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6.いざ、魔王城
30.魔王城へ忍びこめ!
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オーガは俺たちを家に招くと、お茶を出しながら話し始めた。
「私の名はウィートン。君たちは私が魔王側なんじゃないかと疑っているのかもしれないが、安心してくれ。私は君たちの味方だ」
「魔王は人間を憎んでいてオーガやオークを優遇していたのでは……」
セーブルさんが不思議そうな顔をする。
「前の政権の時は、この島では人間やオーガ、オーク、コボルトやケットシーも仲良く暮らしていた」
ウィートンはため息をついて遠くを見つめた。
「だけど封印から復活したゾーラが軍事政権を率いてクーデターを起こしてから、人間たちは住処《すみか》を終われたんだ」
ウィートンが言うには、島を去った人間たちに雇われていた多くのオーガも職を失い、そしてまもなく魔王復活のために重税がかけられるようになったのだという。
「そして困窮した住人たちは海賊や山賊になるようになり、国は荒廃してしまったんだ」
「そうだったのか」
ウィートンはガバリと頭を下げる。
「お願いだ! ゾーラを……魔王を倒してこの島に平和を取り戻してくれ!」
「ああ。そのつもりだ」
「ありがとうございます!!」
俺の手をがっしりと握るウィートン。
「今のまま街に降りればかなり目立ってしまいます。行動を起こすのは夜からがいいと思いますが、いかがでしょう、ここで身を隠しては」
「ああ、ありがとう。そうさせてもらおう」
「ではこちらも、その隙に反魔王の仲間に情報を伝えておきます」
そう言うとウィートンは何やら手紙を書き、伝書鳩にくくりつけて放した。
トゥリンがヒソヒソと耳打ちする。
「大丈夫か? 罠じゃないのか?」
「いや」
俺はウィートンをじっと見た。
「多分大丈夫だ。あの人は信頼出来る」
鳩を飛ばし終わったウィートンは、サブローさんの頭を嬉しそうに撫でている。
舌を出して尻尾を振るサブローさん。サブローさんはウィートンにすっかり懐いたようで、お腹まで出してゴロゴロしている。
「大丈夫、サブローさんの目に狂いは無いはずだ」
俺たちはウィートンの家に身を隠し、日が落ちるのを待つことにした。
◇◆◇
日が落ちるのを待って、俺たちは街に出た。
スカーフやフードで顔を覆い、目立たないようにして街を駆け抜ける。まるで忍者だ。
「オーガたち、案外夜は出歩かないんだな」
街には薄ぼんやりとした提灯の灯りはついているものの、道を歩いているオーガは少ない。
「当たり前だ。夜に遊び歩くなんて人間くらいだぞ。エルフもドワーフも、皆夜は家族と一緒に静かに過ごすのが当たり前だ」
「そうなのか」
残業も飲み会もないなんて、むしろ過ごしやすい社会なのかもしれない。
「城が見えてきたぞ」
目の前にある建物の影に潜み様子を窺う。
月が城の周りのお掘りと、大きな門の前にいる二体の大きなオーガを照らす。
「見張りがいるです」
確かに、門の前には二体のオーガが立っていて城を守っている。
その他にも、数人のオーラが代わる代わる城の前を巡回して歩いている。
「あの見張りをなんとかしないとな」
俺たちが物陰に身を隠しながら辺りを伺っていると、急にオーガたちがざわめき出した。
「火事だ!」
見ると、城の反対側の方から火の手が上がっている。
「敵襲か!?」
「反魔王派のやつらか!?」
恐らくウィートンとその仲間たちの仕業だろう。
バタバタとオーガたちが火の手の上がった方向へと駆けていき、城の見張りが門の前の二人だけになる。いけるか!?
