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4話 悪役令嬢の性格を持った聖女①

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 目を覚ますと、視界に映ったのは一面の白だった。

 ……ああ、ここは天国なのかしら。
 処刑されて転生してまた死んだの?
 私の人生忙しいわね。
 というか、すぐ死ぬなら転生なんてさせないでよね。振り回されるこっちの身にもなってよ。

「気が付いたか」

「ひいっ!?」

 不貞腐れながら私を転生させている誰かに心の中で文句をぶつけていると、突然視界の端にさっきの王太子の姿が現れる。思わず声を出して驚いた。
 王太子……ライナスにため息をつかれた。

「君はつくづく失礼な人だな。まるで化け物でも見たかのように」

「……失礼致しました。てっきり私は死んだのだと思っていたものですから」

 視界に映っていた一面の白は天蓋ベッドの布の色だったらしい。
 意識がほとんどはっきりした今、ようやく自分がどこかの部屋の一室で横になっているという状況を理解する。

 起き上がろうとすると、ライナスが身体を支えてくれた。

「君は過労で倒れたようだ。死に至るような病などではない」

「過労……」

 ただの過労と聞いて、幾分か安堵する。
 転生した新たな身体が、重い持病持ちだったら嫌だなと思っていたから。

 ところでここはどこなのかしら。
 王太子のライナスがいるということは、もしかして……。

 きょろきょろと辺りを見回すと、部屋に置いてあるドレッサーの鏡の中にいる女性と目が合う。

 ミルキーブロンドのふわふわとした髪、ハチミツのような瞳の色。
 見た目十六、七歳くらいの可愛らしい雰囲気の人がそこにいた。

 きっつい吊り目で底意地の悪そうな顔だったジェナとは正反対の、清楚系で優しそうな顔付き。

 頬に手を当てると、女性も同じ動作をする。
 どうやらこの姿が今世の私なのだと理解する。

 それから更に部屋を見回す動作をすると、私の疑問を察したライナスが答えてくれた。

「ハイルドレッド王城、客間の一室だ。しばらくはここで身体を休めるといい」

「! いえ、そこまでご迷惑をおかけするわけにはいきませんわ。動けるようになったらすぐにお暇致します」

「……悪いが、君を帰せない事情が出来たんだ。アイヴィ嬢」

「……え? あい、……何ですって?」

 突然ライナスの口から飛び出した聞き覚えのない名前に、言葉を詰まらせつつ聞き返す。
 ライナスは腕を組んだ。

「君が身に着けていたペンダント、悪いが調べさせてもらった。そこに君の名前の刻印と、伝説にしか存在しない宝石がはめ込まれていてね」

「はあ……」

 あのおもちゃみたいな宝石が伝説の宝石?
 到底そうは思えないのだけど……何かの間違いじゃないの?

 曖昧に相槌を打つ。ライナスは淡々と説明を続けた。

「ハルモクリスタルと言うものだが、それは五百年に一度しか現れない、聖女の存在が持つものだとされている」

「はあ……。……はあ?」

 せいじょ?
 せいじょって……聖なる女って書くあの聖女?

 前世の世界で司祭くらいはいたけれど、聖女なんてファンタジックな存在はいなかった。
 この世界は魔物や聖女なんてワードが当たり前に出て来るところなんだと認識する。

「だがもしかしたら、君は偶然ペンダントを拾っただけの可能性もある。そう思って君の手にこの宝石を触れさせてみたんだ」

 ライナスは懐からペンダントを取り出すと、私の手を取って宝石部分に触れさせる。
 すると、宝石からパアッと青い光が放たれる。その眩しさに、反射的に目を細めた。

「! 何……!?」

「このハルモクリスタルは聖女が触れると青く光ると言われている。他の者にも触らせてみたが全くと言っていいほど何の反応も見せなかった」

 つまりそれって……それって──。

 ライナスの言わんとしていることを理解し、顔をピクピクと引き攣らせる。

「君は本物の聖女だ。アイヴィ嬢」

「う、嘘……」

 悪役令嬢の次は、聖女……!?
 また面倒くさそうな役割引いてるじゃないの!!

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