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3.お姉様と木都フェリル
72.さらば木の都
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それから、アオイとヒイロは慌ただしく旅立ち、セリィは代わりの神父が来るまで教会で人々を癒したり、孤児院の子供たちの世話をしているらしい。
「代わりの神父が来たらどうするんだ?」
「そうだな。私も旅にでも出ようかな。この600年で、世界は色々変わったみたいだ。昔はただの森の中にある村だったフェリルも、こんなに立派な街になって――」
セリィは少し遠い目をした後、俺たちに尋ねた。
「それで、あなた達はこれからどうするんだ?」
「俺たちは――」
*
「モア、そっち行ったぞ!」
「お姉さま任せて! ファイアー!」
モアの魔法が火を噴く。木にぶら下がったリンゴの形をしたモンスターが丸焦げの焼きリンゴになった。
「よっしゃ、これで全て撃退したな!」
「クエスト達成!」
クエスト達成の報告を冒険者協会にしに行く。
「クエスト達成おめでとう。ポイントも大分溜まってきたし、この分だとBランク冒険者にもすぐ上がれるんじゃないかしら」
エルさんが微笑みながら冒険者カードを手渡してくれる。
「それにしても、あなたたち、凄い噂になってるわよ。満月の夜、白いドラゴンに乗って空を飛んでるのを何人もの人が目撃してるし、私もこの目で見たもの。あれは一体――」
「あはは、なんか成り行きでそんな風になっちまって」
困って頭をかく俺に、エルさんが説明してくれる。
『オルドローズが言うことにゃ、満月の夜、町に再び勇者が訪れる。それは美しいお姫様。白いドラゴンに跨って、町を青い薔薇で染める――』
それがこの町に伝わる伝承。オルドローズが死の間際にこの町に勇者が現れることを予言したというのだ。
「みんなそれが貴女だって言ってるわ」
「お姉さますごーい」
「よせよ、大袈裟だな」
俺はため息をついた。確かに、その予言が俺のことを言ってるんだったらこんなに嬉しいことは無いが、あまり目立ちすぎるのも困る。いつどこで追手が来るかもわからないし。
「そろそろ、この場所も離れなきゃなんないかもな」
俺は、さらに別な土地へと旅立つことを決意した。
*
そして旅立ちの日、荷物を用意していると、マロンがバタバタと走ってくる。
「本当に行ってしまうのね」
うつむき、目に涙を溜めるマロン。やがて彼女は、決心したように叫んだ。
「お姉さま、私も連れて行って下さい!」
だが俺は、残念だけどその申し出を断った。
「いや、悪いけど、危ないし連れていけないよ」
「そうだよマロン、お父様からもエリスに帰ってこいって手紙も来てるしよ」
ゼットもマロンを諭す。
マロンはしゅん、とうなだれる。
「そうよね。仕方ないわよね。私じゃ足でまといになるし」
マロンは涙を拭くと、笑顔を作った。
「お姉さま、また遊びに来てね! お手紙沢山書くから!」
「ああ。俺も書くよ」
俺は力強く頷き、玄関を出た。
モアと一緒に大きく手を振る。
「バイバイ! 二人とも!」
手を振るマロンとゼットがどんどん小さくなっていく。
「さようなら! さようならお姉さま! また会う日まで!!」
晴れやかな青い空にそんな声が響く。
俺たちは新しい旅路へと歩き出した。
ああ、きっとまた会えるさ。そしてその時には、俺はきっと勇者になってやる。誰よりも強く、大切な人を守れる勇者に。
「代わりの神父が来たらどうするんだ?」
「そうだな。私も旅にでも出ようかな。この600年で、世界は色々変わったみたいだ。昔はただの森の中にある村だったフェリルも、こんなに立派な街になって――」
セリィは少し遠い目をした後、俺たちに尋ねた。
「それで、あなた達はこれからどうするんだ?」
「俺たちは――」
*
「モア、そっち行ったぞ!」
「お姉さま任せて! ファイアー!」
モアの魔法が火を噴く。木にぶら下がったリンゴの形をしたモンスターが丸焦げの焼きリンゴになった。
「よっしゃ、これで全て撃退したな!」
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「あはは、なんか成り行きでそんな風になっちまって」
困って頭をかく俺に、エルさんが説明してくれる。
『オルドローズが言うことにゃ、満月の夜、町に再び勇者が訪れる。それは美しいお姫様。白いドラゴンに跨って、町を青い薔薇で染める――』
それがこの町に伝わる伝承。オルドローズが死の間際にこの町に勇者が現れることを予言したというのだ。
「みんなそれが貴女だって言ってるわ」
「お姉さますごーい」
「よせよ、大袈裟だな」
俺はため息をついた。確かに、その予言が俺のことを言ってるんだったらこんなに嬉しいことは無いが、あまり目立ちすぎるのも困る。いつどこで追手が来るかもわからないし。
「そろそろ、この場所も離れなきゃなんないかもな」
俺は、さらに別な土地へと旅立つことを決意した。
*
そして旅立ちの日、荷物を用意していると、マロンがバタバタと走ってくる。
「本当に行ってしまうのね」
うつむき、目に涙を溜めるマロン。やがて彼女は、決心したように叫んだ。
「お姉さま、私も連れて行って下さい!」
だが俺は、残念だけどその申し出を断った。
「いや、悪いけど、危ないし連れていけないよ」
「そうだよマロン、お父様からもエリスに帰ってこいって手紙も来てるしよ」
ゼットもマロンを諭す。
マロンはしゅん、とうなだれる。
「そうよね。仕方ないわよね。私じゃ足でまといになるし」
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「バイバイ! 二人とも!」
手を振るマロンとゼットがどんどん小さくなっていく。
「さようなら! さようならお姉さま! また会う日まで!!」
晴れやかな青い空にそんな声が響く。
俺たちは新しい旅路へと歩き出した。
ああ、きっとまた会えるさ。そしてその時には、俺はきっと勇者になってやる。誰よりも強く、大切な人を守れる勇者に。
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