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七章 Revenge
十二月 <断罪> 2
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教室の時計が十七時を指したのを確認して
俺は廊下へ出た。
誰もいない静かな廊下を歩いて
俺は屋上へ向かった。
屋上の扉の前に立ってノブに手を掛ける。
当然、扉は開かない。
俺はポケットから鍵を出して鍵穴に差し込んだ。
鍵を捻るとカチリと音がした。
ノブを回して体重をかけると
扉はゆっくりと開いた。
太陽はつい先ほど西の空にその姿を消していた。
俺は一人フェンス越しに校庭を見た。
校庭には誰もいなかった。
顔に風を感じた。
その風は冷たく、
昼間の暖かさが嘘のように気温が下がっていた。
今夜から雪が降る。
その雪は三日間降り続け、
そして月曜日の終業式の日には
校庭を埋め尽くすだろう。
この二度目の歴史の中でも
唯一変わらないものがある。
人の手が及ばないもの。
自然現象だ。
俺はフェンスに沿ってゆっくりと西へ歩いた。
最西端まで来たところで足を止めた。
そしてポケットから封筒を出すと、
それを丸めてフェンスの網へ突っ込んだ。
これなら風が吹いても
飛ばされることはないだろう。
ふたたび中央付近まで戻ったところで
さきほどのフェンスの方を振り返ると、
辛うじて封筒の存在が確認できた。
こうしているとボス猿の死体を見つけた
あの日のことが思い出される。
花壇に倒れているボス猿の姿が浮かんで
俺は慌てて頭を振った。
肌に触れる空気が冷たさを増した。
また少し気温が下がったようだ。
もっと着込んでくるべきだった
と俺は少し後悔した。
その時、屋上の扉が開いた。
扉の陰から男が顔を出した。
男はキョロキョロと辺りを窺っていたが、
俺に気付くと警戒しながら
ゆっくりとこちらへ歩いてきた。
お互いの顔がはっきりと見える位置まで来ると
男の足が止まった。
俺と男の距離は十メートルほど離れていた。
男はオールバックの白髪に
サングラスをかけていた。
そして口髭を生やしていた。
茜の話した通りの容姿だった。
男が僅かに動揺しているのがわかった。
俺はそれを見逃さず一歩だけ前に進み出た。
俺は男を上から下まで観察した。
信じられないことだが、
本当に見たことのない男だった。
三人の内の誰かが変装していると考えた場合、
前田利通ではないことは明らかだった。
前田利通に比べて明らかに身長が低い。
つまり伊達孝允か織田隆盛ということになる。
しかし、今更男の正体などどうでもよかった。
俺は廊下へ出た。
誰もいない静かな廊下を歩いて
俺は屋上へ向かった。
屋上の扉の前に立ってノブに手を掛ける。
当然、扉は開かない。
俺はポケットから鍵を出して鍵穴に差し込んだ。
鍵を捻るとカチリと音がした。
ノブを回して体重をかけると
扉はゆっくりと開いた。
太陽はつい先ほど西の空にその姿を消していた。
俺は一人フェンス越しに校庭を見た。
校庭には誰もいなかった。
顔に風を感じた。
その風は冷たく、
昼間の暖かさが嘘のように気温が下がっていた。
今夜から雪が降る。
その雪は三日間降り続け、
そして月曜日の終業式の日には
校庭を埋め尽くすだろう。
この二度目の歴史の中でも
唯一変わらないものがある。
人の手が及ばないもの。
自然現象だ。
俺はフェンスに沿ってゆっくりと西へ歩いた。
最西端まで来たところで足を止めた。
そしてポケットから封筒を出すと、
それを丸めてフェンスの網へ突っ込んだ。
これなら風が吹いても
飛ばされることはないだろう。
ふたたび中央付近まで戻ったところで
さきほどのフェンスの方を振り返ると、
辛うじて封筒の存在が確認できた。
こうしているとボス猿の死体を見つけた
あの日のことが思い出される。
花壇に倒れているボス猿の姿が浮かんで
俺は慌てて頭を振った。
肌に触れる空気が冷たさを増した。
また少し気温が下がったようだ。
もっと着込んでくるべきだった
と俺は少し後悔した。
その時、屋上の扉が開いた。
扉の陰から男が顔を出した。
男はキョロキョロと辺りを窺っていたが、
俺に気付くと警戒しながら
ゆっくりとこちらへ歩いてきた。
お互いの顔がはっきりと見える位置まで来ると
男の足が止まった。
俺と男の距離は十メートルほど離れていた。
男はオールバックの白髪に
サングラスをかけていた。
そして口髭を生やしていた。
茜の話した通りの容姿だった。
男が僅かに動揺しているのがわかった。
俺はそれを見逃さず一歩だけ前に進み出た。
俺は男を上から下まで観察した。
信じられないことだが、
本当に見たことのない男だった。
三人の内の誰かが変装していると考えた場合、
前田利通ではないことは明らかだった。
前田利通に比べて明らかに身長が低い。
つまり伊達孝允か織田隆盛ということになる。
しかし、今更男の正体などどうでもよかった。
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