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1.お姉様と国王暗殺未遂事件

19.お姉様と証人

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「いやー、びっくりしたぜ」

 俺は額の汗を拭う。

「そりゃそうだろう。まさかアビゲイル様が冒険者だっただなんて」

「いや、そっちじゃねーよ」

 いや、義姉さんが元冒険者だったってのもびっくりだけどさ、それ以上のインパクトがありすぎた。

「じゃあ、お前たちは元々アビゲイル義姉さんと知り合いで、最初から義姉さんに招かれてあの舞踏会に来てたってことなんだな?」

 俺が尋ねると、アオイはうなずく。

「ええ、暗殺計画を知ったアビゲイル様は、陛下の身を助けることで、冷えきっている二人の仲を修復しようと考えていたようなのです」

 兄さんの命を救うことで愛情を示そうと考えたわけか。中々可愛いじゃないか義姉さんも。

「アオイが兄さんに成り代わってたのも気づかなかったしさ。演技上手すぎ!」

「陛下のことをずっと観察していましたから。そのせいで、熱視線を送っていると勘違いされて口説かれたりもしましたが」

 苦笑するアオイ。

「でもその計画もことごとくあんたが邪魔するから、どうしようかと思ったよ」

 ヒイロがため息をつく。だってしょうがないだろ。そんなこと全然知らなかったんだから!

 そんな話をしながらしばらく隠し通路を歩いていると、俺たちは行き止まりにぶち当たった。

「あれ? 道を間違えたか?」

 アオイが指をさす。

「いえ、ちょっとそこの壁を押してみてください」

 言われた通り壁を押すと、壁はくるりと滑らかに回転した。隠し扉である。俺たちは回転に巻き込まれ、雪崩のように扉の外へとはじき出された。

「どわっ!」

 転がりながら盛大にずっこける俺。うう、かっこ悪い!

「何奴!」

 金色の男が振り返る。やせ細った頬。鈍い光をたたえた瞳。グンジ叔父さん……やっぱり。

「『何奴』じゃねーよ、人のこと襲っておいて!」

 俺がぶつけた頭をさすりながら叫ぶと、叔父さんは低い声で笑う。

「ほお? 一体なんの話かね?」

 こいつ、しらばっくれるつもりだな!

「無駄な抵抗はやめろ。あなたのことを国家反逆罪容疑で拘束する」

 ヒイロが刀を構え、グンジおじさんに向かって言い放つ。グンジおじさんは冷たい瞳でちらりとヒイロを見やる。

「ふん、何の証拠があって」

「くっそー! てめーこの期に及んで」

 俺が苛立ちのあまり叫ぶと、ヒイロはそれを遮るようによく通る声でこう言った。

「証拠ならある。証人がいるからな」

 え? 俺が意味が分からずヒイロの方を見ると、ヒイロは入り口の方へ視線をやる。その視線をたどると、ガチャリと音を立ててドアが開いた。

「す、すいません、グンジ様!」
 
 そこに立っていたのは、どこかで見覚えのある使用人風の男。あれ? こいつって確か……舞踏会で兄さんを襲ったやつだ!

「お、お前は!」

 グンジおじさんは顔を真っ青にしながら言う。

「死んだんじゃなかったのか!?」

 うんうん、と頷く俺。そうそう、俺は死体まで見たんだぞ!?

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