4 / 76
4話 悪役令嬢の性格を持った聖女①
しおりを挟む
目を覚ますと、視界に映ったのは一面の白だった。
……ああ、ここは天国なのかしら。
処刑されて転生してまた死んだの?
私の人生忙しいわね。
というか、すぐ死ぬなら転生なんてさせないでよね。振り回されるこっちの身にもなってよ。
「気が付いたか」
「ひいっ!?」
不貞腐れながら私を転生させている誰かに心の中で文句をぶつけていると、突然視界の端にさっきの王太子の姿が現れる。思わず声を出して驚いた。
王太子……ライナスにため息をつかれた。
「君はつくづく失礼な人だな。まるで化け物でも見たかのように」
「……失礼致しました。てっきり私は死んだのだと思っていたものですから」
視界に映っていた一面の白は天蓋ベッドの布の色だったらしい。
意識がほとんどはっきりした今、ようやく自分がどこかの部屋の一室で横になっているという状況を理解する。
起き上がろうとすると、ライナスが身体を支えてくれた。
「君は過労で倒れたようだ。死に至るような病などではない」
「過労……」
ただの過労と聞いて、幾分か安堵する。
転生した新たな身体が、重い持病持ちだったら嫌だなと思っていたから。
ところでここはどこなのかしら。
王太子のライナスがいるということは、もしかして……。
きょろきょろと辺りを見回すと、部屋に置いてあるドレッサーの鏡の中にいる女性と目が合う。
ミルキーブロンドのふわふわとした髪、ハチミツのような瞳の色。
見た目十六、七歳くらいの可愛らしい雰囲気の人がそこにいた。
きっつい吊り目で底意地の悪そうな顔だったジェナとは正反対の、清楚系で優しそうな顔付き。
頬に手を当てると、女性も同じ動作をする。
どうやらこの姿が今世の私なのだと理解する。
それから更に部屋を見回す動作をすると、私の疑問を察したライナスが答えてくれた。
「ハイルドレッド王城、客間の一室だ。しばらくはここで身体を休めるといい」
「! いえ、そこまでご迷惑をおかけするわけにはいきませんわ。動けるようになったらすぐにお暇致します」
「……悪いが、君を帰せない事情が出来たんだ。アイヴィ嬢」
「……え? あい、……何ですって?」
突然ライナスの口から飛び出した聞き覚えのない名前に、言葉を詰まらせつつ聞き返す。
ライナスは腕を組んだ。
「君が身に着けていたペンダント、悪いが調べさせてもらった。そこに君の名前の刻印と、伝説にしか存在しない宝石がはめ込まれていてね」
「はあ……」
あのおもちゃみたいな宝石が伝説の宝石?
到底そうは思えないのだけど……何かの間違いじゃないの?
曖昧に相槌を打つ。ライナスは淡々と説明を続けた。
「ハルモクリスタルと言うものだが、それは五百年に一度しか現れない、聖女の存在が持つものだとされている」
「はあ……。……はあ?」
せいじょ?
せいじょって……聖なる女って書くあの聖女?
前世の世界で司祭くらいはいたけれど、聖女なんてファンタジックな存在はいなかった。
この世界は魔物や聖女なんてワードが当たり前に出て来るところなんだと認識する。
「だがもしかしたら、君は偶然ペンダントを拾っただけの可能性もある。そう思って君の手にこの宝石を触れさせてみたんだ」
ライナスは懐からペンダントを取り出すと、私の手を取って宝石部分に触れさせる。
すると、宝石からパアッと青い光が放たれる。その眩しさに、反射的に目を細めた。
「! 何……!?」
「このハルモクリスタルは聖女が触れると青く光ると言われている。他の者にも触らせてみたが全くと言っていいほど何の反応も見せなかった」
つまりそれって……それって──。
ライナスの言わんとしていることを理解し、顔をピクピクと引き攣らせる。
「君は本物の聖女だ。アイヴィ嬢」
「う、嘘……」
悪役令嬢の次は、聖女……!?
また面倒くさそうな役割引いてるじゃないの!!
……ああ、ここは天国なのかしら。
処刑されて転生してまた死んだの?
私の人生忙しいわね。
というか、すぐ死ぬなら転生なんてさせないでよね。振り回されるこっちの身にもなってよ。
「気が付いたか」
「ひいっ!?」
不貞腐れながら私を転生させている誰かに心の中で文句をぶつけていると、突然視界の端にさっきの王太子の姿が現れる。思わず声を出して驚いた。
王太子……ライナスにため息をつかれた。
「君はつくづく失礼な人だな。まるで化け物でも見たかのように」
「……失礼致しました。てっきり私は死んだのだと思っていたものですから」
視界に映っていた一面の白は天蓋ベッドの布の色だったらしい。
意識がほとんどはっきりした今、ようやく自分がどこかの部屋の一室で横になっているという状況を理解する。
起き上がろうとすると、ライナスが身体を支えてくれた。
「君は過労で倒れたようだ。死に至るような病などではない」
「過労……」
ただの過労と聞いて、幾分か安堵する。
転生した新たな身体が、重い持病持ちだったら嫌だなと思っていたから。
ところでここはどこなのかしら。
王太子のライナスがいるということは、もしかして……。
きょろきょろと辺りを見回すと、部屋に置いてあるドレッサーの鏡の中にいる女性と目が合う。
ミルキーブロンドのふわふわとした髪、ハチミツのような瞳の色。
見た目十六、七歳くらいの可愛らしい雰囲気の人がそこにいた。
きっつい吊り目で底意地の悪そうな顔だったジェナとは正反対の、清楚系で優しそうな顔付き。
頬に手を当てると、女性も同じ動作をする。
どうやらこの姿が今世の私なのだと理解する。
それから更に部屋を見回す動作をすると、私の疑問を察したライナスが答えてくれた。
「ハイルドレッド王城、客間の一室だ。しばらくはここで身体を休めるといい」
「! いえ、そこまでご迷惑をおかけするわけにはいきませんわ。動けるようになったらすぐにお暇致します」
「……悪いが、君を帰せない事情が出来たんだ。アイヴィ嬢」
「……え? あい、……何ですって?」
突然ライナスの口から飛び出した聞き覚えのない名前に、言葉を詰まらせつつ聞き返す。
ライナスは腕を組んだ。
「君が身に着けていたペンダント、悪いが調べさせてもらった。そこに君の名前の刻印と、伝説にしか存在しない宝石がはめ込まれていてね」
「はあ……」
あのおもちゃみたいな宝石が伝説の宝石?
到底そうは思えないのだけど……何かの間違いじゃないの?
曖昧に相槌を打つ。ライナスは淡々と説明を続けた。
「ハルモクリスタルと言うものだが、それは五百年に一度しか現れない、聖女の存在が持つものだとされている」
「はあ……。……はあ?」
せいじょ?
せいじょって……聖なる女って書くあの聖女?
前世の世界で司祭くらいはいたけれど、聖女なんてファンタジックな存在はいなかった。
この世界は魔物や聖女なんてワードが当たり前に出て来るところなんだと認識する。
「だがもしかしたら、君は偶然ペンダントを拾っただけの可能性もある。そう思って君の手にこの宝石を触れさせてみたんだ」
ライナスは懐からペンダントを取り出すと、私の手を取って宝石部分に触れさせる。
すると、宝石からパアッと青い光が放たれる。その眩しさに、反射的に目を細めた。
「! 何……!?」
「このハルモクリスタルは聖女が触れると青く光ると言われている。他の者にも触らせてみたが全くと言っていいほど何の反応も見せなかった」
つまりそれって……それって──。
ライナスの言わんとしていることを理解し、顔をピクピクと引き攣らせる。
「君は本物の聖女だ。アイヴィ嬢」
「う、嘘……」
悪役令嬢の次は、聖女……!?
また面倒くさそうな役割引いてるじゃないの!!
0
お気に入りに追加
260
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆
白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』
女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。
それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、
愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ!
彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます!
異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆
《完結しました》
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜
雪野 結莉
恋愛
魔物を倒す英雄となる運命を背負って生まれた侯爵家嫡男ルーク。
しかし、赤ん坊の時に魔獣に襲われ、顔に酷い傷を持ってしまう。
英雄の婚約者には、必ず光の魔力を持つものが求められる。そして選ばれたのは子爵家次女ジーナだった。
顔に残る傷のため、酷く冷遇された幼少期を過ごすルークに差し込んだ一筋の光がジーナなのだ。
ジーナを誰よりも大切にしてきたルークだったが、ジーナとの婚約を邪魔するものの手によって、ジーナは殺されてしまう。
誰よりも強く誰よりも心に傷を持つルークのことが死してなお気になるジーナ。
ルークに会いたくて会いたくて。
その願いは。。。。。
とても長いお話ですが、1話1話は1500文字前後で軽く読める……はず!です。
他サイト様でも公開中ですが、アルファポリス様が一番早い更新です。
本編完結しました!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
悪役令嬢は所詮悪役令嬢
白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」
魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。
リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。
愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。
悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる