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聖母喪失篇
第45話 最高神の降臨
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(何だ…?ガキの雰囲気が…)
シノアが意識を失い、倒れて数秒後、天から眩い光が差し込みシノアへと直撃した。
迅雷が鳴り響いていた空は、嘘のように晴れ渡り、太陽が燦燦と輝いていた。
状況が理解できずにいた団長だったが、シノアの体が地上から離れ、1メートルほど浮いたところで停止したのを見て余計に混乱する。
(どういうことだ?これは何かの魔法なのか?)
すると突然、奇跡は起こった。
昼間にも関わらず、星々がキラキラと輝き、雪が降り始めたのだ。
単なる異常気象で片付けてしまうことは簡単だが、そうもいかない。なぜなら、空に輝いていた美しい星々が、さらに光を強くし地面に落下しはじめたのだ。
そこに衝撃などはないが、無数の光が一直線に落下する様は見ていて圧倒される。
目を覆うほどの光が集まったころ、シノアを中心に大爆発が起こる。しかし、爆風や火花などはなく、ただ音と閃光を発しただけだった。
「クソッ!さっきからなんなんだ!」
次々と起こる怪奇現象に団長が毒づくが、光が治まったことで見えるようになったシノアの姿をその目に捉えると、思わず言葉を失った。
そこにいたのはシノアであって、シノアではない何か。
蒼く光る紋章を宿した瞳以外、形はそのままだが放っている覇気は桁違いであり、人間とは思えないほど神々しい。
シノアの姿をしたそれは、地面に倒れるフィリアをそっと抱きかかえ、頬を撫でる。
すると、完全に活動を停止していたフィリアの心臓が再び鼓動を開始し、意識を取り戻させた。
「…ぅ…あ…」
弱々しい声と共に目を開いたフィリアは、その瞳に映る彼を見て思わず涙を零した。
一瞬でシノアではないことを見破り、久しぶりの再会に感嘆の声を漏らす。
「ク…レア…さ…ま…」
「ふふ…君は相変わらず様付けなのかい?久しぶりだねフィリア」
心底愛おしそうにフィリアの頬を撫でたクレアだったが、表情を悲しげなものに変えると、申し訳なさそうに告げた。
「ごめんね。今の僕の力じゃ、身体の時間を1分前に戻すことしか出来ないんだ。最期の言葉を交わしに来たよ」
クレアの言葉にくすくすと笑うフィリア。
「さい…ご…に…あえ…て…こうえい…です…」
「まるで召使いみたいな言い方じゃないか。半世紀前と何も変わらないね」
それ以上、フィリアに喋らせるのは苦しめると判断したクレアは、静かに瞳を見つめ最期の時を惜しんだ。
二人の間に沈黙が訪れ、クレアがフィリアの頭を優しく撫でると、フィリアは幸せそうに目を細める。
だが、幸せな時間は有限だ。
フィリアの視界が霞み始め、全身から力が抜け始めた。
「ぁ…か…らだ…が…」
「もうか…本当に短い時間だな」
もう握る力すら残されていないフィリアの手は、クレアの方へと伸びる。
途中で力が入らなくなり、重力に従い落ちそうになるが、クレアはその手を握り自分の頬に当てた。
「フィリア、君と過ごした20年間は僕が生きてきた中で間違いなく、最も幸せだった時間だ。今でもあの時、君に不死を与えるべきだったと後悔しているよ」
フィリアはクレアの言葉に大粒の涙を両眼から落とすと静かに目を閉じた。
神に愛された聖母は1世紀に渡る、長くも短い生を終え、今、天に召された。
「おやすみ、フィリア。安らかに」
クレアはフィリアの額に唇を触れさせ、髪をひとなですると、時空間魔法でフィリアの亡骸をその場から消した。
そして、静かに立ち上がると、団長と対峙する。
「さて、存在ごと抹消してあげるよ。人間」
信じ難い現象の連続に面食らっていた団長は、クレアの言葉でようやく状況を飲み込み、その言葉を発した張本人に噛み付く。
「なんだと?貴様、私を誰だと思っている!」
「さぁ、知らないね。名前も何も知らないし、知る気もないな」
全く眼中にないといった様子のクレアに苛立ちを覚えた団長は、怒りを抑え自慢げに名乗る。
「貴様のようなガキに2度も名乗るのは癪だが、まぁいい。私の名はデウス・クレアトール、通称神の剣技と呼ばれる最強の男だ」
団長の言葉にクレアは片眉を上げ、失笑する。
それを見て抑えていた苛立ちを爆発させ怒鳴り出す団長。
「何がおかしい!」
剣をクレアに向け、吠える団長だが、奥の手を全て出し切っており、身体も満身創痍といった状態だ。本人は考えないようにしていたが。
「いや、悪いね。この世界に僕と同じ名前の人間がいたなんて思いもしなかったからね」
「同じ名だと?」
クレアの言葉をこだまのように繰り返し、その内容を訝しむ団長だったが、次の瞬間には恐怖に震えることとなった。
「にしても、ここは汚れているね。少し綺麗にしようか」
その言葉と共に指をひとつ鳴らすとまた、信じ難い事象が起こった。
累々と転がっていた死体たちが光の粒子を発しながら消えていき、血の染みも嘘のようにきれいさっぱりなくなっていったのだ。
壊れていた壁や観客席も修理されており、魔法とすら思えない、まさしく奇跡のような出来事だ。
突然のことに驚いていた団長だったが、更なる衝撃に襲われることになる。
「クレアさまがんばれ~」
「てかげんしてあげて~」
「人間もすこしはがんばれ~」
人で溢れかえっていた観客席には、いつのまにか別の種族で溢れており、クレアの名を呼んでいたのだ。
(なんだ…なせ俺の名を…)
困惑する団長だったが、目の前のシノアのようなものを見た時、それを悟った。
まず、観客席にいる彼らは人間ではない。10歳前後の見た目で、可愛らしい様子だが、羽が生えており、それが人外であることを示していた。
羽が生え、幼い見た目、それだけでこの世界では天使族だと判断できる。
そして、天使族、それもこれほど大勢の天使族が仕える存在とは相当高位の神である証明だ。
「ま、まさか…そんな…」
目の前に立つ存在の正体を確信した時、団長の精神は崩壊する。
その圧倒的な覇気、神々しく輝く青空色の瞳、その瞳に宿るのは創造と慈愛の紋章、それらはすなわち、目の前のシノアのような何かが神、それも最高神の片割れであることを示していた。
「やぁ、初めまして人間。デウス・クレアトールだよ。君たちには創造神と言った方が通じるのかな?」
この世界に最高神が顕現した。
シノアが意識を失い、倒れて数秒後、天から眩い光が差し込みシノアへと直撃した。
迅雷が鳴り響いていた空は、嘘のように晴れ渡り、太陽が燦燦と輝いていた。
状況が理解できずにいた団長だったが、シノアの体が地上から離れ、1メートルほど浮いたところで停止したのを見て余計に混乱する。
(どういうことだ?これは何かの魔法なのか?)
すると突然、奇跡は起こった。
昼間にも関わらず、星々がキラキラと輝き、雪が降り始めたのだ。
単なる異常気象で片付けてしまうことは簡単だが、そうもいかない。なぜなら、空に輝いていた美しい星々が、さらに光を強くし地面に落下しはじめたのだ。
そこに衝撃などはないが、無数の光が一直線に落下する様は見ていて圧倒される。
目を覆うほどの光が集まったころ、シノアを中心に大爆発が起こる。しかし、爆風や火花などはなく、ただ音と閃光を発しただけだった。
「クソッ!さっきからなんなんだ!」
次々と起こる怪奇現象に団長が毒づくが、光が治まったことで見えるようになったシノアの姿をその目に捉えると、思わず言葉を失った。
そこにいたのはシノアであって、シノアではない何か。
蒼く光る紋章を宿した瞳以外、形はそのままだが放っている覇気は桁違いであり、人間とは思えないほど神々しい。
シノアの姿をしたそれは、地面に倒れるフィリアをそっと抱きかかえ、頬を撫でる。
すると、完全に活動を停止していたフィリアの心臓が再び鼓動を開始し、意識を取り戻させた。
「…ぅ…あ…」
弱々しい声と共に目を開いたフィリアは、その瞳に映る彼を見て思わず涙を零した。
一瞬でシノアではないことを見破り、久しぶりの再会に感嘆の声を漏らす。
「ク…レア…さ…ま…」
「ふふ…君は相変わらず様付けなのかい?久しぶりだねフィリア」
心底愛おしそうにフィリアの頬を撫でたクレアだったが、表情を悲しげなものに変えると、申し訳なさそうに告げた。
「ごめんね。今の僕の力じゃ、身体の時間を1分前に戻すことしか出来ないんだ。最期の言葉を交わしに来たよ」
クレアの言葉にくすくすと笑うフィリア。
「さい…ご…に…あえ…て…こうえい…です…」
「まるで召使いみたいな言い方じゃないか。半世紀前と何も変わらないね」
それ以上、フィリアに喋らせるのは苦しめると判断したクレアは、静かに瞳を見つめ最期の時を惜しんだ。
二人の間に沈黙が訪れ、クレアがフィリアの頭を優しく撫でると、フィリアは幸せそうに目を細める。
だが、幸せな時間は有限だ。
フィリアの視界が霞み始め、全身から力が抜け始めた。
「ぁ…か…らだ…が…」
「もうか…本当に短い時間だな」
もう握る力すら残されていないフィリアの手は、クレアの方へと伸びる。
途中で力が入らなくなり、重力に従い落ちそうになるが、クレアはその手を握り自分の頬に当てた。
「フィリア、君と過ごした20年間は僕が生きてきた中で間違いなく、最も幸せだった時間だ。今でもあの時、君に不死を与えるべきだったと後悔しているよ」
フィリアはクレアの言葉に大粒の涙を両眼から落とすと静かに目を閉じた。
神に愛された聖母は1世紀に渡る、長くも短い生を終え、今、天に召された。
「おやすみ、フィリア。安らかに」
クレアはフィリアの額に唇を触れさせ、髪をひとなですると、時空間魔法でフィリアの亡骸をその場から消した。
そして、静かに立ち上がると、団長と対峙する。
「さて、存在ごと抹消してあげるよ。人間」
信じ難い現象の連続に面食らっていた団長は、クレアの言葉でようやく状況を飲み込み、その言葉を発した張本人に噛み付く。
「なんだと?貴様、私を誰だと思っている!」
「さぁ、知らないね。名前も何も知らないし、知る気もないな」
全く眼中にないといった様子のクレアに苛立ちを覚えた団長は、怒りを抑え自慢げに名乗る。
「貴様のようなガキに2度も名乗るのは癪だが、まぁいい。私の名はデウス・クレアトール、通称神の剣技と呼ばれる最強の男だ」
団長の言葉にクレアは片眉を上げ、失笑する。
それを見て抑えていた苛立ちを爆発させ怒鳴り出す団長。
「何がおかしい!」
剣をクレアに向け、吠える団長だが、奥の手を全て出し切っており、身体も満身創痍といった状態だ。本人は考えないようにしていたが。
「いや、悪いね。この世界に僕と同じ名前の人間がいたなんて思いもしなかったからね」
「同じ名だと?」
クレアの言葉をこだまのように繰り返し、その内容を訝しむ団長だったが、次の瞬間には恐怖に震えることとなった。
「にしても、ここは汚れているね。少し綺麗にしようか」
その言葉と共に指をひとつ鳴らすとまた、信じ難い事象が起こった。
累々と転がっていた死体たちが光の粒子を発しながら消えていき、血の染みも嘘のようにきれいさっぱりなくなっていったのだ。
壊れていた壁や観客席も修理されており、魔法とすら思えない、まさしく奇跡のような出来事だ。
突然のことに驚いていた団長だったが、更なる衝撃に襲われることになる。
「クレアさまがんばれ~」
「てかげんしてあげて~」
「人間もすこしはがんばれ~」
人で溢れかえっていた観客席には、いつのまにか別の種族で溢れており、クレアの名を呼んでいたのだ。
(なんだ…なせ俺の名を…)
困惑する団長だったが、目の前のシノアのようなものを見た時、それを悟った。
まず、観客席にいる彼らは人間ではない。10歳前後の見た目で、可愛らしい様子だが、羽が生えており、それが人外であることを示していた。
羽が生え、幼い見た目、それだけでこの世界では天使族だと判断できる。
そして、天使族、それもこれほど大勢の天使族が仕える存在とは相当高位の神である証明だ。
「ま、まさか…そんな…」
目の前に立つ存在の正体を確信した時、団長の精神は崩壊する。
その圧倒的な覇気、神々しく輝く青空色の瞳、その瞳に宿るのは創造と慈愛の紋章、それらはすなわち、目の前のシノアのような何かが神、それも最高神の片割れであることを示していた。
「やぁ、初めまして人間。デウス・クレアトールだよ。君たちには創造神と言った方が通じるのかな?」
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