亡き少女のためのベルガマスク

二階堂シア

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懺悔

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 僕の話を、聞いてくれるだろうか。……少し長くなるかもしれないけど。


 僕は最初、別にピアノに興味はなかったんだ。割と活発な方で、ピアノよりも野球とかのスポーツの方が好きだった。

 親が僕の可能性を一つでも広げたいって教育方針だったから、習い事でピアノをさせられていなかったら、きっと鍵盤に触れることさえなかったと思う。


 ピアノを始めたのは六歳の時。別にピアニストを目指していたわけじゃなかったから、始めた年齢は遅かったんだ。

 でも、始めてからは早かった。バイエルとブルグミュラーを数ヶ月で終わらせ、僕はすぐにピアノソナタを弾きこなした。
 大抵の音楽は一度聞けば再現できる絶対音感を持っていたし、楽譜の理解も一読で出来たんだ。


 ピアノの先生や両親は僕のことを天才だの神童だのって騒いで、すぐに有名なピアノ教師を僕に宛てがった。
 この子は絶対にこの世を揺るがすほどのピアニストになるんだって期待して。


 僕も、割と満更じゃなかった。
 正直に言えば、同年代の子たちのピアノを聞いて、『なんて低レベルなんだ?』って馬鹿にしてた。
 こんな簡単すぎる曲を、どうしてみんなは上手く弾けずにつまずいているのか本当に不思議で理解できなかった。


 初めて出たコンクールも、当然一位を取った。
 僕の演奏に適う人なんていなかったし、僕もそれを当然だと思ってた。

 今思うと、とんでもなく傲慢な子供だったね。
 周りが僕を『特別な存在』だと囃し立てる声にも、鼻で笑って返していたような奴だったから。


 そんな僕の驕心きょうしんは年を重ねるごとに大きくなり、十二歳になる頃には完全に天狗になっていた。

 僕のピアノを超える存在なんて、この先一生現れない。僕はピアノに選ばれた人間なのだから。


 ──そう、思っていた。『彼女』が現れる、あの日までは。
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