122 / 139
4.お姉様と水の都セシル
121.お姉様とさらば水の都
しおりを挟む
「やぁセラス、久しぶりだな」
そしてその二週間後、俺たちは再びセラスの城に来ていた。
「お姉様♡ 久しぶりね」
ニコリと笑って抱きついてくるセラス。
背後からモアの視線が痛い。
「今日はどうしたの?」
「ああ。あれから俺たち、Bランク冒険者にランクアップしたんだけど」
「まあ! それはめでたいことね」
そう、俺たちはあの後海のダンジョンに再挑戦し、何度かクエストをこなしてBランクに上がることができたのだ。
「それで、実は俺たち、そろそろここを離れようかと思ってて」
「そうなの?」
セラスが悲しげに視線を落とす。
「私たちも、もっとここに居たいけど、セシルにはあんまり高ランクのクエストが無いし」
モアも、寂しげに肩を落とす。
セシルには、C、Dランクの依頼が多くAランクやBランクのクエストがあまり無い。
もっと上を目指すには、ここを離れるしかない。モアと二人相談して、俺たちはそう結論付けたのであった。
「そう。寂しいけど、二人ならもっと上を目指せるわ。離れていても、私はずっとあなたを応援してるわ」
「ありがとう、セラス」
すると、ガチャリと部屋のドアが開いた。
「セラス姉さん? 言われてた書類できたけど――うわっ!」
ドアを開けて入ってきたのは、長い銀髪に青い目、白いリボンに白いフリフリのドレスを着た美少女――
「もしかして、ベルくん!?」
セラスがニッコリと微笑む。
「そうなのよ! この子ったら女装して船に潜り込んでたって言うし、私は女の子の兄弟が欲しかったからちょうどいいと思って!」
「もー! お姉様たちが来てるなら言ってよぉ! 恥ずかしい……」
顔を真っ赤にして足をモジモジさせるベルくん。
「全然恥ずかしくないわよ。似合ってるもの! ねぇ、今度は南大陸から取り寄せたこの猫耳カチューシャ、付けてみない?」
「嫌だぁぁあ!! 恥ずかしいよぉぉぉ!!」
どうやら、姉弟仲良く(?)楽しそうにしているようだ。
◇
「お姉様ーーっ!」
浜辺を歩いていると、聞きなれた声が俺を呼ぶ。オレンジ色のポニーテールが潮風に揺れる。アンだ。
「アン、久しぶりだな!」
振り返ると、アンはニコリと笑う。
「ええ、お元気ですか?」
「私たち、Bランク冒険者に上がったんだよ!」
モアが顔を綻ばせて報告する。
「ええ、聞きましたよ! おめでとうございます! てかむしろまだBランクだなんて、そっちの方が驚きです」
「へへ、ありがとよ」
俺たちは、砂浜でお互いの心境を報告し合った。
あれから無事、オディルは引越しを済ませたこと。
ベルくんが城に戻り、ネコミミ男の娘(?)として働いていること。
海底神殿では、壊れた城の再建が進み、そこで半魚人たちや人魚たちは再び平穏な日々を取り戻している。
「グレイス船長とロレンツ船長も上手くいきそうですよ。今はとりあえず休戦協定が結ばれて、二つの船が出会っても喧嘩してはいけないことになりましたし、マリンちゃんなんか、向こうの船に彼氏もできて――」
「それは良かった」
白い砂浜に、潮風が吹き抜ける。
青い海に照りつける太陽。
俺は水平線を見つめ目を細めた。
「――で、俺たちは、そろそろここを離れようかと思ってて」
俺が言うと、アンは悲しそうに視線を落とした。
「そうですか。寂しいですけど、二人が決めたのなら」
波の音。アンもセラスもベルくんも、俺は全員好きだ。離れたくない気持ちもある。でも――
「おーい!!」
「二人とも、久しぶりー!!」
そこへメリッサとグレイス、マリンちゃんが駆けてくる。
「みんな!」
「久しぶりだな!」
「実は二人、ここを離れるそうなんです」
アンが説明する。
「そうなの?」
「寂しいなあ」
肩を落とすマリンちゃんとメリッサ。
グレイスが提案する。
「そうか。君たちには世話になったな。そうだ、どうだい? 最後に船に乗ってこの辺をもう一度見て回るってのは」
「おお、いいね!」
「お姉様、行きましょう」
こうして俺たちは、海賊船に乗って最後の航海に乗り出した。
ドクロの旗が風ではためく。
どんどん遠ざかっていく白い壁に青い屋根の美しい街並み。港の風景。
風を切り、澄み切った青い海を割いて船は進む。
海の上では、陽気な女海賊たちの歌声が響く。
「錨をあげろーヨーホーホー」
「お姉様は」
「清き正しく美しいー」
「お姉様は」
「最強だ!!」
【お姉様 2nd season 完!!】
そしてその二週間後、俺たちは再びセラスの城に来ていた。
「お姉様♡ 久しぶりね」
ニコリと笑って抱きついてくるセラス。
背後からモアの視線が痛い。
「今日はどうしたの?」
「ああ。あれから俺たち、Bランク冒険者にランクアップしたんだけど」
「まあ! それはめでたいことね」
そう、俺たちはあの後海のダンジョンに再挑戦し、何度かクエストをこなしてBランクに上がることができたのだ。
「それで、実は俺たち、そろそろここを離れようかと思ってて」
「そうなの?」
セラスが悲しげに視線を落とす。
「私たちも、もっとここに居たいけど、セシルにはあんまり高ランクのクエストが無いし」
モアも、寂しげに肩を落とす。
セシルには、C、Dランクの依頼が多くAランクやBランクのクエストがあまり無い。
もっと上を目指すには、ここを離れるしかない。モアと二人相談して、俺たちはそう結論付けたのであった。
「そう。寂しいけど、二人ならもっと上を目指せるわ。離れていても、私はずっとあなたを応援してるわ」
「ありがとう、セラス」
すると、ガチャリと部屋のドアが開いた。
「セラス姉さん? 言われてた書類できたけど――うわっ!」
ドアを開けて入ってきたのは、長い銀髪に青い目、白いリボンに白いフリフリのドレスを着た美少女――
「もしかして、ベルくん!?」
セラスがニッコリと微笑む。
「そうなのよ! この子ったら女装して船に潜り込んでたって言うし、私は女の子の兄弟が欲しかったからちょうどいいと思って!」
「もー! お姉様たちが来てるなら言ってよぉ! 恥ずかしい……」
顔を真っ赤にして足をモジモジさせるベルくん。
「全然恥ずかしくないわよ。似合ってるもの! ねぇ、今度は南大陸から取り寄せたこの猫耳カチューシャ、付けてみない?」
「嫌だぁぁあ!! 恥ずかしいよぉぉぉ!!」
どうやら、姉弟仲良く(?)楽しそうにしているようだ。
◇
「お姉様ーーっ!」
浜辺を歩いていると、聞きなれた声が俺を呼ぶ。オレンジ色のポニーテールが潮風に揺れる。アンだ。
「アン、久しぶりだな!」
振り返ると、アンはニコリと笑う。
「ええ、お元気ですか?」
「私たち、Bランク冒険者に上がったんだよ!」
モアが顔を綻ばせて報告する。
「ええ、聞きましたよ! おめでとうございます! てかむしろまだBランクだなんて、そっちの方が驚きです」
「へへ、ありがとよ」
俺たちは、砂浜でお互いの心境を報告し合った。
あれから無事、オディルは引越しを済ませたこと。
ベルくんが城に戻り、ネコミミ男の娘(?)として働いていること。
海底神殿では、壊れた城の再建が進み、そこで半魚人たちや人魚たちは再び平穏な日々を取り戻している。
「グレイス船長とロレンツ船長も上手くいきそうですよ。今はとりあえず休戦協定が結ばれて、二つの船が出会っても喧嘩してはいけないことになりましたし、マリンちゃんなんか、向こうの船に彼氏もできて――」
「それは良かった」
白い砂浜に、潮風が吹き抜ける。
青い海に照りつける太陽。
俺は水平線を見つめ目を細めた。
「――で、俺たちは、そろそろここを離れようかと思ってて」
俺が言うと、アンは悲しそうに視線を落とした。
「そうですか。寂しいですけど、二人が決めたのなら」
波の音。アンもセラスもベルくんも、俺は全員好きだ。離れたくない気持ちもある。でも――
「おーい!!」
「二人とも、久しぶりー!!」
そこへメリッサとグレイス、マリンちゃんが駆けてくる。
「みんな!」
「久しぶりだな!」
「実は二人、ここを離れるそうなんです」
アンが説明する。
「そうなの?」
「寂しいなあ」
肩を落とすマリンちゃんとメリッサ。
グレイスが提案する。
「そうか。君たちには世話になったな。そうだ、どうだい? 最後に船に乗ってこの辺をもう一度見て回るってのは」
「おお、いいね!」
「お姉様、行きましょう」
こうして俺たちは、海賊船に乗って最後の航海に乗り出した。
ドクロの旗が風ではためく。
どんどん遠ざかっていく白い壁に青い屋根の美しい街並み。港の風景。
風を切り、澄み切った青い海を割いて船は進む。
海の上では、陽気な女海賊たちの歌声が響く。
「錨をあげろーヨーホーホー」
「お姉様は」
「清き正しく美しいー」
「お姉様は」
「最強だ!!」
【お姉様 2nd season 完!!】
0
お気に入りに追加
380
あなたにおすすめの小説
【お天気】スキルを馬鹿にされ追放された公爵令嬢。砂漠に雨を降らし美少女メイドと甘いスローライフ~干ばつだから助けてくれって言われてももう遅い
月城 友麻
ファンタジー
公爵令嬢に転生したオディールが得たのは【お天気】スキル。それは天候を操れるチートスキルだったが、王族にはふさわしくないと馬鹿にされ、王子から婚約破棄されて追放される。
元々サラリーマンだったオディールは、窮屈な貴族社会にウンザリしていたので、これ幸いと美少女メイドと共に旅に出た。
倒したドラゴンを従えて、広大な砂漠を越えていくオディールだったが、ここに自分たちの街を作ろうとひらめく。
砂漠に【お天気】スキルで雨を降らし、メイドの土魔法で建物を建て、畑を耕し、砂漠は素敵な村へと変わっていく。
うわさを聞き付けた移民者が次々とやってきて、村はやがて花咲き乱れる砂漠の街へと育っていった。
その頃追放した王国では日照りが続き、オディールに頼るべきだとの声が上がる。だが、追放した小娘になど頼れない王子は悪どい手段でオディールに魔の手を伸ばしていく……。
女神に愛された転生令嬢とメイドのスローライフ? お楽しみください。
バックパックガールズ ~孤独なオタク少女は学園一の美少女たちの心を癒し、登山部で甘々な百合ハーレムの姫となる~
宮城こはく
恋愛
空木ましろはオタク趣味をひたすら隠して生きる、孤独なインドア女子高生だった。
友達が欲しいけど、友達の作り方が分からない。
スポーツ万能で頭が良くて、友達が多い……そんな憧れの美少女・梓川ほたか先輩のようになりたいけど、自分なんかになれるはずがない。
そんなましろは、ひょんなことから女子登山部を訪問することになるのだが、なんと登山部の部長は憧れのほたか先輩だった!
部員減少で消滅の危機に瀕しているため、ほたか先輩からは熱烈な歓迎を受ける。
それはもう過剰なまでに!
そして登山部は、なぜか美少女ぞろい!
スーパーアスリートで聖母のようにやさしいお姉さん・ほたか先輩。
恥ずかしがり屋の目隠しボクっ娘・千景さん。
そしてワイルドで怖いのに照れ屋な金髪少女・剱さんの甘々な色香に惑わされていく。
「私には百合の趣味はないはず! 落ち着けましろ!」
……そんな風に誘惑にあらがいつつも、特殊スキル『オタク絵師』によって少女たちを魅了し、持ち前の『観察眼』によって絆を深めていく。
少女たちは次々にましろを溺愛するようになり、ましろはいつの間にか百合ハーレムの姫になっていくのだった。
イチャイチャで甘々な百合ハーレムの真ん中で、ましろのゆる~い青春の物語が幕を開けるのですっ!
※「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」でも公開中です。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ハコニワールド
ぽこ 乃助
ファンタジー
少しずれた高校生、灰ヶ原黒時(はいがはらくろとき)。
彼が学校から家へと帰っているある日、突如空が漆黒に染まる。
辺りにいた人の姿はなくなり、代わりに黒い人影現れる。その中の一体、光る人影は己を神と名乗った。
新たな世界を創造する権利を手にした黒時は、七人の人間を探し悪魔を倒し始める。
しかし、その先に待っていた結末は。あまりにも惨いものだった。
人間の本質に迫る、異様で狂気的なバトルをご覧ください。
*約18万字で完結となります。
*最終話まで、毎日7時30分、20時30分に更新されます。最終話は10月29日更新予定です。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる