32 / 147
1章
7 冥界の刺客 4
しおりを挟む
迫る敵機の足音を聞きながら村の工場に駆け込むガイ。
鍛冶屋のイアン爺さんが、既に四機のケイオス・ウォリアー全てを発進できるよう準備してくれていた。
「ガイ殿! どれで出撃するんじゃ?」
「……こいつだ」
ガイは縄梯子を掴んで機体に乗り込む。
「待ってぇ」
その肩にイムが舞い降りた。そしてハッチが閉まり、機体に火が入る。
――工場の外――
魔王軍魔怪大隊親衛隊マスターボーン……彼は村に乗り込んできた自機へ駆け寄った。くすんだ銀色の鎧を纏い、三角フードの中に髑髏の顔を持つ禍々しい人造巨人へ。
彼の機体は主目の前に来て膝をつく。ハッチが開くと、操縦席にいるのは一体のゾンビ。機体を遠隔召喚するため、マスターボーンは操縦用のゾンビを配置していたのである。
操縦席に乗り込んだマスターボーンは、用済みになったゾンビを外へ蹴り出した。
「ふん、私が本気を出せば村一つなど半日も持たんわ」
そう言うとハッチを閉める。
その時、工場の外にガイの機体が出てきた。重装甲の砲撃機、ダンゴムシの頭を持つBカノンピルバグが。
『ふん、たかが青銅級機で……なにィ!?』
嘲り笑うマスターボーンが途中から驚愕した。
ガイ機の目の前に渦が生じたかと思うと、そこから花吹雪が舞ったのだ。
それが収まった時、ダンゴムシ頭の砲撃機は増加された装甲と大きな肩当を装備し、姿を一変させていた。
初めて見る現象を前に何度も瞬きしたものの、マスターボーンは気を取り直して叫ぶ。
『ええい、たかが増設パーツをつけたぐらいで! この白銀級機Sネクロリッチによって増幅された我が魔術に太刀打ちできるものか』
彼の機体が杖を高々と掲げる。その先端が妖しく緑色に輝いた。
機体の周囲で地面がぼこぼこと盛り上がり、地割れが生じる。そこから現れる巨大な影。それも二体。
骸骨である。家屋より大きな魔物の骸骨。
その形を見てガイが思わず叫んだ。
「あれは今まで倒した怪獣!?」
『そうだ。我が魔術は巨大サイズの魔物さえ容易く生ける屍として操る事ができるのだ』
自信満々のマスターボーン。
彼はガイに敗れた怪獣達を不死の魔物として再生したのである。
が、ちょっと顔を顰めた。
『……しかしスケルトンになるとは?』
巨大なゾンビが出てくる筈だったのだが……。
その答えはガイから返ってきた。
「肉とか臓器は全部素材として回収したからな。一部に骨も含んで」
なるほど、スケルトンになるわけである。言われてよく見れば骸骨のあちこちが欠けている。
魔物の爪や歯、角などは武具や魔法道具の素材としてはポピュラーな物なのだ。
ちょっと苛つくマスターボーン。
『クッ、無駄のない奴! だが半壊スケルトンでも一時の攻撃手段としては成立する!』
屍の保存状況も不死の魔物の作成には結構影響する。しかしガイ機を撃破するまで動けばいいので、マスターボーンはいっそ最初から全力での攻撃を命じる事にした。
勝利とともに骸骨怪獣どもが砕け散ろうと、どうせこの村にはガイ以外に抵抗できる奴などいないのだ。
実際、攻撃手段としては有効だった。
ガイの乗っている機体——パンドラピルバグは敏捷性に劣る事もあり、二体の骸骨怪獣どもを避けて動く事はできない。逆に掴みかかられ、激しい殴打を受ける事となった。
しかも単純なパワーは生前以上だ。
打ちのめされるガイ機を見て高らかに笑うマスターボーン。
『ふはは、どうだ! そいつらの相手をしていてはこちらに対処できまい! だが私は何度でもそいつらを操って蘇らせ、貴様を攻撃させる事ができるのだ! 私は無敵だぁ~』
そう……彼の言う通り、もし骸骨怪獣どもが倒されても再度復活させるだけだ。機体によって増幅された彼の魔力はそれを可能にしている。彼のMPが尽きるまで、不死の怪獣どもは文字通りの不死と言えよう。
舌打ちするガイ。
「多勢に無勢とはいい趣味してやがる」
『負け惜しみは聞こえんな~』
とても嬉しそうに言い返すマスターボーン。ふざけて耳に手を当て、よく聞こうというポーズまで取る。
直後、彼の機体が強烈な光線に撃ち抜かれた!
『うぎゃあー!』
マスターボーン、吹っ飛ぶ機体の中で絶叫!
怪獣の殴打を盾の陰でしのぎつつ、ガイが操縦席で呟く。
「魔術師だから離れての撃ちあいを仕掛けてくると思ったぜ」
ガイが長射程の機体を選んだ理由。それは敵の得意レンジを予想し、それに合わせるためだったのだ。
後衛の魔術師を射撃武器で狙うのは、この世界に古くからある定石の一つである。
だがしかし。
煙を上げる機体を立ち上がらせつつ、マスターボーンは笑っていた。
『く、く、く……それで勝てるつもりか?』
その言葉とともに……高熱で穿たれたSネクロリッチの装甲が、徐々にではあるが塞がってゆくではないか!
「再生能力!?」
驚くガイにマスターボーンが勝ち誇った。
『理解したか? 魔王軍親衛隊の強大さを!』
魔術師系クラスが虚弱であろうと、それの乗る機体は装甲・耐久性に優れる高性能機だった。
鍛冶屋のイアン爺さんが、既に四機のケイオス・ウォリアー全てを発進できるよう準備してくれていた。
「ガイ殿! どれで出撃するんじゃ?」
「……こいつだ」
ガイは縄梯子を掴んで機体に乗り込む。
「待ってぇ」
その肩にイムが舞い降りた。そしてハッチが閉まり、機体に火が入る。
――工場の外――
魔王軍魔怪大隊親衛隊マスターボーン……彼は村に乗り込んできた自機へ駆け寄った。くすんだ銀色の鎧を纏い、三角フードの中に髑髏の顔を持つ禍々しい人造巨人へ。
彼の機体は主目の前に来て膝をつく。ハッチが開くと、操縦席にいるのは一体のゾンビ。機体を遠隔召喚するため、マスターボーンは操縦用のゾンビを配置していたのである。
操縦席に乗り込んだマスターボーンは、用済みになったゾンビを外へ蹴り出した。
「ふん、私が本気を出せば村一つなど半日も持たんわ」
そう言うとハッチを閉める。
その時、工場の外にガイの機体が出てきた。重装甲の砲撃機、ダンゴムシの頭を持つBカノンピルバグが。
『ふん、たかが青銅級機で……なにィ!?』
嘲り笑うマスターボーンが途中から驚愕した。
ガイ機の目の前に渦が生じたかと思うと、そこから花吹雪が舞ったのだ。
それが収まった時、ダンゴムシ頭の砲撃機は増加された装甲と大きな肩当を装備し、姿を一変させていた。
初めて見る現象を前に何度も瞬きしたものの、マスターボーンは気を取り直して叫ぶ。
『ええい、たかが増設パーツをつけたぐらいで! この白銀級機Sネクロリッチによって増幅された我が魔術に太刀打ちできるものか』
彼の機体が杖を高々と掲げる。その先端が妖しく緑色に輝いた。
機体の周囲で地面がぼこぼこと盛り上がり、地割れが生じる。そこから現れる巨大な影。それも二体。
骸骨である。家屋より大きな魔物の骸骨。
その形を見てガイが思わず叫んだ。
「あれは今まで倒した怪獣!?」
『そうだ。我が魔術は巨大サイズの魔物さえ容易く生ける屍として操る事ができるのだ』
自信満々のマスターボーン。
彼はガイに敗れた怪獣達を不死の魔物として再生したのである。
が、ちょっと顔を顰めた。
『……しかしスケルトンになるとは?』
巨大なゾンビが出てくる筈だったのだが……。
その答えはガイから返ってきた。
「肉とか臓器は全部素材として回収したからな。一部に骨も含んで」
なるほど、スケルトンになるわけである。言われてよく見れば骸骨のあちこちが欠けている。
魔物の爪や歯、角などは武具や魔法道具の素材としてはポピュラーな物なのだ。
ちょっと苛つくマスターボーン。
『クッ、無駄のない奴! だが半壊スケルトンでも一時の攻撃手段としては成立する!』
屍の保存状況も不死の魔物の作成には結構影響する。しかしガイ機を撃破するまで動けばいいので、マスターボーンはいっそ最初から全力での攻撃を命じる事にした。
勝利とともに骸骨怪獣どもが砕け散ろうと、どうせこの村にはガイ以外に抵抗できる奴などいないのだ。
実際、攻撃手段としては有効だった。
ガイの乗っている機体——パンドラピルバグは敏捷性に劣る事もあり、二体の骸骨怪獣どもを避けて動く事はできない。逆に掴みかかられ、激しい殴打を受ける事となった。
しかも単純なパワーは生前以上だ。
打ちのめされるガイ機を見て高らかに笑うマスターボーン。
『ふはは、どうだ! そいつらの相手をしていてはこちらに対処できまい! だが私は何度でもそいつらを操って蘇らせ、貴様を攻撃させる事ができるのだ! 私は無敵だぁ~』
そう……彼の言う通り、もし骸骨怪獣どもが倒されても再度復活させるだけだ。機体によって増幅された彼の魔力はそれを可能にしている。彼のMPが尽きるまで、不死の怪獣どもは文字通りの不死と言えよう。
舌打ちするガイ。
「多勢に無勢とはいい趣味してやがる」
『負け惜しみは聞こえんな~』
とても嬉しそうに言い返すマスターボーン。ふざけて耳に手を当て、よく聞こうというポーズまで取る。
直後、彼の機体が強烈な光線に撃ち抜かれた!
『うぎゃあー!』
マスターボーン、吹っ飛ぶ機体の中で絶叫!
怪獣の殴打を盾の陰でしのぎつつ、ガイが操縦席で呟く。
「魔術師だから離れての撃ちあいを仕掛けてくると思ったぜ」
ガイが長射程の機体を選んだ理由。それは敵の得意レンジを予想し、それに合わせるためだったのだ。
後衛の魔術師を射撃武器で狙うのは、この世界に古くからある定石の一つである。
だがしかし。
煙を上げる機体を立ち上がらせつつ、マスターボーンは笑っていた。
『く、く、く……それで勝てるつもりか?』
その言葉とともに……高熱で穿たれたSネクロリッチの装甲が、徐々にではあるが塞がってゆくではないか!
「再生能力!?」
驚くガイにマスターボーンが勝ち誇った。
『理解したか? 魔王軍親衛隊の強大さを!』
魔術師系クラスが虚弱であろうと、それの乗る機体は装甲・耐久性に優れる高性能機だった。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。


最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる