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1章
9 来訪者達 6
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――その日の夜――
今のカサカ村には回復魔法の使い手が3人いる。村の司祭、尼僧のディア、ガイの元パーティメンバー・リリだ。
だから魔王軍を撃退した後、ガイも治療を受ける事はできた。しかし何十人もケガ人がいるとなれば、一人一人を完治させる事はできない。回復アイテムは沢山あるが、今や村の売り物で、必要以上には使えない。
というわけで、ガイは小さな傷をあちこちに残したまま帰宅する事になった。
夕餉の支度をしながら出迎えたミオンは少なからず驚いた。
「今回は随分苦戦したのね」
「その分、成果もあったさ。聖剣の使い方がわかった」
そう言うとガイは手に握った木刀を見る。
(まぁまだ能力がありそうだけどな……)
それは直感によるもので、根拠は無いが。
――数時間後――
風呂と夕食をすませ、包帯を巻いて着替えたガイ。
テーブルについてミオンに声をかける。
「ミオンのいた街も教えてもらえる事になった。行ってみよう」
「えっ!?」
食器を洗い終えたばかりのミオンは驚いて目を丸くした……が、すぐに領主カーチナガ子爵からの情報だと思い至る。
動揺しつつも頷いた。
「そ、そう……まぁミオン違いという事も、あるかもしれないけど、ね」
「それをはっきりさせるためにもだ」
ガイの口調は強く、意思と圧が篭っていた。
しばしの沈黙。
やがてミオンがくすりと笑う。
「この生活も結構楽しくはあったわ。ちょっぴり名残惜しい気もするかな」
そう言うとガイの側に来て肩にしなだれかかった。
「ね? あ・な・た」
いつもならガイは照れながらも恥ずかしがって焦り、それをミオンが楽しんで笑う所だ。
が……
ガイはゆっくりと優しく、けれどしっかりと、ミオンを己の体から離した。
「!?」
いつにない反応にミオンは驚く。
一方、ガイはテーブルに視線を落とし、目を合わそうとしない。
「そう……」
ミオンは沈んだ声でそう呟くと、静かに自分の部屋へ戻った。
それを横目で見送るガイは、再びテーブルへ視線を落とすと……ぐっと奥歯を噛みしめた。
(未練がましいぞ、仕事でやってる偽装夫婦だろ。いつまでも鼻の下のばしてんじゃねぇよ、ガイ!)
そんなガイにイムがふわふわと飛んできて、肩に停まった。
心配してガイの顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「もうじきミオンは実家に帰るかも、て事だ」
ぶっきらぼうにガイが言うと、イムは一瞬驚いた後、目に見えて落ち込んだ。
「どこか行っちゃうの? やだよ……」
ガイが視線をあげた。
妖精の少女に――どこか陰のある――微笑みを向ける。
「我儘言うな。俺は……一緒にいるから」
今のカサカ村には回復魔法の使い手が3人いる。村の司祭、尼僧のディア、ガイの元パーティメンバー・リリだ。
だから魔王軍を撃退した後、ガイも治療を受ける事はできた。しかし何十人もケガ人がいるとなれば、一人一人を完治させる事はできない。回復アイテムは沢山あるが、今や村の売り物で、必要以上には使えない。
というわけで、ガイは小さな傷をあちこちに残したまま帰宅する事になった。
夕餉の支度をしながら出迎えたミオンは少なからず驚いた。
「今回は随分苦戦したのね」
「その分、成果もあったさ。聖剣の使い方がわかった」
そう言うとガイは手に握った木刀を見る。
(まぁまだ能力がありそうだけどな……)
それは直感によるもので、根拠は無いが。
――数時間後――
風呂と夕食をすませ、包帯を巻いて着替えたガイ。
テーブルについてミオンに声をかける。
「ミオンのいた街も教えてもらえる事になった。行ってみよう」
「えっ!?」
食器を洗い終えたばかりのミオンは驚いて目を丸くした……が、すぐに領主カーチナガ子爵からの情報だと思い至る。
動揺しつつも頷いた。
「そ、そう……まぁミオン違いという事も、あるかもしれないけど、ね」
「それをはっきりさせるためにもだ」
ガイの口調は強く、意思と圧が篭っていた。
しばしの沈黙。
やがてミオンがくすりと笑う。
「この生活も結構楽しくはあったわ。ちょっぴり名残惜しい気もするかな」
そう言うとガイの側に来て肩にしなだれかかった。
「ね? あ・な・た」
いつもならガイは照れながらも恥ずかしがって焦り、それをミオンが楽しんで笑う所だ。
が……
ガイはゆっくりと優しく、けれどしっかりと、ミオンを己の体から離した。
「!?」
いつにない反応にミオンは驚く。
一方、ガイはテーブルに視線を落とし、目を合わそうとしない。
「そう……」
ミオンは沈んだ声でそう呟くと、静かに自分の部屋へ戻った。
それを横目で見送るガイは、再びテーブルへ視線を落とすと……ぐっと奥歯を噛みしめた。
(未練がましいぞ、仕事でやってる偽装夫婦だろ。いつまでも鼻の下のばしてんじゃねぇよ、ガイ!)
そんなガイにイムがふわふわと飛んできて、肩に停まった。
心配してガイの顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「もうじきミオンは実家に帰るかも、て事だ」
ぶっきらぼうにガイが言うと、イムは一瞬驚いた後、目に見えて落ち込んだ。
「どこか行っちゃうの? やだよ……」
ガイが視線をあげた。
妖精の少女に――どこか陰のある――微笑みを向ける。
「我儘言うな。俺は……一緒にいるから」
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