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1章
11 過去を訪ねて 1
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ガイ、ミオン、イム。三人はセイカ領目指して旅に出た。
ケイオス・ウォリアーを運搬する改造ゾウムシを買い取り、Bソードアーミーを一体乗せて村を出発。
と言っても目指す地はそう遠くはない。翌朝には領内には入るし、その日の夜には都に着く事ができるだろう。
特に魔物と遭遇する事もなく、運搬機はセイカ領に入った。
領境界の山を越えて麓が見える辺りで視界に田園が広がる。
「ここがセイカ子爵領だけど……見覚えは?」
「全然。思い出せないわ」
ガイはミオンに訊いてみたが、彼女は少し考えてはみたもののすぐに否定した。
とはいえ領主の娘ならば辺境には馴染みが無いだけかもしれない。
「まぁ領主に会えれば全部わかるだろう」
ガイは運搬機で街道を進み続けた。
――そしてそれから約二週間の後――
ガイ達の乗った運搬機は荒れた山道を進んでいた。道の片側には密林が鬱蒼と茂り、反対側は切り立った崖。その向こうには切り立った険しい山々が連なっている。
ケイト領の最果てとも言える山中を進むうち、小さな商店が前方の道沿いに見えた。
疲れた顔でガイが呟く。
「やっとついたか……」
「色々あったわね……」
相槌をうつミオンにも疲労が濃かった。
彼女はここまでの道中を思い出す。
セイカ領の都も大きく荒れていた。魔王軍の侵攻により大きな痛手を受け、将軍が死守している状態で、領主一家は僻地に避難していたのだ。
その行く先を教えてもらうため、それだけの信用を得るため、ガイはその地を攻めている魔王軍と戦った。
だが教えてもらった田舎村には疫病が流行っていた。
その地の神官に請われ、ガイは近くの山で特別な薬草をイムの助けを借りて探し出した。
そして領主一家はさらに奥地に引っ越した事を知る。
そして向かった奥地は、発掘された古代遺跡から溢れた魔物に襲われていた。
ガイはダンジョンに入り暴走した召喚の魔法陣を破壊した。
そして助けた現地人達に、領主一家がさらに奥地へ引っ越した事を教えてもらった。
「後は迷子探しとか村同士の喧嘩を納めるとか暗黒城がどうとかとか灰色の魔女がどうとか、なんだか色々な事件に巻き込まれたわね……」
いつの間にか口に出していたミオンに、ガイも頷く。
「お使い終わった先でまたお使い、みたいな感じだったな。次の薬局で領主の引っ越し先がわかればいいんだが」
最後に立ち寄った村で教えられた山中の薬師。そこでセイカ子爵一家の行方がわかると言われた。
まぁそれも何回目なのか、ガイははっきり覚えていないが……。
――山中の薬局――
薬の棚が壁一面に並ぶ店内。
そこでガイ達を出迎えた店主は、ガイと歳の変わらない少女だった。
白い看護帽を被ってメガネをかけた学者風の店主は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いらっしゃい。でもすいません、今日はちょっと……」
何か言い淀んでいる店主に、ガイは話を切りだす。
「何か不都合があるなら俺達が手を貸すよ」
「え?」
いきなりの申し出に驚く店主。
今困っているからそれどころじゃないんだ→クエストをこなす→ありがとう、情報を教えよう
この流れをここ二週間で延々と繰り返してきたので、ガイとしては正直もう飽きており、話をさっさと進めたいのである。
そして実際、店主には困っている事があった。
薬の調合には当然材料がいるのだが、素材を集めるのは担当者がやっている。
「彼……モードックがまだ戻らないのです。山の中にいる筈なのですが」
即座に頷くガイ。
「わかった、モードックさんだな。探して来るからその時には俺達の話を聞いてくれ」
「あ、はい」
店主に約束をとりつけ、ガイ達は早足で運搬機に戻った。
店に入ってから二十分と立っていないであろう。
運搬機に乗り込んだ所で、ミオンが「ふう」と溜息をつく。
「世の中色々あるのね。魔王軍のせいで混乱しているからかしら」
「ああ、それでいいと思うぜ」
実の所は魔王軍が無関係な事件もあったが、とりあえずガイは賛同しておいた。
魔王軍に風評被害があってもどうでもいいからだ。
あと考えるのがそろそろ面倒になっていたのかもしれない。
――近くの山中――
密林に入るため、運搬機を降りるガイ達。
三人を先導するのはイムだ。
「あっちだよ」
「サンキュ。さて出てくるのは魔王軍か魔物か……」
油断なく臨戦態勢をとりながら前進するガイ。
ミオンがその後ろから声をかける。
「ヘイゴー連合という事もありえるわ。気を付けてね、ガイ」
この大陸の人類国家には大国が三つあった。
その一つがガイ達のいるケイト帝国なのだが、以前の魔王軍大進行により首都が大打撃を受け、帝王は生死不明。
もう一つがナーラー国であり、ケイトに比肩する大国だった……が、こちらはケイトより先にやはり魔王軍のせいで壊滅している。
最後に残った大国がヘイゴー連合国。人口の大半が獣人であり、今や人類最後の大国だった。
そのヘイゴー帝国がケイトの国境を超えて軍を動かしたという情報が、魔王軍の大進行の直前に流れていたのだ。
ケイト帝国が崩壊し、そこら辺はうやむやになっていたようだが……。
やがてイムがピクリと反応して宙で止まる。
ガイも何物かの気配を感じ、腰の聖剣に手をかけた。
そして見た。密林の木々の間を高々と跳躍する影を。
