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1章

4 新生活 4

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 渦から黄色い花弁が舞う。
 それが止んで渦が消えた時、ガイの機体は灰茶色と緑の鎧を纏っていた。

 ガイは顔を顰めた。
 鎧は昨日より遥かに軽装で肩当ては小さいし、長く尖った葉が頭部から後ろ首筋へ鬣のように連なっている――地球・南国の酋長の頭飾りのように。
 胸に刻まれたのは連なる黄色く小さい花。
「‥‥昨日と違う?」

モニターに自機の能力値が表示された。


パンドラリザード
ファイティングアビリティ:150
ウェポンズアビリティ:110
スピードアビリティ:150
パワーアビリティ:120
アーマードアビリティ:110


(能力も違う。元になった機体に合わせているってわけか?)
 モニターを見ている間に、怪獣が次の攻撃を仕掛けてくる。
 繰り出された太い腕の鉤爪を、ガイは機体を跳躍させて避けた。
 それを追って敵は炎を吐くが、一瞬早く着地したガイ機は高速で真横へ動いてかわす。

(こいつは速い! これならやれるぞ)
 自機の運動性に感心しながらガイは攻撃に転じた。
 怪獣の横を駆け抜けるようにし、爪を長く伸ばして一閃!
 怪獣の脇腹が裂かれ、苦痛の咆哮と血飛沫が飛んだが、その時にはガイ機は敵の間合いの外にいて血の一滴さえ浴びてはいなかった。

 通信機からマスターキメラの苛立った声が、歯軋りの後に届く。
『な、なんの! ナパームヘッピートルには再生能力もあるのだ!』
 その言葉通り、怪獣の傷はゆっくりとではあるが塞がりつつあった。


(くそっ、大きな威力の武器が必要だ)
 ガイはモニターを操作し武器欄を表示させる。
(あった!)
 最下段に表示された最大威力の武器。しかしデータ欄に注釈が出ており――

【必要ケイオスレベル:3】

「使えねぇー!」
 ガイは頭を抱えた。

 ケイオス・ウォリアーの特殊な武器・強力な武器には、操縦者の異界流ケイオスが一定以上のレベルでないと使えない物もある。
 元々「1」しか無かったガイは、イムとともに見つけたアイテムにより+1はされていたが‥‥
(この装備、本当は聖勇士パラディン用だっていうのか! だったら俺はお呼びじゃ無かったという事かよ)
 悔しさに唇を噛むガイ。

 その目の前で、武器名が点灯した。
 それは「使用可能」を意味する表示だ。

「え!? なんで!?」
 戸惑いながらも画面を切り替えるガイ。
 己のステータスを確認するが‥‥

異界流ケイオスが足りてる!?」
 機体に搭載された測定器の判定によると、今のガイのケイオスレベルは「3」だったのだ。


 しかし考えていられるのはそこまでだった。怪獣が迫り、炎を吐いてきたのだ。

 ガイは機体を跳躍させる。パンドラリザードは炎を避け、敵怪獣の巨体を軽々と跳び越えた。
 敵の背後に着地するや、両腕の爪が剣のように長く鋭く伸びる。
 太い腕を振り回しながら振り向く怪獣。
 リザードも振り向きざまに両腕の爪を突き出した。

 甲殻を刺し貫き、両腕の爪が紙でも破るかのごとく敵の肉体へ食い込む!
 真正面から背後まで貫かれ、怪獣は苦悶に咆哮した。
「こ、ここでぇ!」
 悲鳴のような声で発破をかけるイムに――
「ブレイクインパルス!」
 叫ぶガイ。

 怪獣・ナパームヘッピートルの体が、己の体を貫く爪を起点に、弾けるように粉砕された!
 大量の血飛沫をあげながら後ろへ倒れ込む怪獣。体に大穴を二つも開けられ、一たまりもなく絶命する。


 ブレイクインパルス‥‥パンドラリザード最大の武器。
 視認不可能な高周波の振動を起こす事で分子結合を破壊しながら敵の装甲を破る爪。
 そして振動のボリュームを最大に上げた時、その衝撃で敵機は内部から破壊されるのだ‥‥!


『お‥‥おのれ! 覚えておけ!』
 上ずったマスターキメラの声が通信機から一度だけ届き、静かになった。怪獣が撃破されたので、捨てゼリフだけ残して逃げてしまったのだ。

 イムがガイの肩で「ふう‥‥」と安堵の溜息をつき、へなへなと座り込む。
 ガイはその頭を軽く撫でてやった。
「まぁ‥‥ありがとうな、イム」

 イムはガイを見上げると、くすぐったそうに微笑んだ。
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