「トゥリン、ここから門番を狙えるか?」
「ああ、やってみる」
トゥリンが見張りのオーガに向かって手をかざす。
「アイス!」
トゥリンの氷魔法によってピキピキと二体のオーガが凍っていく。
「よし」
オーガの服を漁り、門の鍵をゲットする。
門を静かに開け、俺たちは城に潜入した。
城は山の上に建っている。門は山の入口にあるため、門の先は長い石の階段が続いている。
ひょっとしたら門の先に大勢敵が待ち構えているんじゃないかとも思ったが、城へと続く石段はしんと静まり返っていた。
「えらく静かだな」
トゥリンも辺りを見回す。
「罠じゃないといいけど」
「気を抜かず進もう」
ソロリソロリとしばらく石段を進むと、魔王城が見えてきた。
「あと少しだ!」
が、俺たちが階段の頂上まであと少しと迫ったその時、黒い大きな物体がこちらに向かって飛んできた。
「うわっ!」
右腕に鋭い痛み。
見ると、右腕に黒い大きな柴犬がかぶりついている。
「――なっ」
柴犬!? この世界に、サブローさん以外の柴犬が存在したのか。
驚きと同時に感動が胸の奥にこみ上げてくる。この世界には、犬がいたんだ!
「シバタ!」
弓を引こうとするトゥリン。
サブローさんも牙をむいて黒柴に飛びかかろうとする。
「待て!!」
俺の声に、サブローさんたちは困惑した表情で動きを止めた。
「貴重な犬だ。傷つけないでくれ」
俺は極力腕を動かさないようにしながら叫んだ。犬に噛まれた場合、急に引き抜いたり動かすとかえって危険なのだ。
「でも……」
唸り声を上げるサブローさんの首輪を抑えながらも、不満げな顔をするトゥリン。
「大丈夫だ」
俺はポケットから青い風呂敷を取り出すと、黒柴の目を塞いだ。
急に視界を奪われた黒柴は一瞬怯む。その隙に、俺は柴犬の横腹を蹴ってやる。
「ハッハッハッハッ」
俺の思わぬ反撃に、黒柴はカパリと口を開ける。その隙に、俺は素早く後に飛び退いた。
「シバタ!」
「大丈夫だ」
「でも、血が出てるです!」
モモに言われて腕を見る。
興奮していて気づかなかったが、確かにかなりの血が出てる。
大型犬に噛まれたならともかく、柴犬に噛まれただけでこんなにも血が出るものなのだろうか。
セーブルさんが腕を引く。
「こちらへ」
傷口に手をかざすセーブルさん。
赤く染まった腕が、見る見るうちに治癒していく。
「良かった」
ほっと息を吐く。
「ふはははははははハ」
頭上から甲高い笑い声が響いた。
「誰だ!?」
「この声は……」
聞き覚えがある。
「四天王の一人、ゾーラか! まだ生きていたとは」
船の中で戦って倒したと思っていたが、しぶとい奴め。
「ふふふふふ、よもや夢の中でのあの一戦だけで私を倒したつもりだったのか?」
だが闇の中から現れたのは、紺色のセーラー服を着た、黒髪の女の子だった。
この子、どこかで見覚えが……って!
「ムギちゃんの飼い主!?」
自分が転生した時のことを思い出す。
確かあの時、俺はムギちゃんとその飼い主に会って、それで犬好きな友達を作ろうと決意して、その後暴走したトラックに跳ねられて……
「まさか、ムギちゃんたちまでこちらの世界に来ていたとは」
ゾーラは笑う。
「この体の持ち主は、お前らが来たのとほぼ同時にこの世界にやって来た。私はこいつらの召喚の波動を察知し、先回りして不意打ちをし、この体を乗っ取ったのだ」
「なんて卑怯な」
もしかしてら俺の召喚に巻き込まれて?
それとも、俺は六割の確率で勇者とかミアキスは言っていたが、残りの四割はこの子という事なのだろうか。
「無駄話はいい」
低い声が柴犬ムギちゃんの方から聞こえてきた。
ムギちゃんの口は動いていないので、恐らく魔法かテレパシーのような力で声を出しているのだろう。
「さっさとコイツらを始末して魔王様を復活させよう」
「ああ、そうだな」
ゾーラが頷く。
「フフフ、この柴犬には俺の弟で、魔王四天王ガノフの魂が入っている。今は本体が無く魂だけの存在ではあるが、それでも今までの敵とは格が違う相手よ」
不気味な笑い声が響く。
確かに、目の前のムギちゃんからは今までの敵とは違うとてつもないオーラを感じる。
「シバタ、私は貴様の弱点をもう見抜いている」
「何だと?」
「貴様の弱点は――柴犬だ。可愛いワンコを傷つけることなんてできないだろう?」
ドキリと心臓が鳴る。
な、なんて卑怯なやつだ!
