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第13楽章
第91話 少女の悲鳴
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「貴方は・・。
その狼が誰なのか、
わかっているんですか?」
茜が躊躇いがちに口を開いた。
「くっくっく。
郷田を殺す機会があった人間は限られている。
前にも話したが、
容疑者は到着順から考えると・・
松平とあんただ、鈴木さん」
その時、
茜が小さく息を呑んだのがわかった。
「そして。
他には1階を散策していた俺。
さらに第一発見者の六条が考えられる。
この中で除外できるのは
お嬢ちゃんの推理通り・・六条だけだ。
つまり。
容疑者は3人に絞られる」
茜が小さく頷くのが見えた。
「次に。
あの郷田の死体に刺さっていた包丁。
あれは厨房にある他の包丁とは
明らかにデザインが違っていた。
つまり。
あの凶器は支給品だと推測できる。
それを踏まえて。
3人の容疑者に与えられた支給品を見ると、
腕時計は明らかに浮いた存在だ。
俺の偽造パスポートや
松平の牢屋の鍵は
簡単に用意することはできない。
だが。
腕時計は違う。
誰でも持っているありふれた物だ」
「・・前にも説明したはずだよ?
これは。
『オーデマ・ピゲ』のロイヤルオークで、
僕みたいな人間が買える代物じゃない」
「別に買わなくても手に入れる方法はあるぜ。
それに。
このご時世。
稼ぎ方は千差万別。
あんたが大富豪でもおかしくはない。
さらに。
その腕時計が本当に高級品だとは
俺達にはわからない。
あんたがそう言ってるだけで
単なる安物の量産品とも限らないだろ?」
「馬鹿馬鹿しい。
それなら彼女に与えられた支給品だって
簡単に用意できるんじゃないかい?
今時の女子高生は避妊具の1つや2つくらい
持ち歩いているさ」
そこまで話した時、
茜が軽蔑の眼差しで
僕を見ていることに気付いた。
「あっ・・い、いや。
今のは一般論であって・・
君がそうとは言ってないんだ」
僕は慌てて付け加えた。
「どちらにせよ。
車椅子の彼女には
2階の郷田を殺すことはできないんだぜ」
そう言って西岡は「くっくっく」と笑った。
「・・はぁ。
もう君の与太話に付き合うのはうんざりだ」
僕は徐に拳銃を抜くと西岡に向けた。
「す、鈴木さんっ!」
茜が小さな悲鳴をあげた。
「無理するな。
扱えないだろ?」
一方、西岡は冷静だった。
拳銃に視線を向けたまま
西岡はふたたび「くっくっく」と笑った。
「試すかい?
さっき。
六条さんの死体を見つけた後。
試し撃ちをしたんだ。
防音設備のおかげで
音は外に漏れなかったようだね」
「チッ・・」
西岡が恨めしそうに拳銃を睨み付けた。
「す、鈴木さん・・落ち着いて下さい!」
「彼はどうしても。
僕に郷田さん殺しの罪を着せたいようだ」
僕は西岡から視線を外さず茜に語りかけた。
「そう言えば。
まだ答えを聞いてなかったな。
最初に廊下で見た時、
あんたのバッグから覗いていたあの包丁は
一体どこに消えたんだ?」
「君の見間違えだと話したはずだけど?」
「誤魔化すなよ。
あの包丁の柄は郷田の死体に・・」
パンッ!
乾いた破裂音が部屋に響いた。
「きゃあああああぁぁぁ!」
次の瞬間、
少女の悲鳴が僕の鼓膜を刺激した。
その狼が誰なのか、
わかっているんですか?」
茜が躊躇いがちに口を開いた。
「くっくっく。
郷田を殺す機会があった人間は限られている。
前にも話したが、
容疑者は到着順から考えると・・
松平とあんただ、鈴木さん」
その時、
茜が小さく息を呑んだのがわかった。
「そして。
他には1階を散策していた俺。
さらに第一発見者の六条が考えられる。
この中で除外できるのは
お嬢ちゃんの推理通り・・六条だけだ。
つまり。
容疑者は3人に絞られる」
茜が小さく頷くのが見えた。
「次に。
あの郷田の死体に刺さっていた包丁。
あれは厨房にある他の包丁とは
明らかにデザインが違っていた。
つまり。
あの凶器は支給品だと推測できる。
それを踏まえて。
3人の容疑者に与えられた支給品を見ると、
腕時計は明らかに浮いた存在だ。
俺の偽造パスポートや
松平の牢屋の鍵は
簡単に用意することはできない。
だが。
腕時計は違う。
誰でも持っているありふれた物だ」
「・・前にも説明したはずだよ?
これは。
『オーデマ・ピゲ』のロイヤルオークで、
僕みたいな人間が買える代物じゃない」
「別に買わなくても手に入れる方法はあるぜ。
それに。
このご時世。
稼ぎ方は千差万別。
あんたが大富豪でもおかしくはない。
さらに。
その腕時計が本当に高級品だとは
俺達にはわからない。
あんたがそう言ってるだけで
単なる安物の量産品とも限らないだろ?」
「馬鹿馬鹿しい。
それなら彼女に与えられた支給品だって
簡単に用意できるんじゃないかい?
今時の女子高生は避妊具の1つや2つくらい
持ち歩いているさ」
そこまで話した時、
茜が軽蔑の眼差しで
僕を見ていることに気付いた。
「あっ・・い、いや。
今のは一般論であって・・
君がそうとは言ってないんだ」
僕は慌てて付け加えた。
「どちらにせよ。
車椅子の彼女には
2階の郷田を殺すことはできないんだぜ」
そう言って西岡は「くっくっく」と笑った。
「・・はぁ。
もう君の与太話に付き合うのはうんざりだ」
僕は徐に拳銃を抜くと西岡に向けた。
「す、鈴木さんっ!」
茜が小さな悲鳴をあげた。
「無理するな。
扱えないだろ?」
一方、西岡は冷静だった。
拳銃に視線を向けたまま
西岡はふたたび「くっくっく」と笑った。
「試すかい?
さっき。
六条さんの死体を見つけた後。
試し撃ちをしたんだ。
防音設備のおかげで
音は外に漏れなかったようだね」
「チッ・・」
西岡が恨めしそうに拳銃を睨み付けた。
「す、鈴木さん・・落ち着いて下さい!」
「彼はどうしても。
僕に郷田さん殺しの罪を着せたいようだ」
僕は西岡から視線を外さず茜に語りかけた。
「そう言えば。
まだ答えを聞いてなかったな。
最初に廊下で見た時、
あんたのバッグから覗いていたあの包丁は
一体どこに消えたんだ?」
「君の見間違えだと話したはずだけど?」
「誤魔化すなよ。
あの包丁の柄は郷田の死体に・・」
パンッ!
乾いた破裂音が部屋に響いた。
「きゃあああああぁぁぁ!」
次の瞬間、
少女の悲鳴が僕の鼓膜を刺激した。
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