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22話 不完全な聖女②

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 更に紙を捲っていくと、不自然に真っ白な、何も書かれていない紙が唐突に現れた。

「? 何かしらこの紙……」

 つい声に出すと、レグランが反応する。

「ああ、当時の書記のミスなのか、何も書かれていない紙が綴られてしまったみたいですね」

「ふーん……」

 相槌を打ちながら、真っ白なページを指でなぞる。
 するとほんの一瞬だけ、なぞった部分が不自然に青白く光った……気がした。

「……ねえ、レグラン。じっと見られていたら読みにくいわ。少しあっちに行ってなさい。読み終わったら呼ぶから」

 その紙に妙な違和感を持った私は、レグランをこの場から離れるように仕向ける。
 レグランが私に背を向けて遠くの本棚の方へ向かったのを確認して、バレないように手をかざして青い光を放った。

「!」

 すると、何もなかった紙に文字がぶわっと一気に浮かび上がる。
 レグランがこちらを見ていないのをチェックしてから、夢中でその文字を追った。


 ──聖女の力を使うと身体に異常な負荷がかかる者は、このページを必ず読みなさい。

 ここまでの記録を見て、聖女は力を際限なく使えることがわかったでしょう。
 でも私みたいに、力を使うと身体に重い負荷がかかり、しばらく休まないと倒れてしまう体質の者がいる。

 それが私だけならいい。
 でももし後世にも同じ体質の者が現れたら参考にして欲しい。

 憶測でしかないが、多分私は聖女の力を使うたび、生命力を消費している。
 ……つまり、自分の命を削っているということ。

 何故そんなことがわかるのか。
 これを書いている私は今十八歳なのに、髪が老婆のように真っ白になり、肌もボロボロ。
 腕も足も痩せ細り、自力で歩くことすら出来ず、寝たきりの身体になってしまったから。

 まるで一気に老いが来てしまったかのように、身体中が悲鳴を上げている。

 記録を読む限り前の聖女はそんなことないのに、どうして私がそんな体質なのかわからなかった。
 ……でも、私が死に近付いていると感じて来た頃、突然第二の聖女が現れ、ベッドで横になって動けない私に言ったのだ。

『今までご苦労さまでした。あなたは不完全な聖女でしたから、新たに私が生み出されました。もうあなたの役目は終わりましたよ。どうぞ、心置きなく死んでくださいね』

 このページも最後の聖女の力を使って書いている。
 多分、公式の記録には私のことは記載されない。
 第二の聖女が本物で、私は偽物だったと言われているから。

 もうすぐ私は死を迎える。
 これを読んでいる不完全な聖女のあなた、悪いことは言わない。

 今すぐ救いを求める人など見捨てて逃げなさい。
 聖女の力を使わない限りは、恐らく人間の寿命ぐらいは生きられるはず。

 聖女だって人間なのだから、生きる権利はある。
 見知らぬ誰かの為に、あなたが犠牲になる必要はない。

 どうか逃げて生き延びて。
 私のような悲惨な人生を歩まないで。


 ──そこで、メッセージは終わっていた。
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