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5.お姉さまと魔法学園
129.お姉様と修羅場
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そして数日後。
「お姉様ー、待って~!」
「ハハハ、ホウキって楽しいなぁ!」
俺は、ホウキを乗りこなせるようになっていた。
頬に当たる風。流れていく景色。空を飛ぶって楽しいなぁ!
「あっ、お姉様、前!!」
「えっ」
モアに言われ前を見ると、目の前には巨大な木。
「うわっ!」
俺は目の前のクスの木にぶつかり、地面に落ちた。
そう、俺はホウキに乗れるようになった。
だが止まったり方向を変えたりするのはまだ苦手だった。
「いてて。ヘマしちまった」
「大丈夫? でもお姉様、ホウキに乗るの、凄く上手くなったね。何だか普通に乗りこなしてるし。モア、ビックリしちゃった」
モアに褒められ、俺は気を良くする。
「ははは、まぁな! 授業でも先生にここ数日で凄く上達したって褒められたし!」
「良かったねぇ」
他の生徒に比べたら、かなり無理矢理というか力ずくで乗ってるけどな。
でもホウキのスピードだけ見ればすでにクラスでは一二を争うほど速くはなった。
体育祭のホウキレースにも望みが出てきたってわけだ。
「ねぇお姉様、提案があるんだけど」
モアが軽い仕草で地面に着地する。
「今日はホウキに乗って、前に言ってた黒百合寮を見に行ってみない?」
モアの提案に、俺は同意する。
「いいね! 俺も気になってたんだ」
呪われた黒百合寮。なんだかワクワクするぜ!
「お姉様、妙にはしゃいどるのぉ」
呆れる鏡の悪魔。
だって楽しいんだもん。
「じゃあ早速」
足に力を込め、浮き上がる。途端、猛スピードでホウキは飛んでいく。
「あ、待って! モアもー!!」
慌ててモアがホウキにまたがる。
本当はモアと一緒に歩調を合わせて飛んでいきたいが、まだスピードの調節ができないのだ。
「ひょー、気持ちいい!」
学園内はちょっとした街くらいの広さはあるので、転校してしばらく経つが、まだ行ったことのない場所が沢山あって、見ているだけでワクワクする。
古びた時計塔、温室、中庭、真新しい修練場、色とりどりの花壇、乙女たちが寝そべったり語り合っている大きな芝生。裏庭……。
「お、お姉様待って~~!!」
後ろからぜーぜー言いながら体操服姿のモアのホウキがついてくる。
「もう、疲れたよ~!」
「ご、ごめん」
ホウキから飛び降り、ゴロリと転がる。
不便だが、こうしないと止まれないのだ。おかげで前よりも受身が妙に上手になってしまった。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと休んでく」
その場に座り込むモア。ああ、ブルマ姿で汗だくのモア。なんて可愛い!!
「ねぇ、あれ」
「んん?!」
俺がうっとりとモアを眺めていると、急にモアが茂みの奥を指さした。
モアの指さす方向には、姉4とその妹たちだろうか、七人の美少女が談笑している。
姉4の中でツバキ様には唯一妹が居ないので、なんだかポツンとしていて寂しそうだ。
「あ、そう言えばこの前のハンカチ」
俺は、秘密の花園でツバキ様から借りたハンカチを返しそびれていたことを思い出した。
「あったあった。忘れてしまう前に返してしまおう」
声をかけようと駆け寄ると、突然パァンと大きな音が響いた。
見ると、姉4の一人、金髪セクシー美女のスミレ様が、おさげ髪の美少女に頬をビンタされている。
「スミレ様!?」
「お姉様! 私、見たんです。あの女は何なの!? 私というものがありながら……」
泣きじゃくるお下げ髪の女の子。
「何? 修羅場か!?」
俺とモアは思わず近くの茂みに身を隠した。
そう言えば、スミレ様は肉食系だってサツキ様も言ってたっけ。
「お、落ち着いて」
「誤解よ、きっと」
周りのお姉様や妹たちがオロオロとする。
スミレ様はふぅ、とため息をついて髪をかきあげた。
「全く、皆の前で取り乱すなんて恥ずかしい。それでも私の妹なの?」
お下げ髪の美少女はキッとスミレ様を睨む。
「だったら、私、あなたの妹なんて辞めさせてもらいます!」
泣きながら去っていくおさげちゃん。
「お姉様なんかもう知らないっ!」
俺とモアは、その後ろ姿をぽかーんと口を開けて見送ったのだった。
「……で? あなたたちはいつまで見ているつもりなの」
茂みの中で呆気に取られてる俺たちに話しかけて来たのはツバキ様。
「は、ははは」
「べ、別に覗き見するつもりじゃ」
俺は思わず頭をかいたのだった。
「お姉様ー、待って~!」
「ハハハ、ホウキって楽しいなぁ!」
俺は、ホウキを乗りこなせるようになっていた。
頬に当たる風。流れていく景色。空を飛ぶって楽しいなぁ!
「あっ、お姉様、前!!」
「えっ」
モアに言われ前を見ると、目の前には巨大な木。
「うわっ!」
俺は目の前のクスの木にぶつかり、地面に落ちた。
そう、俺はホウキに乗れるようになった。
だが止まったり方向を変えたりするのはまだ苦手だった。
「いてて。ヘマしちまった」
「大丈夫? でもお姉様、ホウキに乗るの、凄く上手くなったね。何だか普通に乗りこなしてるし。モア、ビックリしちゃった」
モアに褒められ、俺は気を良くする。
「ははは、まぁな! 授業でも先生にここ数日で凄く上達したって褒められたし!」
「良かったねぇ」
他の生徒に比べたら、かなり無理矢理というか力ずくで乗ってるけどな。
でもホウキのスピードだけ見ればすでにクラスでは一二を争うほど速くはなった。
体育祭のホウキレースにも望みが出てきたってわけだ。
「ねぇお姉様、提案があるんだけど」
モアが軽い仕草で地面に着地する。
「今日はホウキに乗って、前に言ってた黒百合寮を見に行ってみない?」
モアの提案に、俺は同意する。
「いいね! 俺も気になってたんだ」
呪われた黒百合寮。なんだかワクワクするぜ!
「お姉様、妙にはしゃいどるのぉ」
呆れる鏡の悪魔。
だって楽しいんだもん。
「じゃあ早速」
足に力を込め、浮き上がる。途端、猛スピードでホウキは飛んでいく。
「あ、待って! モアもー!!」
慌ててモアがホウキにまたがる。
本当はモアと一緒に歩調を合わせて飛んでいきたいが、まだスピードの調節ができないのだ。
「ひょー、気持ちいい!」
学園内はちょっとした街くらいの広さはあるので、転校してしばらく経つが、まだ行ったことのない場所が沢山あって、見ているだけでワクワクする。
古びた時計塔、温室、中庭、真新しい修練場、色とりどりの花壇、乙女たちが寝そべったり語り合っている大きな芝生。裏庭……。
「お、お姉様待って~~!!」
後ろからぜーぜー言いながら体操服姿のモアのホウキがついてくる。
「もう、疲れたよ~!」
「ご、ごめん」
ホウキから飛び降り、ゴロリと転がる。
不便だが、こうしないと止まれないのだ。おかげで前よりも受身が妙に上手になってしまった。
「大丈夫か?」
「うん。ちょっと休んでく」
その場に座り込むモア。ああ、ブルマ姿で汗だくのモア。なんて可愛い!!
「ねぇ、あれ」
「んん?!」
俺がうっとりとモアを眺めていると、急にモアが茂みの奥を指さした。
モアの指さす方向には、姉4とその妹たちだろうか、七人の美少女が談笑している。
姉4の中でツバキ様には唯一妹が居ないので、なんだかポツンとしていて寂しそうだ。
「あ、そう言えばこの前のハンカチ」
俺は、秘密の花園でツバキ様から借りたハンカチを返しそびれていたことを思い出した。
「あったあった。忘れてしまう前に返してしまおう」
声をかけようと駆け寄ると、突然パァンと大きな音が響いた。
見ると、姉4の一人、金髪セクシー美女のスミレ様が、おさげ髪の美少女に頬をビンタされている。
「スミレ様!?」
「お姉様! 私、見たんです。あの女は何なの!? 私というものがありながら……」
泣きじゃくるお下げ髪の女の子。
「何? 修羅場か!?」
俺とモアは思わず近くの茂みに身を隠した。
そう言えば、スミレ様は肉食系だってサツキ様も言ってたっけ。
「お、落ち着いて」
「誤解よ、きっと」
周りのお姉様や妹たちがオロオロとする。
スミレ様はふぅ、とため息をついて髪をかきあげた。
「全く、皆の前で取り乱すなんて恥ずかしい。それでも私の妹なの?」
お下げ髪の美少女はキッとスミレ様を睨む。
「だったら、私、あなたの妹なんて辞めさせてもらいます!」
泣きながら去っていくおさげちゃん。
「お姉様なんかもう知らないっ!」
俺とモアは、その後ろ姿をぽかーんと口を開けて見送ったのだった。
「……で? あなたたちはいつまで見ているつもりなの」
茂みの中で呆気に取られてる俺たちに話しかけて来たのはツバキ様。
「は、ははは」
「べ、別に覗き見するつもりじゃ」
俺は思わず頭をかいたのだった。
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