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4.お姉様と水の都セシル
78.お姉様と姫様の依頼
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「特別なクエスト......なんだそりゃ」
「まずはこれを見てちょうだい」
セラスがパチンと指を鳴らすと、黒子のような召使いが奥から何か宝石のようなものを持ってくる。
よく見ると、それは橢円形をした金色のブローチで、真ん中に見たこともないほど大きなサファイアがはめ込まれていた。
「ブローチ?」
モアが目の前の豪勢なブローチに目を輝かせる。
「わー、お姉様、綺麗ね!」
「ああ。でっけーな」
少なくとも俺は、こんな大きなサファイア、今まで見たことがない。
それにサファイア周りを飾る装飾も細かく、珊瑚、真珠、ダイヤモンドといかにも高そうだ。
夏のセシルの海のように、キラキラと光を放つブルーの石。その透明な輝きに、俺たちは目を奪われた。
「このブローチは我が家に代々伝わる家宝で、実はこのサファイアのブローチは元々二つあって、もう一つの方には同じ大きさのピンクサファイアがはめこまれていたの」
セラスが悲しげに目を伏せる。
「でもある時、ピンクサファイアのほうのブローチが盗まれてしまって」
「盗まれた? この城から?」
セラスは首を横に振る。
「いえ、アレスシアで行われる式典で着けるために船で輸送中だったのだけど、そこを海賊船に襲われてしまって」
こんな綺麗でのどかな場所にも海賊なんて出るんだな。
「......なるほど。それを取り戻して欲しいってわけだな」
「ええ」
セラスは頷く。
「で、ブローチを盗んだ海賊ってのは?」
セラスは神妙な顔で手配書を俺に渡してくる。
「どれどれ......」
そこには青い髪で眼帯をした目付きの悪い女性の姿が描かれていた。下には「海賊グレイス・クロス」の文字。
「こいつが海賊の頭領か」
「なんだか怖そうだね」
モアも横から手配書を覗き見る。
「そこであなた達にはグレイス海賊船に潜入してブローチを取り戻して欲しいの」
海賊船に潜入!?
「お姉様......」
モアが心配そうに見やる。
「大丈夫だ、モア」
俺はモアの頭を撫でた。
「分かった。依頼は受ける」
「そう。ありがとう」
ニッコリと笑うセラス。
「もし、無事ブローチを取り戻したら、レオ様――エリス国王にはあなた達が来たことは黙っておいてあげる。それに、この国に出入国する際に色々と便宜を図ってあげてもいいわ。どうかしら?」
「ああ。ありがとな」
俺はやる気だった。実家に連れ戻されないためにもセラスのためにも。
それに何より――「海賊船」その響きだけで、何だかワクワクが止まらないのであった。
俺は拳を振り上げた。
「いざ、海賊船!!」
俺は海賊船に潜入することを決意した。
「まずはこれを見てちょうだい」
セラスがパチンと指を鳴らすと、黒子のような召使いが奥から何か宝石のようなものを持ってくる。
よく見ると、それは橢円形をした金色のブローチで、真ん中に見たこともないほど大きなサファイアがはめ込まれていた。
「ブローチ?」
モアが目の前の豪勢なブローチに目を輝かせる。
「わー、お姉様、綺麗ね!」
「ああ。でっけーな」
少なくとも俺は、こんな大きなサファイア、今まで見たことがない。
それにサファイア周りを飾る装飾も細かく、珊瑚、真珠、ダイヤモンドといかにも高そうだ。
夏のセシルの海のように、キラキラと光を放つブルーの石。その透明な輝きに、俺たちは目を奪われた。
「このブローチは我が家に代々伝わる家宝で、実はこのサファイアのブローチは元々二つあって、もう一つの方には同じ大きさのピンクサファイアがはめこまれていたの」
セラスが悲しげに目を伏せる。
「でもある時、ピンクサファイアのほうのブローチが盗まれてしまって」
「盗まれた? この城から?」
セラスは首を横に振る。
「いえ、アレスシアで行われる式典で着けるために船で輸送中だったのだけど、そこを海賊船に襲われてしまって」
こんな綺麗でのどかな場所にも海賊なんて出るんだな。
「......なるほど。それを取り戻して欲しいってわけだな」
「ええ」
セラスは頷く。
「で、ブローチを盗んだ海賊ってのは?」
セラスは神妙な顔で手配書を俺に渡してくる。
「どれどれ......」
そこには青い髪で眼帯をした目付きの悪い女性の姿が描かれていた。下には「海賊グレイス・クロス」の文字。
「こいつが海賊の頭領か」
「なんだか怖そうだね」
モアも横から手配書を覗き見る。
「そこであなた達にはグレイス海賊船に潜入してブローチを取り戻して欲しいの」
海賊船に潜入!?
「お姉様......」
モアが心配そうに見やる。
「大丈夫だ、モア」
俺はモアの頭を撫でた。
「分かった。依頼は受ける」
「そう。ありがとう」
ニッコリと笑うセラス。
「もし、無事ブローチを取り戻したら、レオ様――エリス国王にはあなた達が来たことは黙っておいてあげる。それに、この国に出入国する際に色々と便宜を図ってあげてもいいわ。どうかしら?」
「ああ。ありがとな」
俺はやる気だった。実家に連れ戻されないためにもセラスのためにも。
それに何より――「海賊船」その響きだけで、何だかワクワクが止まらないのであった。
俺は拳を振り上げた。
「いざ、海賊船!!」
俺は海賊船に潜入することを決意した。
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