「この卑怯者め!」
トゥリンがゾーラに矢を放つ。
「よせ!」
ゾーラは今、ムギちゃんの飼い主に乗り移ってる。操られてるだけだ。
だが幸か不幸かゾーラは、ヒラリとその矢を避けた。
「ふふ、あとは頼んだぞ、ガノフ」
「ああ」
ゾーラはガノフを後に残し城の中に消えた。
「さて……」
黒柴――いや、四天王ガノフは俺ににじり寄る。
目の前に立っているだけで物凄い圧を感じる。一目で実力差があることが分かった。しかも、可愛い黒柴ちゃんの体の中に入っている。
「貴様が勇者か。何とも弱そうな面構えだ」
ガノフはフン、と鼻を鳴らす。
弱そうというか、弱いんだけど。
「パワータイプの俺と違って、兄貴は智謀タイプだから、貴様の弱点を色々と研究していたようだが、そんなに警戒する必要もあったようには見えないな」
「余計なお世話だ」
俺は武器を構えた。
畜生。こんなのどうやって戦えばいいんだ? 可愛いムギちゃんを傷つけるわけにはいかないし。
「こんなちっぽけな獣の体に入れられてどうなるかと思ったが、これなら貴様も倒せそうだな」
ガノフが笑う――瞬間、その体が消えた。
「シバタ!!」
「え?」
俺が戸惑っていると、急に黒い影が目の前に飛び込んできた。
早っ――
飛び散る鮮血。
首筋に鋭い痛み。
「シバタァァァァァァァ!!」
「ご主人!!」
見ると、俺の首筋にガノフが噛み付いている。血が噴水みたいに噴き出す。
あ、やばい。
これ、死んだわ。
--------------------------
◇柴田のわんわんメモ🐾
◼犬に噛まれた時の対処法
・引っ張ったりするのは犬の牙の構造上かえって危険。犬の目に布をかけたり水をかけるなどし、視界を覆うのが有効。犬が怯み口元を緩めた隙に腕を引き離そう。
・犬に噛まれた傷はすぐに水で洗い流し、消毒をする。犬の口の中には雑菌が沢山居るので大した傷でなくても病院へ行くこと。飼い主がいたら、連絡先や予防接種の接種歴などを聞ければベスト。
「私の名はウィートン。君たちは私が魔王側なんじゃないかと疑っているのかもしれないが、安心してくれ。私は君たちの味方だ」
「魔王は人間を憎んでいてオーガやオークを優遇していたのでは……」
セーブルさんが不思議そうな顔をする。
「前の政権の時は、この島では人間やオーガ、オーク、コボルトやケットシーも仲良く暮らしていた」
ウィートンはため息をついて遠くを見つめた。
「だけど封印から復活したゾーラが軍事政権を率いてクーデターを起こしてから、人間たちは住処《すみか》を終われたんだ」
ウィートンが言うには、島を去った人間たちに雇われていた多くのオーガも職を失い、そしてまもなく魔王復活のために重税がかけられるようになったのだという。
「そして困窮した住人たちは海賊や山賊になるようになり、国は荒廃してしまったんだ」
「そうだったのか」
ウィートンはガバリと頭を下げる。
「お願いだ! ゾーラを……魔王を倒してこの島に平和を取り戻してくれ!」
「ああ。そのつもりだ」
「ありがとうございます!!」
俺の手をがっしりと握るウィートン。
「今のまま街に降りればかなり目立ってしまいます。行動を起こすのは夜からがいいと思いますが、いかがでしょう、ここで身を隠しては」
「ああ、ありがとう。そうさせてもらおう」
「ではこちらも、その隙に反魔王の仲間に情報を伝えておきます」
そう言うとウィートンは何やら手紙を書き、伝書鳩にくくりつけて放した。
トゥリンがヒソヒソと耳打ちする。
「大丈夫か? 罠じゃないのか?」
「いや」
俺はウィートンをじっと見た。
「多分大丈夫だ。あの人は信頼出来る」
鳩を飛ばし終わったウィートンは、サブローさんの頭を嬉しそうに撫でている。
舌を出して尻尾を振るサブローさん。サブローさんはウィートンにすっかり懐いたようで、お腹まで出してゴロゴロしている。
「大丈夫、サブローさんの目に狂いは無いはずだ」
俺たちはウィートンの家に身を隠し、日が落ちるのを待つことにした。
◇◆◇
日が落ちるのを待って、俺たちは街に出た。
