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第参話:夜半町
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「ずっと夜じゃん」
その言葉が頭の中でグルグルと回り続けていた。ずっと夜?言ってる意味が分からない。だってそんなことあるわけがない。ここは日本だよ…?
「…あー、なるほどねぇ。そういうことか…」
ユカリさんは何か分かったみたいだった。何なの?一人で納得しないでよ…。一人ぼっちにしないでよ…。
「…サエ。どうする?帰る?一応私としては帰ったほうがいいと思うけど」
「ま、待ってよ。どういうことなの?ここって夜ノ見町じゃないの…?」不安になってユカリさんに尋ねる。
「…ここは君の知ってる夜ノ見町じゃない。この町は夜が明けることのない町。夜半町ってところかな」
「夜半町がいつからあるのかは私にも分からない。でも、私も気が付いた時にはここにいた。ここに来る条件もよく分からない」
じゃあ、こういうことなのだろうか?私は裏の夜ノ見町みたいなところに何らかの理由で来てしまった。何故来れたのかは分からないと…。
どうすればいいのだろう。帰りたい気持ちもある。でも、帰りたくない気持ちもある。オバケは怖いけど、でももしかしたら人間の方がもっと…。昔から周りに良いように使われてきた私にとって、自分で答えを出すのはとても難しいことだった。
「サエ、帰りたくないんなら別にいてもいいよ?君が残る選択をするんなら、私は君のことを可能な限り守るつもりだし」
ユカリさんの優しさと自分の情けなさに涙が出る。…せっかくだ。残ろう。どうせ私がいなくったって誰も困らないんだろうし。私は涙を拭い、ユカリさんに言った。
「もう少し、残ることにします」
「…そう。分かった。君が決めたんならそうすればいい」
ユカリさんが少し笑ったような気がした。
「いやしかし、参ったな」
台所にお茶を取りに行っていたユカリさんが戻ってくるなりそう言った。一体何だろう?
「さっき台所の方に紙が貼ってあったんだけど、どうやら他の皆はしばらく帰ってこないっぽい」
「え…それはどういう…」
「この家を管理してる…まあ、私たちのまとめ役みたいなのがいるんだけど、そいつがどうもいなくなったらしくてね。皆で探してるみたいだ」
「そ、それなら…ユカリさんも探しに行った方がいいんじゃ…」
「ん、まあそれもいいけど…その間サエ一人になるけどいい?」
「その時は、わ、私も行くって…!」
「じょーだんだよ。いつものことさ。すぐフラッといなくなるんだ。どうせすぐに見つかるよ」
その時だった。突然、家の扉が開く音がした。私の体は一瞬にして硬直し、嫌な汗が出てきていた。だが、以外にも私の前に現れたのはオバケなどではなく、一人の女性だった。鋭い目元からは赤い瞳が覗き、癖のついた黒髪は闇の様に黒かった。身長はどの位だろう。明らかに私よりも大きく、見上げるほどだった。
「あれぇ、ハラエじゃん?どうしたの?見つかった?」驚いたことにユカリさんは自分よりも大きな相手にも私に話すのと同じ様に喋った。…ちょっぴりかっこいいと思った。
「あ…ユカリさん…あの、ね。皆で、探し、たんだけど…全然、見つからなくて、その…手伝ってくれたら、嬉しいかな…なんて…」
…ハラエと呼ばれた人の見た目とのギャップが一番驚いた。
その言葉が頭の中でグルグルと回り続けていた。ずっと夜?言ってる意味が分からない。だってそんなことあるわけがない。ここは日本だよ…?
「…あー、なるほどねぇ。そういうことか…」
ユカリさんは何か分かったみたいだった。何なの?一人で納得しないでよ…。一人ぼっちにしないでよ…。
「…サエ。どうする?帰る?一応私としては帰ったほうがいいと思うけど」
「ま、待ってよ。どういうことなの?ここって夜ノ見町じゃないの…?」不安になってユカリさんに尋ねる。
「…ここは君の知ってる夜ノ見町じゃない。この町は夜が明けることのない町。夜半町ってところかな」
「夜半町がいつからあるのかは私にも分からない。でも、私も気が付いた時にはここにいた。ここに来る条件もよく分からない」
じゃあ、こういうことなのだろうか?私は裏の夜ノ見町みたいなところに何らかの理由で来てしまった。何故来れたのかは分からないと…。
どうすればいいのだろう。帰りたい気持ちもある。でも、帰りたくない気持ちもある。オバケは怖いけど、でももしかしたら人間の方がもっと…。昔から周りに良いように使われてきた私にとって、自分で答えを出すのはとても難しいことだった。
「サエ、帰りたくないんなら別にいてもいいよ?君が残る選択をするんなら、私は君のことを可能な限り守るつもりだし」
ユカリさんの優しさと自分の情けなさに涙が出る。…せっかくだ。残ろう。どうせ私がいなくったって誰も困らないんだろうし。私は涙を拭い、ユカリさんに言った。
「もう少し、残ることにします」
「…そう。分かった。君が決めたんならそうすればいい」
ユカリさんが少し笑ったような気がした。
「いやしかし、参ったな」
台所にお茶を取りに行っていたユカリさんが戻ってくるなりそう言った。一体何だろう?
「さっき台所の方に紙が貼ってあったんだけど、どうやら他の皆はしばらく帰ってこないっぽい」
「え…それはどういう…」
「この家を管理してる…まあ、私たちのまとめ役みたいなのがいるんだけど、そいつがどうもいなくなったらしくてね。皆で探してるみたいだ」
「そ、それなら…ユカリさんも探しに行った方がいいんじゃ…」
「ん、まあそれもいいけど…その間サエ一人になるけどいい?」
「その時は、わ、私も行くって…!」
「じょーだんだよ。いつものことさ。すぐフラッといなくなるんだ。どうせすぐに見つかるよ」
その時だった。突然、家の扉が開く音がした。私の体は一瞬にして硬直し、嫌な汗が出てきていた。だが、以外にも私の前に現れたのはオバケなどではなく、一人の女性だった。鋭い目元からは赤い瞳が覗き、癖のついた黒髪は闇の様に黒かった。身長はどの位だろう。明らかに私よりも大きく、見上げるほどだった。
「あれぇ、ハラエじゃん?どうしたの?見つかった?」驚いたことにユカリさんは自分よりも大きな相手にも私に話すのと同じ様に喋った。…ちょっぴりかっこいいと思った。
「あ…ユカリさん…あの、ね。皆で、探し、たんだけど…全然、見つからなくて、その…手伝ってくれたら、嬉しいかな…なんて…」
…ハラエと呼ばれた人の見た目とのギャップが一番驚いた。
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