驚くガイの横でスティーナが指示を出す。
「ではそれを使役しながら作業を開始してください」
『任せろ!』
『まぁやるのは俺なんだが』
威勢よく応えるタリン、一言加える髑髏のシロウ。
『儂らもいるぞい』
イアンの声とともに二機の量産型ケイオス・ウォリアーがやってくる。
計3機の機体は巨大なシャベルやつるはしを使い、大きな溝を掘り始めた。
いつの間にやら来ていた村長のコエトールと領主のカーチナガもその作業を見守る。
給水・排水、両方の側溝を掘るのが新型機の動作試験なのである。
それにより作業の精密性や機体の持続力、不具合の有無を探るわけだが――
Sバスタードスカルは問題無くシャベルを使っているものの、不死の怪獣は土を力任せにまき散らしていた。
「機体はいいとして……不死怪物の方は作業が雑だな」
「精密な事はできませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そんな話をしていると、怪獣の骸骨が崩れて消えた。
「……すぐ壊れたな」
「持続時間もたいした事ありませんね」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
「要するに【骸骨の杖】で呼べる魔物がデカくなっただけと」
「まぁ召喚する魔物が巨大になったぶん、パワーアップはしました。文字通りパワーだけは」
難しい顔をするガイと、結晶板にデータを記録するスティーナ。
そこでふとガイに疑問が浮かぶ。
「シロウはもう取り外しできないんだっけ?」
「できますよ。杖としては使えませんので、ただの喋る髑髏になりますが」
スティーナが説明していると、タリンの嬉しそうな声が通信機能を通じて聞こえて来た。
『ヒャッハー! オレ様絶好調ー! ガイィ! 今日からこの村最強の男はオレだ! 媚びろ! へつらえ! 女を用意しろ!』
機体データに問題が無い事を確認し、スティーナは顔をあげてガイを見る。
「仕上がりは上々です。となると、あの男はもう用済みですね。川にでも流しますか?」
だがガイは。
腕組みして何やら考え込んでいた。
「いや……やってもらいたい事ができた」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる