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1章
8 山中の死闘 4
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大急ぎで隠し畑から飛び出すガイ達村の衆。
藪の中から飛び出した所で、山の中を登ってくる一団と対峙した。
先頭にいる男が「ククク……」と笑う。
「久しぶりだな、ガイ!」
「ついに来たかよ」
ガイは顔を顰めた。
相手の男は黒いマントで体を覆った、元パーティーリーダーのタリンだった。
その後ろに続くのは武装したゴブリンやオーク。鎧の紋章は……魔王軍。
そしてタリンのすぐ後ろには、ディアンドルタイプの服を着た町娘のような女。しかしこれまで何度も対面してきた魔王軍の女幹部・親衛隊のマスターキメラ。
タリンはにやにやと見下すような視線を送る。
「言っておくが、俺は以前の俺じゃねぇ。魔王軍の精鋭、お前への刺客よ。お前を倒せば望みの褒美を与えようと約束されたんでなぁ!」」
「なっ!……そこまで堕ちたか!」
歯ぎしりするガイ。
今までも魔王軍に従いガイを襲ってきた人間はいた。
だが彼らは自由にする事を褒美として約束された捕虜達であり、嫌々従っていた者達である。褒美に目がくらみ喜んで首を狙いに来る者など、このタリンが初めてだ。
タリンの後ろにいるマスターキメラが呟く。
「こいつの乗り気は私にも意外だ……」
魔王軍としても、ここまでやる気を出すとは思っていなかったらしい。
だがタリンははつらつと実に元気に叫ぶ。
「ガイ! 俺に倒されろ! そして俺は褒美として、魔王軍の幹部・マスターキメラ……本名レレン・21歳を次の俺のオンナにするからよお!」
「えぇー!?」
ガイは驚いた……が、声をあげたのは彼ではない。他ならぬマスターキメラ自身だった。
自分自身を報酬として要求されるとは、彼女は思ってもいなかったらしい。
しかしタリンは実に嬉しそうに語る。
「なにせ望みの褒美だからな。いっぺん悪の女幹部を、ワイングラスちゃぷちゃぷさせながら豪華な椅子に座って侍らせてみたかった。確かこういう女は後ろが弱い。その事もやり方も漫画で予習済みだ。イメージトレーニングは完璧だぜぇ!」
「ガイ! こいつを殺せ!」
焦って怒鳴る、本名と年齢まで暴露されたマスターキメラ。
そんな彼女を一瞥もせず、ガイはただ悲しげに呟いた。
「タリン……意思の疎通も打ち合わせも、相変わらず全くできないんだな……」
だがそこへ横手から声がかかる。
「けどタリン。今のガイにどうやって勝つつもり? 珠紋石の連打で負けるよね」
そう言ったのは元パーティーメンバーの一人、女魔術師のララ。
その横には女神官のリリと重戦士のウスラもいる。
彼らも元敗残兵として開墾に参加させられていたのだ。
だがタリンは余裕を見せて笑う。
「ヘッ、舐めるなよ。今の俺の力がわかんねぇか?」
タリンの全身から、にわかに薄ぼんやりとエネルギーが立ち昇った。
「師匠、あれは?」
ガイの後ろにいた弟子のスティーナが不穏な物を感じて訊いて来る。
ガイは……冷や汗を額に流していた。
「異界流……結構なレベルだ」
「え? 本当?」「そうなの?」「ほうほう」
驚愕する元パーティーメンバーの面々。
召喚された者達が発揮する内的パワー・異界流。全ての能力を底上げするそのパワーを、インタセクシル現地人のタリンは持っていなかった筈である。
疑いの眼差しでタリンを見ながら、スティーナはランドセルから片眼鏡を取り出す。
「師匠。ここに【ステータスカウンター】があります。これで計測してみます」
彼女はそれを通してタリンを見た。
そのアイテムは敵の強さや能力を計測する機能があるのだが……
「むむむ……異界流4レベル? 確かに聖勇士級」
「そんなバカな! 一体どうやって?」
驚くガイ。
タリンは実に嬉しそうに大声で語った。
「それはなぁ! 魔王軍から貰った邪悪なスーパー装備があるからだ!」
「邪悪ってわかってもらっちゃうんだ……」
ララが無表情で呟いたが、それには一切かまわずタリンはマントを脱いだ。
「これが俺を最強にする最強の鎧! 【毘沙門鎧】だ!」
それは赤い武者鎧だった。
胸部装甲は鬼面を模しており、牙と赤い目がついている。
その目が光る。唸る。音が出る……!
タリンは実に嬉しそうに、はしゃぎながら叫んだ。
「今の俺は強い! あのシロウよりもな!」
『掌返しやがって……』
スティーナの傍で手足の生えた杖、元聖勇士・シロウの髑髏が唸るが、そんな事は全く気にせずタリンは叫んだ。
「見せてやるぜ! 今の俺の強さを!」
藪の中から飛び出した所で、山の中を登ってくる一団と対峙した。
先頭にいる男が「ククク……」と笑う。
「久しぶりだな、ガイ!」
「ついに来たかよ」
ガイは顔を顰めた。
相手の男は黒いマントで体を覆った、元パーティーリーダーのタリンだった。
その後ろに続くのは武装したゴブリンやオーク。鎧の紋章は……魔王軍。
そしてタリンのすぐ後ろには、ディアンドルタイプの服を着た町娘のような女。しかしこれまで何度も対面してきた魔王軍の女幹部・親衛隊のマスターキメラ。
タリンはにやにやと見下すような視線を送る。
「言っておくが、俺は以前の俺じゃねぇ。魔王軍の精鋭、お前への刺客よ。お前を倒せば望みの褒美を与えようと約束されたんでなぁ!」」
「なっ!……そこまで堕ちたか!」
歯ぎしりするガイ。
今までも魔王軍に従いガイを襲ってきた人間はいた。
だが彼らは自由にする事を褒美として約束された捕虜達であり、嫌々従っていた者達である。褒美に目がくらみ喜んで首を狙いに来る者など、このタリンが初めてだ。
タリンの後ろにいるマスターキメラが呟く。
「こいつの乗り気は私にも意外だ……」
魔王軍としても、ここまでやる気を出すとは思っていなかったらしい。
だがタリンははつらつと実に元気に叫ぶ。
「ガイ! 俺に倒されろ! そして俺は褒美として、魔王軍の幹部・マスターキメラ……本名レレン・21歳を次の俺のオンナにするからよお!」
「えぇー!?」
ガイは驚いた……が、声をあげたのは彼ではない。他ならぬマスターキメラ自身だった。
自分自身を報酬として要求されるとは、彼女は思ってもいなかったらしい。
しかしタリンは実に嬉しそうに語る。
「なにせ望みの褒美だからな。いっぺん悪の女幹部を、ワイングラスちゃぷちゃぷさせながら豪華な椅子に座って侍らせてみたかった。確かこういう女は後ろが弱い。その事もやり方も漫画で予習済みだ。イメージトレーニングは完璧だぜぇ!」
「ガイ! こいつを殺せ!」
焦って怒鳴る、本名と年齢まで暴露されたマスターキメラ。
そんな彼女を一瞥もせず、ガイはただ悲しげに呟いた。
「タリン……意思の疎通も打ち合わせも、相変わらず全くできないんだな……」
だがそこへ横手から声がかかる。
「けどタリン。今のガイにどうやって勝つつもり? 珠紋石の連打で負けるよね」
そう言ったのは元パーティーメンバーの一人、女魔術師のララ。
その横には女神官のリリと重戦士のウスラもいる。
彼らも元敗残兵として開墾に参加させられていたのだ。
だがタリンは余裕を見せて笑う。
「ヘッ、舐めるなよ。今の俺の力がわかんねぇか?」
タリンの全身から、にわかに薄ぼんやりとエネルギーが立ち昇った。
「師匠、あれは?」
ガイの後ろにいた弟子のスティーナが不穏な物を感じて訊いて来る。
ガイは……冷や汗を額に流していた。
「異界流……結構なレベルだ」
「え? 本当?」「そうなの?」「ほうほう」
驚愕する元パーティーメンバーの面々。
召喚された者達が発揮する内的パワー・異界流。全ての能力を底上げするそのパワーを、インタセクシル現地人のタリンは持っていなかった筈である。
疑いの眼差しでタリンを見ながら、スティーナはランドセルから片眼鏡を取り出す。
「師匠。ここに【ステータスカウンター】があります。これで計測してみます」
彼女はそれを通してタリンを見た。
そのアイテムは敵の強さや能力を計測する機能があるのだが……
「むむむ……異界流4レベル? 確かに聖勇士級」
「そんなバカな! 一体どうやって?」
驚くガイ。
タリンは実に嬉しそうに大声で語った。
「それはなぁ! 魔王軍から貰った邪悪なスーパー装備があるからだ!」
「邪悪ってわかってもらっちゃうんだ……」
ララが無表情で呟いたが、それには一切かまわずタリンはマントを脱いだ。
「これが俺を最強にする最強の鎧! 【毘沙門鎧】だ!」
それは赤い武者鎧だった。
胸部装甲は鬼面を模しており、牙と赤い目がついている。
その目が光る。唸る。音が出る……!
タリンは実に嬉しそうに、はしゃぎながら叫んだ。
「今の俺は強い! あのシロウよりもな!」
『掌返しやがって……』
スティーナの傍で手足の生えた杖、元聖勇士・シロウの髑髏が唸るが、そんな事は全く気にせずタリンは叫んだ。
「見せてやるぜ! 今の俺の強さを!」
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