人の形をしていながら、その頭部は人ではなかった。
ガイは身構える。
「マジで獣人連中か!」
ケイオス・ウォリアーを運搬する改造ゾウムシを買い取り、Bソードアーミーを一体乗せて村を出発。
と言っても目指す地はそう遠くはない。翌朝には領内には入るし、その日の夜には都に着く事ができるだろう。
特に魔物と遭遇する事もなく、運搬機はセイカ領に入った。
領境界の山を越えて麓が見える辺りで視界に田園が広がる。
「ここがセイカ子爵領だけど……見覚えは?」
「全然。思い出せないわ」
ガイはミオンに訊いてみたが、彼女は少し考えてはみたもののすぐに否定した。
とはいえ領主の娘ならば辺境には馴染みが無いだけかもしれない。
「まぁ領主に会えれば全部わかるだろう」
ガイは運搬機で街道を進み続けた。
――そしてそれから約二週間の後――
ガイ達の乗った運搬機は荒れた山道を進んでいた。道の片側には密林が鬱蒼と茂り、反対側は切り立った崖。その向こうには切り立った険しい山々が連なっている。
ケイト領の最果てとも言える山中を進むうち、小さな商店が前方の道沿いに見えた。
疲れた顔でガイが呟く。
「やっとついたか……」
「色々あったわね……」
相槌をうつミオンにも疲労が濃かった。
彼女はここまでの道中を思い出す。
セイカ領の都も大きく荒れていた。魔王軍の侵攻により大きな痛手を受け、将軍が死守している状態で、領主一家は僻地に避難していたのだ。
その行く先を教えてもらうため、それだけの信用を得るため、ガイはその地を攻めている魔王軍と戦った。
だが教えてもらった田舎村には疫病が流行っていた。
その地の神官に請われ、ガイは近くの山で特別な薬草をイムの助けを借りて探し出した。
そして領主一家はさらに奥地に引っ越した事を知る。
そして向かった奥地は、発掘された古代遺跡から溢れた魔物に襲われていた。
ガイはダンジョンに入り暴走した召喚の魔法陣を破壊した。
そして助けた現地人達に、領主一家がさらに奥地へ引っ越した事を教えてもらった。
「後は迷子探しとか村同士の喧嘩を納めるとか暗黒城がどうとかとか灰色の魔女がどうとか、なんだか色々な事件に巻き込まれたわね……」
いつの間にか口に出していたミオンに、ガイも頷く。
「お使い終わった先でまたお使い、みたいな感じだったな。次の薬局で領主の引っ越し先がわかればいいんだが」
最後に立ち寄った村で教えられた山中の薬師。そこでセイカ子爵一家の行方がわかると言われた。
まぁそれも何回目なのか、ガイははっきり覚えていないが……。
――山中の薬局――
薬の棚が壁一面に並ぶ店内。
そこでガイ達を出迎えた店主は、ガイと歳の変わらない少女だった。
白い看護帽を被ってメガネをかけた学者風の店主は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いらっしゃい。でもすいません、今日はちょっと……」
何か言い淀んでいる店主に、ガイは話を切りだす。
「何か不都合があるなら俺達が手を貸すよ」
「え?」
いきなりの申し出に驚く店主。
今困っているからそれどころじゃないんだ→クエストをこなす→ありがとう、情報を教えよう
この流れをここ二週間で延々と繰り返してきたので、ガイとしては正直もう飽きており、話をさっさと進めたいのである。
そして実際、店主には困っている事があった。
薬の調合には当然材料がいるのだが、素材を集めるのは担当者がやっている。
「彼……モードックがまだ戻らないのです。山の中にいる筈なのですが」
即座に頷くガイ。
「わかった、モードックさんだな。探して来るからその時には俺達の話を聞いてくれ」
「あ、はい」
店主に約束をとりつけ、ガイ達は早足で運搬機に戻った。
店に入ってから二十分と立っていないであろう。
運搬機に乗り込んだ所で、ミオンが「ふう」と溜息をつく。
「世の中色々あるのね。魔王軍のせいで混乱しているからかしら」
「ああ、それでいいと思うぜ」
実の所は魔王軍が無関係な事件もあったが、とりあえずガイは賛同しておいた。
魔王軍に風評被害があってもどうでもいいからだ。
あと考えるのがそろそろ面倒になっていたのかもしれない。
――近くの山中――
密林に入るため、運搬機を降りるガイ達。
三人を先導するのはイムだ。
「あっちだよ」
「サンキュ。さて出てくるのは魔王軍か魔物か……」
油断なく臨戦態勢をとりながら前進するガイ。
ミオンがその後ろから声をかける。
「ヘイゴー連合という事もありえるわ。気を付けてね、ガイ」
この大陸の人類国家には大国が三つあった。
その一つがガイ達のいるケイト帝国なのだが、以前の魔王軍大進行により首都が大打撃を受け、帝王は生死不明。
もう一つがナーラー国であり、ケイトに比肩する大国だった……が、こちらはケイトより先にやはり魔王軍のせいで壊滅している。
最後に残った大国がヘイゴー連合国。人口の大半が獣人であり、今や人類最後の大国だった。
そのヘイゴー帝国がケイトの国境を超えて軍を動かしたという情報が、魔王軍の大進行の直前に流れていたのだ。
ケイト帝国が崩壊し、そこら辺はうやむやになっていたようだが……。
やがてイムがピクリと反応して宙で止まる。
ガイも何物かの気配を感じ、腰の聖剣に手をかけた。
そして見た。密林の木々の間を高々と跳躍する影を。
人の形をしていながら、その頭部は人ではなかった。
ガイは身構える。
「マジで獣人連中か!」
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