65 / 139
3.お姉様と木都フェリル
64.お姉様と満月
しおりを挟む
シュシュが悪魔の力を借りてモアと入れ替わり、俺の妹になるだって!?
「――狂ってやがるぜ!」
ゼットが剣を構え、シュシュに向かっていく。シュシュはそれをひらりとかわす。
「あっぶなーい。ひどいじゃないの」
くすくす笑うシュシュ。
「よそ見している暇があるの?」
ヒイロもシュシュに斬りかかる。
シュシュはそれも軽い仕草で避けると、ガーターベルトから何か細長い筒状の物を取り出した。笛だ。
シュシュはおもむろに白く光る横笛を吹き始める。
何も無い空間から真っ黒なもやが現れる。
立ち上る真っ黒な煙は大きく膨れ上がり、やがて三つに分かれ、一つは狐、一つはオオカミ、一つは鷹の形に変わる。
「やっておしまい、私のしもべたち!」
ゼットが剣を抜き、オオカミを切り捨てる。ヒイロが狐を刀で切り、アオイが鷹を縛り上げる。
しかし、黒い獣たちを切り捨てたと思ったら、またしても別の獣が3人を襲う。
俺はその状況を、檻の中から黙って見つめる他ない。ぎり、と唇を噛む。
「あはははっ、無駄よ! いくら切っても、ここには魔力が沢山ある。いくらだって召喚できるんだから!」
高らかに笑ったシュシュが俺の方へくるりと向き直る。
「さてと。丁度いいわ。お姉さまに見せてあげる! 私が鏡の悪魔を召喚し、お姉さまの本当の妹になる様をね!」
シュシュが指を鳴らすと、天井の岩が低い音を立て割れた。岩の裂け目から覗く群青色の空。
「皆、鏡の悪魔を呼び出すには薔薇祭りの日でないといけないと思ってる。でも違う。鏡の悪魔を呼び出すのに必要な条件は2つ。膨大な魔力を宿した鏡と満月の光。そして魔力を宿した鏡はここにある。あとは満月だけ!」
そうか、今日は満月!
岩の間から丸い空を見上げると、灰色の雲が風に乗って流れていく。
あふれ出す金色の光。満月だ。大きな満月。それは魔力を宿したかのように、赤く、毒々しく光ったかと思うと、大きな鏡に反射し、輝いた。
「さあ、来なさい鏡の悪魔! 私の願いをかなえて!」
手を広げるシュシュ。
辺りが真っ白な光に包まれる。
「あはははっ! さあ、来なさい鏡の悪魔よ!」
巻き起こる風。魔法に疎い俺でも分かるほどの濃密な魔力の気配。何かが蠢く感覚。
そして狭い室内に、小さな少女の声が響いた。
「ククッ、おろかな」
俺たちは、一斉に振り返った。
鏡の悪魔が現れるのは鏡からだと思って鏡を凝視していたのだが、声がしたのは全く思いもしない方向だったからだ。
声がしたのはモアの方からだった。
恐らく魔力を使い果たしたのだろう。俺やモアの周りを覆っていた檻がいつの間にか無くなり、黒い獣たちもどこかへ消え去ってしまった。
「モ、モア!?」
「お姉さまいけない!」
モアに駆け寄ろうとした俺の腕をアオイがぐっと掴んだ。
「……モア?」
俺はモアの顔を見つめた。
顔を下げうなだれたモアの表情は陰になっていてよく見えない。
「モア? どうしたんだ?」
またしてもモアの方から声がする。
「ククククク……おろかな人間どもよ」
それは、モアの声ではなかった。
「まさか、鏡の悪魔……か?」
「――狂ってやがるぜ!」
ゼットが剣を構え、シュシュに向かっていく。シュシュはそれをひらりとかわす。
「あっぶなーい。ひどいじゃないの」
くすくす笑うシュシュ。
「よそ見している暇があるの?」
ヒイロもシュシュに斬りかかる。
シュシュはそれも軽い仕草で避けると、ガーターベルトから何か細長い筒状の物を取り出した。笛だ。
シュシュはおもむろに白く光る横笛を吹き始める。
何も無い空間から真っ黒なもやが現れる。
立ち上る真っ黒な煙は大きく膨れ上がり、やがて三つに分かれ、一つは狐、一つはオオカミ、一つは鷹の形に変わる。
「やっておしまい、私のしもべたち!」
ゼットが剣を抜き、オオカミを切り捨てる。ヒイロが狐を刀で切り、アオイが鷹を縛り上げる。
しかし、黒い獣たちを切り捨てたと思ったら、またしても別の獣が3人を襲う。
俺はその状況を、檻の中から黙って見つめる他ない。ぎり、と唇を噛む。
「あはははっ、無駄よ! いくら切っても、ここには魔力が沢山ある。いくらだって召喚できるんだから!」
高らかに笑ったシュシュが俺の方へくるりと向き直る。
「さてと。丁度いいわ。お姉さまに見せてあげる! 私が鏡の悪魔を召喚し、お姉さまの本当の妹になる様をね!」
シュシュが指を鳴らすと、天井の岩が低い音を立て割れた。岩の裂け目から覗く群青色の空。
「皆、鏡の悪魔を呼び出すには薔薇祭りの日でないといけないと思ってる。でも違う。鏡の悪魔を呼び出すのに必要な条件は2つ。膨大な魔力を宿した鏡と満月の光。そして魔力を宿した鏡はここにある。あとは満月だけ!」
そうか、今日は満月!
岩の間から丸い空を見上げると、灰色の雲が風に乗って流れていく。
あふれ出す金色の光。満月だ。大きな満月。それは魔力を宿したかのように、赤く、毒々しく光ったかと思うと、大きな鏡に反射し、輝いた。
「さあ、来なさい鏡の悪魔! 私の願いをかなえて!」
手を広げるシュシュ。
辺りが真っ白な光に包まれる。
「あはははっ! さあ、来なさい鏡の悪魔よ!」
巻き起こる風。魔法に疎い俺でも分かるほどの濃密な魔力の気配。何かが蠢く感覚。
そして狭い室内に、小さな少女の声が響いた。
「ククッ、おろかな」
俺たちは、一斉に振り返った。
鏡の悪魔が現れるのは鏡からだと思って鏡を凝視していたのだが、声がしたのは全く思いもしない方向だったからだ。
声がしたのはモアの方からだった。
恐らく魔力を使い果たしたのだろう。俺やモアの周りを覆っていた檻がいつの間にか無くなり、黒い獣たちもどこかへ消え去ってしまった。
「モ、モア!?」
「お姉さまいけない!」
モアに駆け寄ろうとした俺の腕をアオイがぐっと掴んだ。
「……モア?」
俺はモアの顔を見つめた。
顔を下げうなだれたモアの表情は陰になっていてよく見えない。
「モア? どうしたんだ?」
またしてもモアの方から声がする。
「ククククク……おろかな人間どもよ」
それは、モアの声ではなかった。
「まさか、鏡の悪魔……か?」
0
お気に入りに追加
380
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう!
そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね!
なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!?
欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!?
え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。
※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません
なろう日間週間月間1位
カクヨムブクマ14000
カクヨム週間3位
他サイトにも掲載
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる