119 / 139
4.お姉様と水の都セシル
118.お姉様と海の支配者
しおりを挟む
「ふはははは! 非力な人間どもめ。この私を封印してくれた礼を、今こそしてやろうぞ!!」
巨大なヒトデ型の触手生物と化した海の悪魔が叫ぶ。
やばいぞ。非常にやばい。
「みんな、下がってろ!」
叫んだ瞬間、触手がしなり紫色の光を放った。
「きゃあああっ!」
「わっ!」
「何だ!?」
大きな音とともに、辺りに砂ぼこりが立ち込める。
「ふふふ、この城もろとも海の藻屑となるがいい!!」
おぞましい声が響き渡り、城の壁がガラガラと崩れ出す。
「まずいよ、どうしよう!」
ベルくんが今にも泣き出しそうな声で叫ぶ。目をやると、壁に穴が空いている。
「穴が!?」
初めは小さかった穴。だけどそこからどんどんと海水が溢れだしてきて――ついにはボコンと大きな穴が開き、海水がこちらへ押し寄せてきた。
――まずい、息が!?
思わずギュッと目をつぶり、死を覚悟する。が――
「お姉様!!」
モアの声。
あれ? 息ができる。体も濡れてない。モアの魔法か?
いや――モアも驚きの表情を浮かべている。
辺りを見回す。
「ギョギョギョ!!」
ローブをまとい、杖を掲げる人物が一人。緑がかった皮膚に魚の顔。半魚人のうちの一人だ。豪華な服装からして、ここの長《おさ》だろうか?
「ギョギョギョギョギョ!!」
半魚人が何かを叫ぶ。
「あいつを倒してくれと言ってるようじゃな」
鏡の悪魔がひょっこりと顔を出す。
「そうなのか?」
「いや、適当じゃが」
ペロリと舌を出す鏡の悪魔。おいおい。
でも確かにそんな風に見えるな。
ってことは、半魚人たちは敵じゃない? ただ住処に侵入されて怒ってただけ? ここに入る時、普通にぶっ飛ばしちゃったけど。
「お姉様!」
そんな事を考えていると、不意に海の悪魔の触手が飛んでくる。
「ぐわっ!」
触手攻撃を真正面から食らってしまい、背後の壁に叩きつけられる。
「大丈夫!?」
「ああ、心配ない」
背中に鋭い痛みが走るが、すぐさま立ち上がる。
「でも、俺は大丈夫だけど、このままだとこの建物がヤバいことになりそうだな」
俺は背後の崩れかけた壁や穴の開いた天井を見た。
今のところ、半魚人が水中呼吸魔法をかけていてくれているが、その魔力もいつまで持つか。
続けざまに飛んでくる巨大な触手。
「でやっ!」
思い切り振る斧。ゴトリと脚が落ちる。だが、やはりすぐに再生してしまう。
「ぼ……僕も……冒険者になるんだ!」
震える手で勇敢に剣を抜いたベルくん。が――
「馬鹿、下がってろ!」
その瞬間、触手にはね飛ばされ、ベルくんが地面に転がる。
「大丈夫か?」
俺はベルくんに駆け寄った。
「こ、腰が」
可哀想に、腰が抜けたみたいだ。
モアが首を傾げる。
「あの悪魔、目がどこにもないのに、どうやって見てるのかな」
「え?」
そう言われて海の悪魔をチラリと見る。亡霊のように真っ白な皮膚。目らしき穴は辛うじてあるが、退化しておりとても見えているとは思えない。聴覚か嗅覚に頼っているのだろう。
「確かに。……まてよ?」
その時、俺の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
「ナイスだ、モア。もしかして、あいつを倒せるかもしれない」
やっぱり、モアは天才だ!
「えっ?」
モアの瞳が困惑の色を帯びる。
と同時に、轟音と共に、再び水魔法による攻撃が襲う。波が押し寄せ、体が岩壁に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
「お姉様!!」
俺は駆け寄ってきたモアに目配せした。
「大丈夫だ。それより、頼みがあるんだけど」
俺の作戦を聞くと、モアは力強く頷いた。
「分かった。任せて!」
これで――海の悪魔を倒せるかもしれない!!
巨大なヒトデ型の触手生物と化した海の悪魔が叫ぶ。
やばいぞ。非常にやばい。
「みんな、下がってろ!」
叫んだ瞬間、触手がしなり紫色の光を放った。
「きゃあああっ!」
「わっ!」
「何だ!?」
大きな音とともに、辺りに砂ぼこりが立ち込める。
「ふふふ、この城もろとも海の藻屑となるがいい!!」
おぞましい声が響き渡り、城の壁がガラガラと崩れ出す。
「まずいよ、どうしよう!」
ベルくんが今にも泣き出しそうな声で叫ぶ。目をやると、壁に穴が空いている。
「穴が!?」
初めは小さかった穴。だけどそこからどんどんと海水が溢れだしてきて――ついにはボコンと大きな穴が開き、海水がこちらへ押し寄せてきた。
――まずい、息が!?
思わずギュッと目をつぶり、死を覚悟する。が――
「お姉様!!」
モアの声。
あれ? 息ができる。体も濡れてない。モアの魔法か?
いや――モアも驚きの表情を浮かべている。
辺りを見回す。
「ギョギョギョ!!」
ローブをまとい、杖を掲げる人物が一人。緑がかった皮膚に魚の顔。半魚人のうちの一人だ。豪華な服装からして、ここの長《おさ》だろうか?
「ギョギョギョギョギョ!!」
半魚人が何かを叫ぶ。
「あいつを倒してくれと言ってるようじゃな」
鏡の悪魔がひょっこりと顔を出す。
「そうなのか?」
「いや、適当じゃが」
ペロリと舌を出す鏡の悪魔。おいおい。
でも確かにそんな風に見えるな。
ってことは、半魚人たちは敵じゃない? ただ住処に侵入されて怒ってただけ? ここに入る時、普通にぶっ飛ばしちゃったけど。
「お姉様!」
そんな事を考えていると、不意に海の悪魔の触手が飛んでくる。
「ぐわっ!」
触手攻撃を真正面から食らってしまい、背後の壁に叩きつけられる。
「大丈夫!?」
「ああ、心配ない」
背中に鋭い痛みが走るが、すぐさま立ち上がる。
「でも、俺は大丈夫だけど、このままだとこの建物がヤバいことになりそうだな」
俺は背後の崩れかけた壁や穴の開いた天井を見た。
今のところ、半魚人が水中呼吸魔法をかけていてくれているが、その魔力もいつまで持つか。
続けざまに飛んでくる巨大な触手。
「でやっ!」
思い切り振る斧。ゴトリと脚が落ちる。だが、やはりすぐに再生してしまう。
「ぼ……僕も……冒険者になるんだ!」
震える手で勇敢に剣を抜いたベルくん。が――
「馬鹿、下がってろ!」
その瞬間、触手にはね飛ばされ、ベルくんが地面に転がる。
「大丈夫か?」
俺はベルくんに駆け寄った。
「こ、腰が」
可哀想に、腰が抜けたみたいだ。
モアが首を傾げる。
「あの悪魔、目がどこにもないのに、どうやって見てるのかな」
「え?」
そう言われて海の悪魔をチラリと見る。亡霊のように真っ白な皮膚。目らしき穴は辛うじてあるが、退化しておりとても見えているとは思えない。聴覚か嗅覚に頼っているのだろう。
「確かに。……まてよ?」
その時、俺の頭の中に一つの考えが浮かんだ。
「ナイスだ、モア。もしかして、あいつを倒せるかもしれない」
やっぱり、モアは天才だ!
「えっ?」
モアの瞳が困惑の色を帯びる。
と同時に、轟音と共に、再び水魔法による攻撃が襲う。波が押し寄せ、体が岩壁に叩きつけられる。
「ぐはっ!」
「お姉様!!」
俺は駆け寄ってきたモアに目配せした。
「大丈夫だ。それより、頼みがあるんだけど」
俺の作戦を聞くと、モアは力強く頷いた。
「分かった。任せて!」
これで――海の悪魔を倒せるかもしれない!!
0
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!
こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。
ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。
最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。
だが、俺は知っていた。
魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。
外れスキル【超重量】の真の力を。
俺は思う。
【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか?
俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。
ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ
阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。
心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。
「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。
「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
宮廷鍛冶師、贋作しか作れないと追放されたが実は本物の聖剣や魔剣を鍛錬できていた~俺の代わりが見つからずに困り果てているらしいが、もう遅い。
つくも
ファンタジー
フェイ・レプリカは宮廷鍛冶師として王宮で働き、聖剣や魔剣の贋作を作っていた。贋作鍛冶師として馬鹿にされ、低賃金で長時間労働の過酷な環境の中、ひたすら贋作を作り続ける。
そんな環境の中、フェイは贋作鍛冶師の代わりなどいくらでもいると国王に追放される。
フェイは道中で盗賊に襲われているエルフの皇女を救い、エルフの国に招かれる。まともな武具を持たないエルフの民に武器や武具を作る専属鍛冶師になったのだ。
しかしフェイ自身も国王も知らなかった。
贋作を作り続けたフェイが気づいたら本物の聖剣や魔剣を鍛錬できるようになっていた事。そして世界最強の鍛冶師になっていた事を。
フェイを失った王国は製造する武具が粗悪品の贋作ばかりで売れなくなり没落する一方、フェイはエルフの国で最高に楽しい鍛錬ライフを送るのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる