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4.お姉様と水の都セシル

121.お姉様とさらば水の都

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「やぁセラス、久しぶりだな」

 そしてその二週間後、俺たちは再びセラスの城に来ていた。

「お姉様♡ 久しぶりね」

 ニコリと笑って抱きついてくるセラス。
 背後からモアの視線が痛い。

「今日はどうしたの?」

「ああ。あれから俺たち、Bランク冒険者にランクアップしたんだけど」

「まあ! それはめでたいことね」

 そう、俺たちはあの後海のダンジョンに再挑戦し、何度かクエストをこなしてBランクに上がることができたのだ。

「それで、実は俺たち、そろそろここを離れようかと思ってて」

「そうなの?」

 セラスが悲しげに視線を落とす。

「私たちも、もっとここに居たいけど、セシルにはあんまり高ランクのクエストが無いし」

 モアも、寂しげに肩を落とす。

 セシルには、C、Dランクの依頼が多くAランクやBランクのクエストがあまり無い。

 もっと上を目指すには、ここを離れるしかない。モアと二人相談して、俺たちはそう結論付けたのであった。

「そう。寂しいけど、二人ならもっと上を目指せるわ。離れていても、私はずっとあなたを応援してるわ」

「ありがとう、セラス」

 すると、ガチャリと部屋のドアが開いた。

「セラス姉さん? 言われてた書類できたけど――うわっ!」

 ドアを開けて入ってきたのは、長い銀髪に青い目、白いリボンに白いフリフリのドレスを着た美少女――

「もしかして、ベルくん!?」

 セラスがニッコリと微笑む。

「そうなのよ! この子ったら女装して船に潜り込んでたって言うし、私は女の子の兄弟が欲しかったからちょうどいいと思って!」

「もー! お姉様たちが来てるなら言ってよぉ! 恥ずかしい……」

 顔を真っ赤にして足をモジモジさせるベルくん。

「全然恥ずかしくないわよ。似合ってるもの! ねぇ、今度は南大陸から取り寄せたこの猫耳カチューシャ、付けてみない?」

「嫌だぁぁあ!! 恥ずかしいよぉぉぉ!!」

 どうやら、姉弟仲良く(?)楽しそうにしているようだ。






「お姉様ーーっ!」

 浜辺を歩いていると、聞きなれた声が俺を呼ぶ。オレンジ色のポニーテールが潮風に揺れる。アンだ。

「アン、久しぶりだな!」

 振り返ると、アンはニコリと笑う。

「ええ、お元気ですか?」

「私たち、Bランク冒険者に上がったんだよ!」

 モアが顔を綻ばせて報告する。

「ええ、聞きましたよ! おめでとうございます! てかむしろまだBランクだなんて、そっちの方が驚きです」

「へへ、ありがとよ」

 俺たちは、砂浜でお互いの心境を報告し合った。

 あれから無事、オディルは引越しを済ませたこと。

 ベルくんが城に戻り、ネコミミ男の娘(?)として働いていること。

 海底神殿では、壊れた城の再建が進み、そこで半魚人たちや人魚たちは再び平穏な日々を取り戻している。

「グレイス船長とロレンツ船長も上手くいきそうですよ。今はとりあえず休戦協定が結ばれて、二つの船が出会っても喧嘩してはいけないことになりましたし、マリンちゃんなんか、向こうの船に彼氏もできて――」

「それは良かった」
 
 白い砂浜に、潮風が吹き抜ける。
 青い海に照りつける太陽。
 俺は水平線を見つめ目を細めた。

「――で、俺たちは、そろそろここを離れようかと思ってて」

 俺が言うと、アンは悲しそうに視線を落とした。

「そうですか。寂しいですけど、二人が決めたのなら」

 波の音。アンもセラスもベルくんも、俺は全員好きだ。離れたくない気持ちもある。でも――

「おーい!!」
「二人とも、久しぶりー!!」

 そこへメリッサとグレイス、マリンちゃんが駆けてくる。

「みんな!」
「久しぶりだな!」

「実は二人、ここを離れるそうなんです」

 アンが説明する。

「そうなの?」
「寂しいなあ」

 肩を落とすマリンちゃんとメリッサ。
 グレイスが提案する。

「そうか。君たちには世話になったな。そうだ、どうだい? 最後に船に乗ってこの辺をもう一度見て回るってのは」

「おお、いいね!」
「お姉様、行きましょう」

 こうして俺たちは、海賊船に乗って最後の航海に乗り出した。

 ドクロの旗が風ではためく。
 どんどん遠ざかっていく白い壁に青い屋根の美しい街並み。港の風景。
 風を切り、澄み切った青い海を割いて船は進む。

 海の上では、陽気な女海賊たちの歌声が響く。



「錨をあげろーヨーホーホー」
「お姉様は」
「清き正しく美しいー」
「お姉様は」
「最強だ!!」




【お姉様  2nd season  完!!】

  
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