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1章
7 冥界の刺客 7
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鍛冶屋の爺さんイアンの後ろから現れた人物。
それは初めて見る女の子だった。
歳は14,5歳程度か。ガイより下だろう。
長い金髪に青い瞳のなかなかに可愛い少女で、袖なしのジャケットにチェック柄のスカート、背には背負い鞄という井出達である。
口をきゅっと結び、利発そうな目でガイを伺っていた。
「その子は一体?」
「儂の孫です。ガイ殿の事を話すと興味を示しましてな」
訊ねるガイにイアンはそう答え、少女に目で促す。
少女は礼儀正しく頭を下げた。
「スティーナ=リビングストンです。魔法工芸品の作成を勉強しています。その一環で珠紋石作成の修業もしてみようかと」
その言葉に関心するガイは一つ質問してみる。
「今の腕前はいかほど?」
「実技でお見せしましょう」
スティーナはそう言うと、ガイが持つ杖――シロウの髑髏が材料となった【骸骨の杖】に手を伸ばした。
何を見せてくれるのか興味があったので、ガイはそれを渡してみる。
スティーナはランドセルから素材を取り出し、その場で杖を加工し始めた。
ほんの十分ほどで改造を終え、彼女は杖を手放す。
杖はギクシャクと立って歩き、両手を振り上げた。
『おお? 動けるぞ』
驚くシロウ|(の髑髏)。
スティーナは意思ある杖に細い棒の手足を取り付け、自律行動できるようにしたのである……!
それが何の役に立つのかはわからないが、技術にガイは驚いた。
「なんだか凄いな。俺から何か習う必要無いんじゃ……」
しかしスティーナは頭をふる。
「珠紋石は未収得ですので。この度ぜひ弟子入りさせていただこうと。炊事と掃除と洗濯は一応できます」
言葉の意味を考えるガイ。恐る恐る訊いてみる。
「……住み込み弟子?」
「はい。違うんですか?」
当然のように言い、むしろスティーナが訊いてきた。
「ガイ殿は結婚しておられるぞ」
「え?」
イアンに教えられて驚くスティーナ。何か行き違いがあったらしい。
困ってガイは頭を掻く。
「うん、家事全般不足はない。むしろちょっとその……住む所は別にしてもらわないと困るというか」
気まずく視線を交わす三人。
そこへ農夫のタゴサックが声をかけてくる。
「ガイ殿。奥さんが来られましたぞ」
「え? なんで?」
突然の事に驚くガイ。
そこへ風呂敷包みを手にさげ、ミオンがにこにこと笑顔で現れた。
「お弁当つくったから持ってきたの。イムのぶんもね」
「やったぁ」
イムがガイの肩で満面の笑みを見せる。
ミオンはガイの手をとった。
「一緒に食べようと思って私のぶんも作って来たわ。おかずは春巻きよ。私の作る物は何でも美味しいって褒めてくれたけど、特にこれは上手だと言ってくれたし」
「そりゃ言ったけど! 今ここで言わんでも……」
実に嬉しそうに言うミオンの前で、狼狽えて渡りを見渡すガイ。
難民も敗残兵も村人も締め上げられている村長も、気を利かせて明後日の方を向いてくれていた。
気遣いは常に美しい。
しかし例外が二組。
嫉妬を籠めた険しい目を向ける、ガイの元パーティメンバー・ララ、リリ、ウスラの三人。
そして……目を輝かせて見つめるスティーナだった。
その視線に気づき、ミオンはガイに尋ねる。
「この子は?」
かくかくしかじか、と説明するガイ。
話を聞いたミオンは「ふーん」と呟き、顎に指を添えて考える。
「けれど住み込みはちょっと困るかな……」
「あ、はい、二人のお邪魔はいたしません! 訪問は日中のみです。食事も自分でお弁当を用意します。お訪ねした時は玄関で音を確認して最中には入りません!」
「何の最中を想定しているんだよ!?」
目を輝かせてまくしたてるスティーナに思わず訊くガイ。
しかしミオンは感心したようだ。
「あらら、よくできた子ね。これならお弟子さんにして色々教えてあげてもいいんじゃないかしら」
「ありがとうございます。さっそくですが、お二人の馴れ初めなど教えていただいていいでしょうか? 仲を深めていく過程なども後学のためにぜひ……」
「どこに興味もって何を教わろうとしてんだよ!?」
目を輝かせてまくしたてるスティーナに思わず訊くガイ。
「とにかくイアン爺さんの家から通いで来てくれ。な?」
しばらく無駄に騒いでから、ガイは無理矢理話をまとめる事にした。
スティーナははつらつと頷いた。
「了解です師匠! 奥様からも色々学ばせていただきます」
こうしてカサカ村にアイテム作成の職人が一人増える事となった。
(ガイの弟子・スティーナ=リビングストン)
それは初めて見る女の子だった。
歳は14,5歳程度か。ガイより下だろう。
長い金髪に青い瞳のなかなかに可愛い少女で、袖なしのジャケットにチェック柄のスカート、背には背負い鞄という井出達である。
口をきゅっと結び、利発そうな目でガイを伺っていた。
「その子は一体?」
「儂の孫です。ガイ殿の事を話すと興味を示しましてな」
訊ねるガイにイアンはそう答え、少女に目で促す。
少女は礼儀正しく頭を下げた。
「スティーナ=リビングストンです。魔法工芸品の作成を勉強しています。その一環で珠紋石作成の修業もしてみようかと」
その言葉に関心するガイは一つ質問してみる。
「今の腕前はいかほど?」
「実技でお見せしましょう」
スティーナはそう言うと、ガイが持つ杖――シロウの髑髏が材料となった【骸骨の杖】に手を伸ばした。
何を見せてくれるのか興味があったので、ガイはそれを渡してみる。
スティーナはランドセルから素材を取り出し、その場で杖を加工し始めた。
ほんの十分ほどで改造を終え、彼女は杖を手放す。
杖はギクシャクと立って歩き、両手を振り上げた。
『おお? 動けるぞ』
驚くシロウ|(の髑髏)。
スティーナは意思ある杖に細い棒の手足を取り付け、自律行動できるようにしたのである……!
それが何の役に立つのかはわからないが、技術にガイは驚いた。
「なんだか凄いな。俺から何か習う必要無いんじゃ……」
しかしスティーナは頭をふる。
「珠紋石は未収得ですので。この度ぜひ弟子入りさせていただこうと。炊事と掃除と洗濯は一応できます」
言葉の意味を考えるガイ。恐る恐る訊いてみる。
「……住み込み弟子?」
「はい。違うんですか?」
当然のように言い、むしろスティーナが訊いてきた。
「ガイ殿は結婚しておられるぞ」
「え?」
イアンに教えられて驚くスティーナ。何か行き違いがあったらしい。
困ってガイは頭を掻く。
「うん、家事全般不足はない。むしろちょっとその……住む所は別にしてもらわないと困るというか」
気まずく視線を交わす三人。
そこへ農夫のタゴサックが声をかけてくる。
「ガイ殿。奥さんが来られましたぞ」
「え? なんで?」
突然の事に驚くガイ。
そこへ風呂敷包みを手にさげ、ミオンがにこにこと笑顔で現れた。
「お弁当つくったから持ってきたの。イムのぶんもね」
「やったぁ」
イムがガイの肩で満面の笑みを見せる。
ミオンはガイの手をとった。
「一緒に食べようと思って私のぶんも作って来たわ。おかずは春巻きよ。私の作る物は何でも美味しいって褒めてくれたけど、特にこれは上手だと言ってくれたし」
「そりゃ言ったけど! 今ここで言わんでも……」
実に嬉しそうに言うミオンの前で、狼狽えて渡りを見渡すガイ。
難民も敗残兵も村人も締め上げられている村長も、気を利かせて明後日の方を向いてくれていた。
気遣いは常に美しい。
しかし例外が二組。
嫉妬を籠めた険しい目を向ける、ガイの元パーティメンバー・ララ、リリ、ウスラの三人。
そして……目を輝かせて見つめるスティーナだった。
その視線に気づき、ミオンはガイに尋ねる。
「この子は?」
かくかくしかじか、と説明するガイ。
話を聞いたミオンは「ふーん」と呟き、顎に指を添えて考える。
「けれど住み込みはちょっと困るかな……」
「あ、はい、二人のお邪魔はいたしません! 訪問は日中のみです。食事も自分でお弁当を用意します。お訪ねした時は玄関で音を確認して最中には入りません!」
「何の最中を想定しているんだよ!?」
目を輝かせてまくしたてるスティーナに思わず訊くガイ。
しかしミオンは感心したようだ。
「あらら、よくできた子ね。これならお弟子さんにして色々教えてあげてもいいんじゃないかしら」
「ありがとうございます。さっそくですが、お二人の馴れ初めなど教えていただいていいでしょうか? 仲を深めていく過程なども後学のためにぜひ……」
「どこに興味もって何を教わろうとしてんだよ!?」
目を輝かせてまくしたてるスティーナに思わず訊くガイ。
「とにかくイアン爺さんの家から通いで来てくれ。な?」
しばらく無駄に騒いでから、ガイは無理矢理話をまとめる事にした。
スティーナははつらつと頷いた。
「了解です師匠! 奥様からも色々学ばせていただきます」
こうしてカサカ村にアイテム作成の職人が一人増える事となった。
(ガイの弟子・スティーナ=リビングストン)
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