亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア

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懺悔

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 それから僕は彼女が参加するコンクールに片っ端から応募した。

 彼女は大会の規模に関係なくほとんどのコンクールに参加していたから、意外と頻繁に会えて、僕は嬉しくて仕方なかった。

 まあ、彼女の眼中に僕は一切映っていなかっただろうけどね。

 でもそれで構わなかった。僕は舞台上で受けたあの衝撃を味わうためなら、なんだって良かった。


 もちろん演奏順はランダム抽選だから、彼女と離れることは多かった。その時僕は関係者に頼み込んで、舞台上から見学を特別に許してもらったものさ。

 彼女という天才ピアニストが現れても、僕は一応それなりに優秀なピアニストとして扱われていたから、思ったよりすんなり頼みを聞いてくれたんだけどね。


 彼女の演奏が造る世界に浸るのはこれ以上ない至福の時間だった。

 録音や動画だけじゃ絶対に味わえない、この感覚。彼女の紡ぐ音が僕の身体に染み渡って、心奪われる。他のことなんて何も考えられないくらいに。


 コンクールの賞はすべて彼女が総なめにした。僕はいつも二位で、そこが定位置になった。

 結果なんて、どうでもよかった。僕は彼女の演奏を同じ舞台で聴くことが目的で、コンクールの順位なんて副産物くらいしにか捉えていなかったから。


 コンクールが終わると、次のコンクールまで待ち遠しくて堪らなかった。

 彼女に会いたい。彼女の演奏がまた聴きたい。指折り数えてその日が来るのを待っていた。


 僕は彼女の狂信者になっていた。
 自分のピアノなど二の次で、彼女のピアノにどっぷりとのめり込んでいたのだから。……ごめん、引かないで。


 でも、突然現れた彼女という稀有の才能の持ち主を、面白く思わない奴も……いたんだ。
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