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3.お姉様と木都フェリル

71.お姉様と最強の女の子

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 シュシュを警察に引き渡すと、俺たちはマロンの別荘へと帰ってきた。

「みんな、お帰りなさい! モアちゃんが帰って来てよかったわ。さあ、夕ご飯、用意してるから」

 別荘へと戻るや否や、マロンが大慌てで飛び出てくる。よほど心配したらしい。目には涙が浮かんでいる。

「いや、その前に疲れたから俺は風呂入ってくるわ!」

 ゼットはそう言って風呂場へダッシュする。全く、折角マロンが心配してくれてるのによ。マロンはくすりと笑う。

「そう? じゃあお風呂を先にして、その後みんなで晩御飯にしましょう!」

 そんなわけで、俺たちは皆で大浴場に行くことになった。

「汗かいたな」

「ここの大浴場は広くていいぞ」

「モア、温泉大好き!」

 そんな風に話していると、男湯の前でアオイが手を振った。

「じゃあ、皆様、私はここで!」

 俺はぎょっとしてしまう。

「ま、まさかアオイ、男湯にいくのか?」

「はい。何か問題でも?」

 きょとん、と首を傾げるアオイ。

「いや、問題は無い。問題はないけど……」

 男湯には先にゼットが入っている上、そのゼットはまだアオイを女の子と勘違いしたままなのだ!

 ヒイロがぐい、と俺の肩を引く。その目は、キラキラと輝いていた。

 ……そうだな。確かにこのまま黙ってたほうが面白そうだ。

「いや、何でもない! じゃあな、また後で!」

 俺はアオイに手を振った。ヒイロも性格が悪いが、俺もたいがい悪人かもしれない。

「はあ、なんとかして男湯を覗けないものか」

 ヒイロがため息をつく。

「逆だろ、普通」

 そんな風にして脱衣場で服を脱いでいると、モアの影から鏡の悪魔が現れた。

「ふい~、どれ、妾も温泉とやらに入って見るかの」

 帽子と衣服が脱ぎ捨てられ、すっぽんぽんになる鏡の悪魔。

「きゃっ!」

 驚いた下着姿のマロンが俺に抱きついてくる。押し付け合わされる柔らかい胸と胸。

「大丈夫だよ、この子は俺たちの味方なんだ」

「そ、そうなの」

 するとヒイロが俺とマロンの乳をジロジロと見て言った。

「なんなんだここ、巨乳が多すぎる!」

 そしてモアの方にも視線をやった。

「それにあんた……子供なのになんで私より胸があるんだ!?」

「モ、モア分かんない」

「そりゃー、モアは俺の妹だし」

 ヒイロは鏡の悪魔を指差した。

「いいか、子供はこういう慎ましやかな胸であるべきだ」

 鏡の悪魔は困ったように笑う

「いや、妾は今は魔力の消費を抑えるためこの姿になっておるが、その気になればいくらでも巨乳になれるぞ」

「そうだったのか!!」

 ……ってなわけで、俺たちは、皆で温泉を楽しんだのであった。



「皆さん、疲れたでしょう。しばらくこの別荘でゆっくりしていってね」

「ありがとう。でも早くBランクに上がりたいし、そうゆっくりもしてられないかな」

「私たちも次のクエストがもう決まってるから、明日には立たなきゃいけないしな」

「明日? そんな急に?」

「忙しいんだな」

「ああ。私たち、常に2、3個クエストを掛け持ちしている状態なんだ。装備やら何やらでお金がかかるし、早くSクラスに上がりたいから」

「Sクラスかあ。凄いな」

 Sクラスに上がった冒険者は勇者と呼ばれることになる。いいなあ。俺の憧れだ。

「でもあんたたちのことだから、すぐに追いつくだろう」

 ヒイロが頭にタオルを乗せながら言う。

「そうじゃな。妾も長く生きてきたが、お姉さまは間違いなく逸材じゃと思う」

 鏡の悪魔が俺に向かってウインクする。
 え? なんで鏡の悪魔まで?

「お姉さま?」

「なっ、なんで鏡ちゃんまで!」

 モアとマロンが色めき立つ。

「え? だって皆そう呼んでおるのでな。嫌か?」

「いや、別に嫌とかじゃ」

 ヒイロがふん、と鼻を鳴らす。

「別にみんな言ってる訳じゃない。私は違うし」

「なぜヒイロはお姉さまと呼ばないのじゃ?」

「だって別に私のお姉さんじゃないし」

「お姉さまじゃないならどういう関係なのじゃ?」

「どういう関係って」

 困るヒイロ。俺はうーん、と考えた末、こう言った。

「お姉さんじゃないなら、親友だな!」

「え!?」

 全員が俺の方を一斉に見つめる。そんなに変なこと言ったかな?

「だって俺には妹ばかりで友達が一人もいないから、だからヒイロは親友だ。だって親友って一番の友達のことを指すんだろ?」

「わ、私が一番の友達!?」

 ヒイロも何故か動揺しだす。

「そうだ」

 そう言うと、ヒイロは酷く照れた顔をしてそっぽを向いた。

「まあ、あんたがそこまで言うなら親友になってやらないでもない」

 全く、相変わらず可愛くないんだから。
 するとモアが勢い良く抱きついてくる。

「ずるーい、モアも親友になる!」

「モアは妹だろ」

「わ、私もお姉さまの親友にしてください!」

「では妾も」

 あー、もう、一体どうなってんだよ!





 風呂から上がると、ゼットが意気消沈とした顔で項垂れていた。
 あの様子をみると、さすがに男でもいい、とはならなかったんだな。

「……お前ら、全部知ってたんだろ」

 恨めしそうに言うゼット。

「はははは……」

 俺は笑って誤魔化した。

「アオイちゃんはさ、武器の話とか俺の好きな格闘家とかに詳しくてさ、凄く趣味が合って、話しやすくて、運命の相手かと思っていたけど、まさか男だったとは」

 ゼットはため息をつく。

「は~あ、どこかに男心を分かってくれる可愛い女の子はいないかな~」

 何言ってんだこいつ。

 そんな都合のいい女の子なんているわけないだろ!

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