スカーフやフードで顔を覆い、目立たないようにして街を駆け抜ける。まるで忍者だ。
「オーガたち、案外夜は出歩かないんだな」
街には薄ぼんやりとした提灯の灯りはついているものの、道を歩いているオーガは少ない。
「当たり前だ。夜に遊び歩くなんて人間くらいだぞ。エルフもドワーフも、皆夜は家族と一緒に静かに過ごすのが当たり前だ」
「そうなのか」
残業も飲み会もないなんて、むしろ過ごしやすい社会なのかもしれない。
「城が見えてきたぞ」
目の前にある建物の影に潜み様子を窺う。
月が城の周りのお掘りと、大きな門の前にいる二体の大きなオーガを照らす。
「見張りがいるです」
確かに、門の前には二体のオーガが立っていて城を守っている。
その他にも、数人のオーラが代わる代わる城の前を巡回して歩いている。
「あの見張りをなんとかしないとな」
俺たちが物陰に身を隠しながら辺りを伺っていると、急にオーガたちがざわめき出した。
「火事だ!」
見ると、城の反対側の方から火の手が上がっている。
「敵襲か!?」
「反魔王派のやつらか!?」
恐らくウィートンとその仲間たちの仕業だろう。
バタバタとオーガたちが火の手の上がった方向へと駆けていき、城の見張りが門の前の二人だけになる。いけるか!?
「トゥリン、ここから門番を狙えるか?」
「ああ、やってみる」
トゥリンが見張りのオーガに向かって手をかざす。
「アイス!」
トゥリンの氷魔法によってピキピキと二体のオーガが凍っていく。
「よし」
オーガの服を漁り、門の鍵をゲットする。
門を静かに開け、俺たちは城に潜入した。
城は山の上に建っている。門は山の入口にあるため、門の先は長い石の階段が続いている。
ひょっとしたら門の先に大勢敵が待ち構えているんじゃないかとも思ったが、城へと続く石段はしんと静まり返っていた。
「えらく静かだな」
トゥリンも辺りを見回す。
「罠じゃないといいけど」
「気を抜かず進もう」
ソロリソロリとしばらく石段を進むと、魔王城が見えてきた。
「あと少しだ!」
が、俺たちが階段の頂上まであと少しと迫ったその時、黒い大きな物体がこちらに向かって飛んできた。
「うわっ!」
右腕に鋭い痛み。
見ると、右腕に黒い大きな柴犬がかぶりついている。
「――なっ」
柴犬!? この世界に、サブローさん以外の柴犬が存在したのか。
驚きと同時に感動が胸の奥にこみ上げてくる。この世界には、犬がいたんだ!
「シバタ!」
弓を引こうとするトゥリン。
サブローさんも牙をむいて黒柴に飛びかかろうとする。
「待て!!」
俺の声に、サブローさんたちは困惑した表情で動きを止めた。
「貴重な犬だ。傷つけないでくれ」
俺は極力腕を動かさないようにしながら叫んだ。犬に噛まれた場合、急に引き抜いたり動かすとかえって危険なのだ。
「でも……」
唸り声を上げるサブローさんの首輪を抑えながらも、不満げな顔をするトゥリン。
「大丈夫だ」
俺はポケットから青い風呂敷を取り出すと、黒柴の目を塞いだ。
急に視界を奪われた黒柴は一瞬怯む。その隙に、俺は柴犬の横腹を蹴ってやる。
「ハッハッハッハッ」
俺の思わぬ反撃に、黒柴はカパリと口を開ける。その隙に、俺は素早く後に飛び退いた。
「シバタ!」
「大丈夫だ」
「でも、血が出てるです!」
モモに言われて腕を見る。
興奮していて気づかなかったが、確かにかなりの血が出てる。
大型犬に噛まれたならともかく、柴犬に噛まれただけでこんなにも血が出るものなのだろうか。
セーブルさんが腕を引く。
「こちらへ」
傷口に手をかざすセーブルさん。
赤く染まった腕が、見る見るうちに治癒していく。
「良かった」
ほっと息を吐く。
「ふはははははははハ」
頭上から甲高い笑い声が響いた。
「誰だ!?」
「この声は……」
聞き覚えがある。
「四天王の一人、ゾーラか! まだ生きていたとは」
船の中で戦って倒したと思っていたが、しぶとい奴め。
「ふふふふふ、よもや夢の中でのあの一戦だけで私を倒したつもりだったのか?」
だが闇の中から現れたのは、紺色のセーラー服を着た、黒髪の女の子だった。
この子、どこかで見覚えが……って!
「ムギちゃんの飼い主!?」
自分が転生した時のことを思い出す。
確かあの時、俺はムギちゃんとその飼い主に会って、それで犬好きな友達を作ろうと決意して、その後暴走したトラックに跳ねられて……
「まさか、ムギちゃんたちまでこちらの世界に来ていたとは」
ゾーラは笑う。
「この体の持ち主は、お前らが来たのとほぼ同時にこの世界にやって来た。私はこいつらの召喚の波動を察知し、先回りして不意打ちをし、この体を乗っ取ったのだ」
「なんて卑怯な」
もしかしてら俺の召喚に巻き込まれて?
それとも、俺は六割の確率で勇者とかミアキスは言っていたが、残りの四割はこの子という事なのだろうか。
「無駄話はいい」
低い声が柴犬ムギちゃんの方から聞こえてきた。
ムギちゃんの口は動いていないので、恐らく魔法かテレパシーのような力で声を出しているのだろう。
「さっさとコイツらを始末して魔王様を復活させよう」
「ああ、そうだな」
ゾーラが頷く。
「フフフ、この柴犬には俺の弟で、魔王四天王ガノフの魂が入っている。今は本体が無く魂だけの存在ではあるが、それでも今までの敵とは格が違う相手よ」
不気味な笑い声が響く。
確かに、目の前のムギちゃんからは今までの敵とは違うとてつもないオーラを感じる。
「シバタ、私は貴様の弱点をもう見抜いている」
「何だと?」
「貴様の弱点は――柴犬だ。可愛いワンコを傷つけることなんてできないだろう?」
ドキリと心臓が鳴る。
な、なんて卑怯なやつだ!
「この卑怯者め!」
トゥリンがゾーラに矢を放つ。
「よせ!」
ゾーラは今、ムギちゃんの飼い主に乗り移ってる。操られてるだけだ。
だが幸か不幸かゾーラは、ヒラリとその矢を避けた。
「ふふ、あとは頼んだぞ、ガノフ」
「ああ」
ゾーラはガノフを後に残し城の中に消えた。
「さて……」
黒柴――いや、四天王ガノフは俺ににじり寄る。
目の前に立っているだけで物凄い圧を感じる。一目で実力差があることが分かった。しかも、可愛い黒柴ちゃんの体の中に入っている。
「貴様が勇者か。何とも弱そうな面構えだ」
ガノフはフン、と鼻を鳴らす。
弱そうというか、弱いんだけど。
「パワータイプの俺と違って、兄貴は智謀タイプだから、貴様の弱点を色々と研究していたようだが、そんなに警戒する必要もあったようには見えないな」
「余計なお世話だ」
俺は武器を構えた。
畜生。こんなのどうやって戦えばいいんだ? 可愛いムギちゃんを傷つけるわけにはいかないし。
「こんなちっぽけな獣の体に入れられてどうなるかと思ったが、これなら貴様も倒せそうだな」
ガノフが笑う――瞬間、その体が消えた。
「シバタ!!」
「え?」
俺が戸惑っていると、急に黒い影が目の前に飛び込んできた。
早っ――
飛び散る鮮血。
首筋に鋭い痛み。
「シバタァァァァァァァ!!」
「ご主人!!」
見ると、俺の首筋にガノフが噛み付いている。血が噴水みたいに噴き出す。
あ、やばい。
これ、死んだわ。
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◇柴田のわんわんメモ🐾
◼犬に噛まれた時の対処法
・引っ張ったりするのは犬の牙の構造上かえって危険。犬の目に布をかけたり水をかけるなどし、視界を覆うのが有効。犬が怯み口元を緩めた隙に腕を引き離そう。
・犬に噛まれた傷はすぐに水で洗い流し、消毒をする。犬の口の中には雑菌が沢山居るので大した傷でなくても病院へ行くこと。飼い主がいたら、連絡先や予防接種の接種歴などを聞ければベスト。
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