19 / 44
15話 互いに
しおりを挟む夜の闇の中、商売柄もあってあまりに眠れぬもんだから、
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
「ノベリスト」
セバスーS.P
青春
泉 敬翔は15歳の高校一年生。幼い頃から小説家を夢見てきたが、なかなか満足のいく作品を書けずにいた。彼は自分に足りないものを探し続けていたが、ある日、クラスメイトの**黒川 麻希が実は無名の小説家「あかね藤(あかね ふじ)」であることを知る。
彼女の作品には明らかな欠点があったが、その筆致は驚くほど魅力的だった。敬翔は彼女に「完璧な物語を一緒に創らないか」と提案する。しかし、麻希は思いがけない条件を出す——「私の条件は、あなたの家に住むこと」
こうして始まった、二人の小説家による"完璧な物語"を追い求める共同生活。互いの才能と欠点を補い合いながら、理想の作品を目指す二人の青春が、今動き出す——。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる