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懺悔
しおりを挟む彼女がコンクールで賞を取るたび、メディアも大々的に取り上げた。
どんな小さなコンクールでも、彼女を追う記者が会場まで来て、他の参加者にインタビューをすることもあったんだ。
中には結構しつこい記者もいて、コンクールに集中したい参加者たちから疎ましがられた。その反感の矛先は、段々と彼女へと向かっていった。
コンクールの控え室で、彼女を悪く言う声も聞こえるようになってきた。
有名ピアニストの娘だから優遇されてるとか、メディアが言うほど実力ないだろとか、彼女の演奏を聞いておいてそんなはずないってわかってるはずなのに、どうしても認めたくなかったんだろう。
僕も打ちのめされた一人だし、気持ちはわからなくもないけど。
僕は彼女がそんな嫉妬の声で傷付いてしまわないか心配だった。
彼女の音が濁ってしまわないか恐れて、悪口を叩く奴らに直接注意したりもした。
ただ、彼女は気にしなかったのか、それとも気付いていなかったのか、特に変わらなかった。
いつも通り圧倒的な演奏を披露して、彼らの口を黙らせるんだ。
彼女に出会って、たった五ヶ月。僕の人生を大きく変えた、五ヶ月。
そしてあの夏が来る。
僕が死ぬほど後悔することになるあの夏が、来てしまったんだ。
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