高校生恋愛短編

ワンコ

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詩は春樹に想いを寄せていた。
自分でも気づかないうちに、、いつからということもなく好きだった。しかし、詩は後輩春樹に気を遣わせると考え、告白に踏み切れないでいた。
今日も一緒に帰り、夜はLINEをする。詩は告白により今の関係が崩れる事を最も恐れていた。


今日は雨が降っている。
水溜りに映る曇天は詩の心を落ち込ませる。受験を控えた重い気持ちで毎日のように予備校に足を運ぶ。部活を引退してからは直接春樹と話すことは少なくなった。度々ベットの上で一言
「ーはるきー」
そう呟いてみても心の穴は塞がらず。そればかりか、やり場のない寂しさが深みを増すばかりであった。


帰路。空が赤みを帯び、小雨、隣には春樹がーーーー

2人はいつもの何気ない会話を交わしながら歩き続ける。
(ああ、この時間がずっと続けばいいのに)
小雨が雨足を強める。
「傘さしたいねんけど」
ふっと口にした言葉に焦燥した。
「ええよ」
春樹は言う。後に引けなくなった詩は躊躇いながらも傘を開いた。前には相合傘をしているカップルがいる。
詩は覚悟を決めた。礼儀的に傘に入るのか聞かなければならない。そしてこれは春樹の詩に対する気持ちを確認する為の言葉でもあった。詩は心を落ち着け丁寧に声を掛けた。


「傘、入る?」

「いや、気まずいわ笑」

詩の傘は2人の視線を遮るように目深になった。詩は自然と視線を悟られないようにしていた。

「あぁ、私は、、、ダメだったみたいだ」

心の中でそう呟く。潤んだ目を隠し、嗚咽を防ぐため口をつぐんだ。
私の片想いだった。
必然的にはるきの気持ちを知ってしまった。怖かった、知りたくなかった、今まで必死に避けてきた問いなのに。
カップルの後ろを後輩と歩く。

「なんか気まずいなー笑笑」

春樹がこの雰囲気を変えようとしていることは分かる。
だが、春樹が誤魔化そうとする度に、私との関係の発展を嫌がっているのが痛い程分かった。



詩はその夜、ベットの上で眠れないでいた。

彼は私との関係の発展を嫌った。
何故、LINEをしたり、一緒に帰ったりしてくれるのだろうか。

好きでもないくせに思わせぶりな態度しないでよ。最低、はるきを恨みたい……けど…

やっぱり好き。


この気持ちはしまっておこう。
春樹とは距離を置かなければ。
この気持ちを抑えられなくなる前に、、迷惑をかけるぐらいなら、、。
詩は山本春樹との関係が薄れていく運命を悟った。
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