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1話 僕の罪
しおりを挟む熱が体内で煮えたぎり、汗が生まれるように雫を作って肌を濡らしていく。
木に密集した蝉の鳴き声がうるさい。ジリジリジリと僕の耳から頭に響いて、塞ぎたくなる。
──でも僕は、君から目が離せなかった。
ある夏の日、君は知らない誰かに傷付けられていた。
凶悪な見えない刃が君を切り刻む。多数の人々がいる中で、見ている中で、君は襲われている。
君は抵抗する術もなく、ただ立ち尽くしている。痛みはあるはずなのに、声を上げることはない。耐えるのみだ。
でも、誰も助けない。確かに君は今無数の刃で貫かれているのに、誰も守ろうとしない。動かない。これだけの人がいるのに、誰も。
それは僕も同じだ。傍観者。ただの傍観者。
……いや、卑怯者と言う方が正しいのか。
その日、君は殺されてしまった。
僕は、守ることができたはずなんだ。
君が殺されるのを、止められたはずだったんだ。
でも僕は、何もしなかった。ただ見ていることしかできなかった。
時間が戻せたらと……何度後悔したことだろう。それでも現実は無常に流れていく。時間が戻ることなどない。
僕は君を生き返らせたい。君がそれを望んでいなくとも、僕は君にもう一度生きて欲しいんだ。
君が生き返ったその時、僕は死ぬかもしれない。
でもそれでいい。君の手で僕を殺してくれるのなら──本望だ。
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