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3.お姉様と木都フェリル
64.お姉様と満月
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シュシュが悪魔の力を借りてモアと入れ替わり、俺の妹になるだって!?
「――狂ってやがるぜ!」
ゼットが剣を構え、シュシュに向かっていく。シュシュはそれをひらりとかわす。
「あっぶなーい。ひどいじゃないの」
くすくす笑うシュシュ。
「よそ見している暇があるの?」
ヒイロもシュシュに斬りかかる。
シュシュはそれも軽い仕草で避けると、ガーターベルトから何か細長い筒状の物を取り出した。笛だ。
シュシュはおもむろに白く光る横笛を吹き始める。
何も無い空間から真っ黒なもやが現れる。
立ち上る真っ黒な煙は大きく膨れ上がり、やがて三つに分かれ、一つは狐、一つはオオカミ、一つは鷹の形に変わる。
「やっておしまい、私のしもべたち!」
ゼットが剣を抜き、オオカミを切り捨てる。ヒイロが狐を刀で切り、アオイが鷹を縛り上げる。
しかし、黒い獣たちを切り捨てたと思ったら、またしても別の獣が3人を襲う。
俺はその状況を、檻の中から黙って見つめる他ない。ぎり、と唇を噛む。
「あはははっ、無駄よ! いくら切っても、ここには魔力が沢山ある。いくらだって召喚できるんだから!」
高らかに笑ったシュシュが俺の方へくるりと向き直る。
「さてと。丁度いいわ。お姉さまに見せてあげる! 私が鏡の悪魔を召喚し、お姉さまの本当の妹になる様をね!」
シュシュが指を鳴らすと、天井の岩が低い音を立て割れた。岩の裂け目から覗く群青色の空。
「皆、鏡の悪魔を呼び出すには薔薇祭りの日でないといけないと思ってる。でも違う。鏡の悪魔を呼び出すのに必要な条件は2つ。膨大な魔力を宿した鏡と満月の光。そして魔力を宿した鏡はここにある。あとは満月だけ!」
そうか、今日は満月!
岩の間から丸い空を見上げると、灰色の雲が風に乗って流れていく。
あふれ出す金色の光。満月だ。大きな満月。それは魔力を宿したかのように、赤く、毒々しく光ったかと思うと、大きな鏡に反射し、輝いた。
「さあ、来なさい鏡の悪魔! 私の願いをかなえて!」
手を広げるシュシュ。
辺りが真っ白な光に包まれる。
「あはははっ! さあ、来なさい鏡の悪魔よ!」
巻き起こる風。魔法に疎い俺でも分かるほどの濃密な魔力の気配。何かが蠢く感覚。
そして狭い室内に、小さな少女の声が響いた。
「ククッ、おろかな」
俺たちは、一斉に振り返った。
鏡の悪魔が現れるのは鏡からだと思って鏡を凝視していたのだが、声がしたのは全く思いもしない方向だったからだ。
声がしたのはモアの方からだった。
恐らく魔力を使い果たしたのだろう。俺やモアの周りを覆っていた檻がいつの間にか無くなり、黒い獣たちもどこかへ消え去ってしまった。
「モ、モア!?」
「お姉さまいけない!」
モアに駆け寄ろうとした俺の腕をアオイがぐっと掴んだ。
「……モア?」
俺はモアの顔を見つめた。
顔を下げうなだれたモアの表情は陰になっていてよく見えない。
「モア? どうしたんだ?」
またしてもモアの方から声がする。
「ククククク……おろかな人間どもよ」
それは、モアの声ではなかった。
「まさか、鏡の悪魔……か?」
「――狂ってやがるぜ!」
ゼットが剣を構え、シュシュに向かっていく。シュシュはそれをひらりとかわす。
「あっぶなーい。ひどいじゃないの」
くすくす笑うシュシュ。
「よそ見している暇があるの?」
ヒイロもシュシュに斬りかかる。
シュシュはそれも軽い仕草で避けると、ガーターベルトから何か細長い筒状の物を取り出した。笛だ。
シュシュはおもむろに白く光る横笛を吹き始める。
何も無い空間から真っ黒なもやが現れる。
立ち上る真っ黒な煙は大きく膨れ上がり、やがて三つに分かれ、一つは狐、一つはオオカミ、一つは鷹の形に変わる。
「やっておしまい、私のしもべたち!」
ゼットが剣を抜き、オオカミを切り捨てる。ヒイロが狐を刀で切り、アオイが鷹を縛り上げる。
しかし、黒い獣たちを切り捨てたと思ったら、またしても別の獣が3人を襲う。
俺はその状況を、檻の中から黙って見つめる他ない。ぎり、と唇を噛む。
「あはははっ、無駄よ! いくら切っても、ここには魔力が沢山ある。いくらだって召喚できるんだから!」
高らかに笑ったシュシュが俺の方へくるりと向き直る。
「さてと。丁度いいわ。お姉さまに見せてあげる! 私が鏡の悪魔を召喚し、お姉さまの本当の妹になる様をね!」
シュシュが指を鳴らすと、天井の岩が低い音を立て割れた。岩の裂け目から覗く群青色の空。
「皆、鏡の悪魔を呼び出すには薔薇祭りの日でないといけないと思ってる。でも違う。鏡の悪魔を呼び出すのに必要な条件は2つ。膨大な魔力を宿した鏡と満月の光。そして魔力を宿した鏡はここにある。あとは満月だけ!」
そうか、今日は満月!
岩の間から丸い空を見上げると、灰色の雲が風に乗って流れていく。
あふれ出す金色の光。満月だ。大きな満月。それは魔力を宿したかのように、赤く、毒々しく光ったかと思うと、大きな鏡に反射し、輝いた。
「さあ、来なさい鏡の悪魔! 私の願いをかなえて!」
手を広げるシュシュ。
辺りが真っ白な光に包まれる。
「あはははっ! さあ、来なさい鏡の悪魔よ!」
巻き起こる風。魔法に疎い俺でも分かるほどの濃密な魔力の気配。何かが蠢く感覚。
そして狭い室内に、小さな少女の声が響いた。
「ククッ、おろかな」
俺たちは、一斉に振り返った。
鏡の悪魔が現れるのは鏡からだと思って鏡を凝視していたのだが、声がしたのは全く思いもしない方向だったからだ。
声がしたのはモアの方からだった。
恐らく魔力を使い果たしたのだろう。俺やモアの周りを覆っていた檻がいつの間にか無くなり、黒い獣たちもどこかへ消え去ってしまった。
「モ、モア!?」
「お姉さまいけない!」
モアに駆け寄ろうとした俺の腕をアオイがぐっと掴んだ。
「……モア?」
俺はモアの顔を見つめた。
顔を下げうなだれたモアの表情は陰になっていてよく見えない。
「モア? どうしたんだ?」
またしてもモアの方から声がする。
「ククククク……おろかな人間どもよ」
それは、モアの声ではなかった。
「まさか、鏡の悪魔……か?」
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