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4.お姉様と水の都セシル

97.お姉様と朝帰り

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「遅かったね。朝帰りだなんて」

 船に帰るなり、ベルくんが呆れ顔で出迎える。

「ご、ごめん、何か、酒に酔ってその辺で寝てたみたいで……」

 苦しい言い訳をする俺。
 ベルくんは俺を手招きすると、耳元でこっそり囁いた。

「気をつけないと。もし万が一のことがあれば――」

「分かってるよ……ウッ」

 あー、何か吐き気がしてきた。よく考えたら変身してるとはいえ16歳だし、あんまり体に良くないのかも。

「二日酔い? 水でも飲む?」

 コップに入った水を渡してくれるベルくん。

 背中に冷や汗をかきながら水を飲んでいると、昨日の髭面たちがやってきた。

「よー、昨日はおっぱラでお姉ちゃんたちと遊んで楽しかったなあ」

「お前、お持ち帰りしたあの美女とどうだった?」

 こ、こら!

「おっぱラ? お持ち帰り?」

 俺の背中をさすっていたベルくんが不審そうな目で俺を見てくる。やめろ。そんな目で見るなっ。

「おっぱいの大きなお姉ちゃんが沢山いる店さ。そこで昨日、こいつは巨乳美人と途中で消えてだなぁ」

「ち、違う。誤解だ!」

「ふーん、随分と店に行ったようで」

 ベルくんが呆れ返った目で俺を見る。

「ははははは」

 笑って誤魔化すしかない。

「それより、そのおっぱラというのを詳しく……」

「いやいや! それはそういう店だって知らなかったから仕方なく!」

「ふーん」

 髭面がニヤニヤと俺の肩を抱く。

「それにしても、お前がまさかあんなにおっぱいについて語るとは思っても見なかったぜ」

 周りの男たちも囃し立てる。

「ああ。凄かったよなぁ。おっぱい、おっぱいって」

「ははは……」

 俺、そんなにおっぱいについて語ってたのか? 覚えてない!

 思いっきりジト目で見てくるベルくん。
 俺はしどろもどろになりながら弁解する。

「いや、それは酔ってたから」

「いやあ、お前があんなに面白いとは思ってもみなかったぜ。普段は無口で無愛想な真面目男なのによ」

 ヤバい。オディルってそんな無口だったのか? 俺とは普通に話してたじゃねーか。

 それとも、もしかして潜入捜査してるからボロが出ないように無口キャラで通してたのだろうか。ありうるな。

 参ったな。こりゃ完全にキャラ崩壊どころの話じゃない。

「そうそう、今度からはお前も誘うから、また飲みに行こうぜ!」

「あ、ああ」

 俺は滝のように汗をかきながら答えた。

 髭面とその仲間たちが盛り上がる。

「そうそう、次はおっぱラの隣の『ふんどしパラダイス』にも行ってみようぜ!」

 何だそれ!

「ふ、ふんどし?」

 ベルくんが目を丸くする。

「ふんどし姿の男たちが男らしくお酌してくれる店だよ!」

 その言葉に、俺は飲んでた水を吐き出しそうになる。

「それだけじゃない! なんと、ふんどし姿の男たちが新体操してくれるんだ!」

 何じゃそりゃ。逆に気になるんだけど。

「確かそれはちょっと見てみたいな」

 俺がボソリというと、髭面が肩を抱く。

「やっぱりな! そうだよな」

 チラリとベルくんを見る髭面とその仲間たち。

 もしかして、ベルくんとデキてると思われてる? いやいや、それは無いぞ、絶対にないぞ!?

「いやいや、それはただの好奇心で」

「大丈夫、俺らそういうのには理解があるから!」

 ち、違う!!

「大体、俺はおっぱいが大好きだし!」

 必死で弁解する俺。

「そうか。ってことは、二刀流か!」

「違~~う!!」

 何でそんな風に誤解されてるんだよ!
 ベルくんを見るともう完全に呆れた顔でため息をついてる。

「じゃあ、約束だぜ? またな!」

 去っていく男たち。な、何か変な約束をしてしまった!

 盛大なため息をつくベルくん。

「オディルに怒られても知らないからね?」

「ははは……」

 確かに。これは……元の体に戻った時が怖い。
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