7 / 88
異世界転生篇
第7話 慈しみに包まれて
しおりを挟む「何々?」
織田が何やら察知してて、小声で聞いてくる。
「もしかして、約束があった?」
「……あー……ていうか、聞いてたけど、日時とか入れといてって言ったきり、忘れてたっていう話」
「そうなんだ。今日だったの?」
「ん」
「そっか……じゃあ高瀬、そっちに行っても、いいよ?」
「え?」
織田はクスッと笑って、電話には聞こえないように。
「オレは、明日ゆっくり高瀬と美味しいもの食べにいければ、全然。先に帰ってるよ?」
織田は、ほんとに良いよと思ってそうだが。
そんな訳にはいかない。
「いいよ、別にまたすぐ会うだろうし」
「いつぶりなの?」
「二、三か月位……?」
そう言うと、織田は、んーと考えた後。
「いいよ、ほんとに。家で待ってるから」
何だか本当に先に帰ってしまいそうな。
全然嫌そうでないのが織田のすごいとこだと思うんだけれど。
「織田、一緒に行く? 嫌じゃなければ」
「え?」
「一緒に来れば? って言ってるんだけど」
「ん? オレが一緒に行くの? 高瀬の友達のところに?」
「……ちょっと待って」
さすがに織田もちょっと不思議そうなので、オレは、もう一度スマホを耳に当てた。
「誠ー、ほんとに一緒で良い訳?」
『ん? ああ、良いって言ってんじゃん。前に佐藤の彼女とかもついてきたことあったろ』
「……ああ。そういや、そんなこともあったけど……」
ちら、と織田を見つめると。ん? にっこり笑う織田。
「……来て良いって言ってんだけど……どうする?」
「えーと……良いなら行くけど」
けろっとしてそう言って笑う織田に、ああ、そういうタイプだっけな、と苦笑い。
一瞬、大丈夫か聞こうと思ったけれど、これは大丈夫だなと、判断した。
「……じゃあ連れてく。店は?」
『地図とかも入れてある。待ってるからー』
「了解」
電話を切って、場所を確認する。
「近い?」
「ん、電車乗って十五分位」
「そっか。行こ行こ」
織田がオレを見上げてにっこり笑う。
「ほんとにいいのか?」
「え? いいよ。だって、オレも高瀬の学生時代のこと知りたいし」
「……いい話じゃないかもよ?」
「そう? でも別に。だって、なんとなく知ってるような気がするし」
歩き始めながら、そんな話をしていると、織田がそう言って笑った。
「クールな感じでモテモテだったんでしょ?」
「――――……」
「なんとなく分かるから、平気。どんだけカッコよかったか、聞きたいだけだから。聞けると思うし」
絶対本気なんだろうなと思う表情で、そんなことを言って笑うから。
オレまで、笑ってしまう。
「高瀬がモテるのなんか知ってるし、学生時代とかに、誰とどれだけ付き合ってたって平気。……ていうか、オレも結構モテたし」
悪戯っぽく笑う織田に、そうだろうな、と返すと。
「……そこ、つっこんでくれないと、恥ずかしい」
「え、何で? 織田は、モテたと思うけど?」
「オレより百倍モテてそうな高瀬に言われると、余計恥ずいです……」
困った顔をしているのが可笑しくて、くしゃ、と髪をなでると。
ますます照れてるし。
どうしてこんなに可愛く生きてこれるのか、謎。
なんて。また思ってしまった。
0
お気に入りに追加
795
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!


私のアレに値が付いた!?
ネコヅキ
ファンタジー
もしも、金のタマゴを産み落としたなら――
鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。
しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。
自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに――
・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。
・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!

奈落に落ちたら案の定裏ダンジョン直行ルートでした
猫蜜柑
ファンタジー
他より頭がいい所以外はいたって平凡な主人公が奈落に落ちるところから物語は始まります。
舞台は人類だけで見ても奈落を踏破した主人公より強いやつがゴロゴロいるハードな異世界。親友の彼女を庇って奈落に落ち、そこで幾多の死線を超え吸血鬼となって奈落から出た主人公。魔族の国で王女の執事をしたり学園に通ったりチートVSチートの戦いがあったりととんでも異世界で主人公は地球に帰ることは出来るのか?
小説家になろうでも小説を投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる